2020年11月05日

【インドネシアGDP】7-9月期は前年同期比3.49%減~新型コロナ感染拡大が続き2期連続のマイナス成長に

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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インドネシアの2020年7-9月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)3.49%減(前期:同5.32%増)とマイナス幅が縮小したものの、市場予想2(同▲3.20%)を下回る結果となった。

7-9月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の落ち込みがマイナス成長に繋がった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比4.00%減(前期:同5.58%減)と減少幅が縮小した。費目別に見ると、住宅設備(同1.82%増)と保健・教育(同2.06%増)が増加傾向を維持したものの、輸送・通信(同11.56%減)やホテル・レストラン(同10.90%減)、食料・飲料(同0.69%減)が減少した。

政府消費は前年同期比9.76%増となり、前期の同6.90%減から急上昇した。

総固定資本形成は前年同期比6.48%減(前期:同8.61%減)と低迷した。建設投資(同5.60%減)と機械・設備(同21.01%減)、自動車(同14.63%減)がそれぞれ減少した。

純輸出は成長率寄与度が+1.73%ポイントとなり、前期の+0.73%ポイントから拡大した。まず財・サービス輸出は前年同期比10.82%減と、前期の同11.68%減に続いて大幅な減少となった。輸出の内訳を見ると、サービス輸出(同51.75%減)の大幅減少が続いたほか、財輸出(同5.58%減)も減少した。また財・サービス輸入は同21.86%減(前期:同16.98%減)とマイナス幅が拡大した。
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、第二次、第三次産業の成長率が引き続き減少した(図表2)。

まず成長を牽引する第三次産業は前年同期比2.47%減(前期:同6.30%減)とマイナス幅が縮小したものの、2期連続で減少した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売(同5.02%減)をはじめとして、運輸・倉庫(同16.73%減)、ホテル・レストラン(同11.88%減)、ビジネスサービス(同7.56%減)、金融・保険(同0.99%減)など幅広い産業が減少した。一方、情報・通信(同10.59%増)が好調を維持したほか、不動産(同1.97%増)や保健衛生・社会事業(同15.38%増)、行政・国防(同1.80%増)がプラスの伸びとなった。

また第二次産業は前年同期比4.28%減(前期:同5.30%減)と減少した。内訳を見ると、構成割合の大きい製造業(同4.31%減)と建設業(同4.52%減)、鉱業(同4.28%減)、電気・ガス・水供給業(同1.55%減)が軒並み減少した。

一方、第一次産業は前年同期比2.15%増(前期:同2.20%増)とプラスの伸びを維持した。
 
1 2020年11月5日、インドネシア統計局(BPS)が2020年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

7-9月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済は昨年まで+5%成長が続いたが、今年に入って新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響が広がると、景気が減速、4-6月期は新型コロナの封じ込めを目的に国内外で実施された活動制限措置の影響が本格的に現れて内外需要が急減してアジア通貨危機以来のマイナス成長(前年同期比▲5.32%)を記録した。7-9月期の成長率は同▲3.49%となり、景気が持ち直しに向かっていることが明らかとなったが、2期連続のマイナス成長(テクニカル・リセッション)となった。

7-9月期の景気低迷は、国内の活動制限措置による内需の落ち込みが続いている影響が大きい。各地方自治体が4月に実施した大規模な社会的制限(PSBB)は、6月に入って緩和されてPSBB解除に向けた移行期間の「フェーズ1」に切り替わり、経済活動は段階的に再開された。しかし、7月以降は新型コロナの国内感染が増加するにつれて規制が再び強化されていき(図表3)、9月14日には首都圏でPSBBが再び実施される事態となった。このようにインドネシアの経済は、新型コロナウイルスの継続的な感染拡大と観光関連など深刻な影響を受けた産業への悪影響を受けて不安定な状況にあり、7-9月期は民間消費(同▲4.00%)と投資(同▲6.48%)が落ち込んだ。

外需では、サービス輸出(同▲51.75%減)が前期に続いて大幅に悪化した。7-9月期も国内外で実施されている海外渡航規制や入国制限措置により外国人旅行者数が新型コロナ流行前の1割強の水準まで縮小している(図表4)。また海外経済の低迷により財貨輸出(同▲5.58%)も減少した。しかしながら、内需の落ち込みにより輸入が減少した影響が大きく、7-9月期も純輸出の成長率寄与度がプラスとなった。

10-12月期は3期連続のマイナス成長が予想される。9月に首都圏で再実施されたPSBBは新型コロナ感染者の増加ペースが鈍化したことを受けて10月12日に緩和され、再びPSBB解除に向けた移行期間に入ったが、現在も国内の新規感染者数は1日あたり3000人前後のペースで増えており、依然予断を許さない状況が続いている。今回のようなPSBBの再実施と緩和は来年ワクチンの接種が広がるまで繰り返される可能性がある。しかし、徐々に経済がウィズコロナの新状態に適応するなかで景気は持ち直しの動きが続くだろう。ジョコ大統領は11月2日にパンデミックの影響で打撃を受けた経済を支えるために財政支出の拡大に前向きな姿勢を示したほか、インドネシア中央銀行も追加利下げを示唆しており、こうした財政・金融両面からの景気下支え策が続くとみられることも、景気回復を後押しするだろう。

インドネシアでは、11月2日に施行された雇用創出法(オムニバス法)が国内で物議を醸している。政府はコロナ禍の景気低迷により550万人が職を失うと予測しており、コロナ禍で傷んだ経済を回復させるためにも、投資促進にプラスに働く同法の早期発効に動いたが、国会の可決後に法文書が書き換えされるなど不透明な制定プロセスに対する抗議活動が広がっている。事態が悪化すれば、ジョコ大統領の政権基盤が揺らぐことも予想されるだけに、同法に反対する労働組合や学生、イスラム団体の抗議デモの動向や政府がどのように事態を鎮静化できるのか注目される。
(図表3)インドネシアの新規感染者数の推移/(図表4)インドネシアの外国人観光客数
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

(2020年11月05日「経済・金融フラッシュ」)

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