2020年11月16日

「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(1)―2018年婚姻届全件分析(初婚男性編)―

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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3――再婚者の女性も可能と考える場合

最近は結婚相談所、地域結婚支援センター、マッチングアプリなど、あらゆる結婚相手探しの窓口において、マッチングシステムによるデータ検索で結婚相手を探す、というファーストアクセス方法を用いた利用が増加してきている。このため、数万単位の登録相手から、条件検索によって絞り込んでパートナーを探すことになる。その絞り込みの際に、男性は女性の年齢に加えて婚歴にも制限をつけるケースが多い4。そこでまずは結婚相手を初婚女性に限った場合の男性の結婚年齢を見てきたが、次に、相手の女性の婚歴は気にしない、とした場合の成婚状況も見てみたい(図表4)。
【図表4-1-1】初婚男性の結婚年齢/妻が再婚のケース(件)
【図表4-1-2】初婚男性の結婚年齢/妻が再婚のケース(件)
まず、データの前提として、初婚女性が結婚相手の場合の1割に満たない婚姻件数(初婚男性の結婚の8.4%)である点には留意が必要である。その上で、相手の女性を婚歴ありの女性に限定した場合の初婚男性の結婚年齢をみてみると、最頻値は30歳で初婚女性との結婚の場合と1歳しか違わない。しかし、婚姻が過半数を超える年齢が34歳であることから、初婚女性が相手の場合よりも5歳程度の適齢期のモラトリアムがあることが示されている。

そうはいうものの、婚姻が7割を超える年齢が40歳、8割を超える年齢が43歳であるので、やはり40歳を超えると「婚歴ある女性でもいいのだけれど」といった条件をつけられるほど、簡単なものではなく、マッチングが厳しくなることは注意したい。

また49歳で9割に達するため、結婚相手を婚歴あり女性に限定したとしても、初婚の男性にとって50歳以降の結婚は非常に厳しい状況であることが示されている。
【図表4-2-1】初婚男性の結婚年齢/妻が再婚+初婚合算のケース(件)
【図表4-2-2】初婚男性の結婚年齢/妻が再婚+初婚合算のケース(件)
最後に、初婚男性の結婚年齢に関して、相手の女性が初婚の件数に再婚の件数も合算した件数、を見てみたい。相手の女性が初婚・再婚を問わず、初婚男性の結婚年齢がどのような発生状況かを見ることができる。

最頻値はやはり27歳であること、提出される婚姻届が5割に達する年齢が29歳となることなどは、相手が初婚女性のみのケースと大きな差異は見られない。また、33歳で7割、35歳で8割にまで達するという状況も相手が初婚女性のみのケースと大差がない。

これは再婚女性を選ぶ初婚男性が極端に少ない(相手が初婚:相手が再婚=11:1)ことが影響している。先述の通り、初婚男性と再婚女性の組み合わせの適齢期は34歳であることから、再婚女性を選ぶ男性の割合が上がれば、5歳程度のモラトリアムがあるからである。ただし、相手探しの行動パターンが変わらない場合は、モラトリアムは発動されず、29歳が適齢期、という状況は容易には動かないだろう、ということが指摘できる。

合算のケースでも40歳で9割を超えるため、やはり初婚男性の結婚のピークは27歳、過半数が結婚するという基準の結婚適齢期は29歳、そして、35歳以降の結婚はそれまでとは異なりかなり難しくなり、40歳以降は成婚を安易にとらえることは禁忌、ということが指摘できる。
 
4 これは女性も同様であるものの、男性の方が年齢の設定や婚歴へのこだわりが強い傾向がマッチングシステム運営の現場からは指摘されている。
 

4――なぜ婚期は女性のもの、と考えてしまうのか

4――なぜ婚期は女性のもの、と考えてしまうのか

2019年は有名アイドル男性40代(初婚)と20代女性の結婚が大きく報じられた。そして2020年も大物芸人男性50代男性と30代女性の結婚が報じられた。この報道を見て筆者に若い男性から「すごい年の差婚、増えていますよね」という感想も届いている。

しかしながら、どちらの結婚も統計的にみると、初婚男性の婚姻届に占める割合が0.2%という発生確率の結婚となる。実に500組に1組という確率の結婚であり、まさに「異常値」といえる結婚の特殊事例となる。そもそも初婚男性と初婚女性との婚姻は、初婚同士婚姻届に占める割合において、40代男性が7.6%、50代男性が0.7%と極端に少ない。
 
ニュース報道は多くの人々に記事が読まれてこそ、という性質から、普通に起こっていること、よくあること、に関しては記事化されにくい。むしろその逆の傾向である。
結婚に関しては特に、「一般的ではない」「普通からの乖離幅が非常に大きい」結婚ほど大きく報じられる、ということが広く周知される必要があると、筆者は日々感じている。

【参考文献一覧】

厚生労働省.「人口動態統計」

天野 馨南子.「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差婚の希望の叶い方. ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2017年2月20日

天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上)-未婚少子化データ考- 平成ニッポンの夫婦の姿.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月14日

天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月28日
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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