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今こそ#PlayApartTogether-コロナ禍にみた「あつまれどうぶつの森」のソサイエティ5.0の可能性

生活研究部 研究員 廣瀬 涼
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1――今なお続く「あつ森」フィーバー
2――島にこもる人々
We’re at a crucial moment in defining outcomes of this pandemic. Games industry companies have a global audience - we encourage all to #PlayApartTogether. More physical distancing + other measures will help to flatten the curve + save lives. https://t.co/QhX0ssN0lH— Ray Chambers (@RaymondChambers) March 28, 2020
新型コロナによる世界的なパンデミックにより、卒業式や入学式、入社式など節目となる行事も数多く中止され、人々はコミュニケーションの機会だけでなく文化的な生活を送る権利すらも奪われた。また、コンサートやイベントなどの中止も要請され日々の娯楽が奪われている中で、2020年3月30日の日経MJで取り上げられたように「ヤケ買い」としてゲームや高級ブランド品が大量に消費されていた。これは、日本に限ったことではなく、世界中がこの苦境に耐えていたのである。その中で『あつまれ どうぶつの森』は、無人島での自然に溢れた生活と他のユーザーと自身の作成したアバターを通じての仮想的な交流がテーマとなっており、不要不急の外出が制限されていた当時、自身の分身が自然の中で知人と交流ができるという点が大きく支持されたのである。この「あつ森ブーム」を通して筆者は、新しい社会の形を目の当たりにした。アバターを通して人々がどうぶつの森という仮想空間で、実社会で制限された文化的な行為を行っていたからである。
3――ロックダウン下で行われた「あつ森」での誕生日会
4――従来のアバターゲームとの違い
しかし、今回の『あつ森』における社会的交流は「仮想空間×現実社会における繋がり」によって行われており、これは社会活動の「場」が現実世界からサイバー空間へと移行されていたことを意味する。従来のアバターゲームが余暇活動として行われていた一方で、『あつ森』で文化的交流を行うという一種のムーブメントは、全世界で“外出ができない”という不自由さを共有していた点で生まれたのである。言うなれば本来なら現実社会で行うはずだった文化的交流を代替する場としてサイバー空間が選ばれ、「#PlayApartTogether(一緒に離れて遊ぼう)」の精神の下、生活者が自発的に行った行動が、どうぶつの森で文化的行為を行うという文化を生んだのである。世界が同時に同じ問題に直面するという奇異な状態で、「あつ森」が一つのソリューションとして選ばれていたといえるだろう。
5――どうぶつの森での交流はソサイエティ5.0の一側面といえるのか
6――今こそ#PlayApartTogether
世界的に見ても、新型コロナウイルスの世界の感染者は累計で5,560万人を超え、死者は134万人を上回る。米国では感染者数が11月19日時点で1,149万人を超え、なお増加傾向が続いている4。イギリスでは1日の新規感染者が2万人を超える日が続き、感染第2波で医療体制が圧迫されつつあることから、ジョンソン首相は10月31日に、11月5日から12月2日までの約4週間、イングランド全域でロックダウン措置を再導入すると発表した。フランスも10月30日から12月1日までの約1カ月間、全土でロックダウンを実施しており、生活必需品の購入や医療処置のための通院、運動のために毎日1時間外出する以外は自宅待機を国民は命じられている。ドイツでも、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、11月2日から11月30日までの約1カ月間で部分的なロックダウン措置が実施されており、レストランやバー、スポーツジム、プール、映画館、劇場が閉鎖されているほか、集会は2世帯、10人以下に制限され、不要不急の旅行の自粛などが促されている。また、新型コロナウイルスの「第2波」で感染者数が急増しているイタリアでは、感染拡大が特に深刻な地域でのロックダウンが11月6日から12月3日まで適用される。
感染「第2波」に見舞われる欧州や「第3波の席巻」とも伝えられる米国を中心に、冬が本格化するに従って感染増加ペースが加速している5。一度緩んだ気持ちを引き締めるのは困難であるが、極力外出を控えることを我々は再度求められている。「物理的に距離を置き」「他の手段で感染者の増加を抑え」「命を救う」その手段としてゲームは新型コロナ流行以降も期待されてきた。いま改めて、#PlayApartTogetherの精神をもち、我々はゲームやリモートという「仮想空間×現実社会における繋がり」という“場”で、友人知人との会食や不要不急の外出などの娯楽とを代替すべき時なのかもしれない。
3 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/monitoring.html
4 新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、 厚生労働省、 内閣官房、 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている情報も合わせてご確認ください。
5 https://www.jiji.com/jc/article?k=2020110800623&g=int
(2020年11月25日「基礎研レター」)

03-3512-1776
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
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