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- オルタナティブデータで見る不動産市場(2020年11月)-正常化へ向けて改善の動きが見られる宿泊・消費動向
2020年11月05日
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次に、コト消費の動向を確認する(図表 6)。V-RESASにおけるRetty株式会社のFood Data Platformをもとに飲食店ページ閲覧数を見ると。コロナ禍で最も閲覧数が減少した5月第1週は、「すべての飲食店」が前年同期比▲77%となり、業態別に見ると「ファミレス・ファーストフード」が同▲46%、「居酒屋・バー」が同▲84%となった。閲覧数は緊急事態宣言が全国で解除された5月後半に底打ちし、6月から8月は「すべての飲食店」が概ね2割減~4割減、「ファミレス・ファーストフード」が1割減~2割減、「居酒屋・バー」が4割~6割減で推移した。10月からGo To Eatキャンペーンが開始されたこともあり、10月第3週には、「すべての飲食店」が前年同期比▲12%、業態別では「ファミレス・ファーストフード」が前年比▲9%、「居酒屋・バー」が同▲21%、と回復傾向にある。
一方、V-RESASにおけるヤフー・データソリューションのデータをもとに、検索サイトにおける「イベント」に関する検索トレンド(検索数)を確認すると、5月第3週に前年同期比▲78%まで落ち込んだ後も、改善の勢いは乏しく、10月第3週においても同▲70%となっている。
一方、V-RESASにおけるヤフー・データソリューションのデータをもとに、検索サイトにおける「イベント」に関する検索トレンド(検索数)を確認すると、5月第3週に前年同期比▲78%まで落ち込んだ後も、改善の勢いは乏しく、10月第3週においても同▲70%となっている。
先行研究6によると、サービス消費に関する経済指標と流動人口(人出の変化)の相関は高い。そこで、NTTドコモのモバイル空間統計をもとに、主要都市の都心商業エリアにおける流動人口を確認する(図表 7)。緊急事態宣言のさなかにあったゴールデンウィーク明けの一週間は、減少率が小さい順に、仙台(前年同期比▲42.6%)>広島(同▲46.3%)>札幌(同▲56.3%)>名古屋(同▲62.4%)>福岡(同▲63.1%)>東京(同▲67.8%)>大阪(同▲68.3%)となった。感染リスクが相対的に高い東京や大阪は、緊急事態宣言解除後も回復が出遅れたが、8月のお盆明けから改善傾向が強まり、11月3日では、大阪(前年同期比▲12.5%)>広島(同▲12.5%)仙台(同▲13.0%)>福岡(同▲14.1%)>名古屋(同▲15.9%)>東京(同▲17.4%)>札幌(同▲19.5%)、となった。現在は全ての主要都市で前年から1割減~2割減まで人出が戻り、都心商業エリアには活気が戻ってきている。なお11月3日時点では、全ての主要都市で流動人口が減少に向かっているが、祝日の影響もあり、本当に人出が減ったのかについては、今後発表されるデータを確認する必要があろう。
また、NTTドコモのモバイル空間統計をもとに、東京都の流動人口を「生活」、「商業」、「オフィス」、「トラベル」の行動圏に分類して確認する(図表 8)。緊急事態宣言のさなかにあったゴールデンウィーク明けの一週間の流動人口は、減少率が小さい順に、生活エリア(前年同期比▲48.7%)>商業エリア(同▲67.7%)>トラベルエリア(同▲68.8%)>オフィスエリア(同▲71.5%)と、生活エリアではヒトの流れが半減、他のエリアでは7割減となった。全国で緊急事態宣言が解除された5月25日以降は徐々に人出が戻り、11月3日では、生活エリア(前年同期比▲7.3%)>商業エリア(同▲17.4%)>トラベルエリア(同▲25.0%)>オフィスエリア(同▲29.0%)となった。生活エリアにおいては人出がほぼ回復し、都心の商業エリアも概ね人出が戻ってきた。一方、オフィスエリアは依然として2~3割減と、在宅勤務を継続している企業が少なくないことが示唆される。これは東京都心のオフィスエリアに勤務するオフィスワーカーは、5営業日のうち1日~2日は在宅勤務をしているという計算である7。
6 井上祐介・川村健史・小寺信也(2019)「位置データを用いた滞在人口の分析─働き方改革の進展─」経済財政分析ディスカッション・ペーパー 19-3
7 在宅勤務率(オフィス出社率)は、産業や企業によって大きく異なることが予想される。
4――おわりに
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、社会的隔離政策が実施され、「ヒトの流れ」が止まった。そのため、ヒトの流れを賃貸収入の源泉とするホテルや商業施設が深刻な影響を被る一方、デジタル化の加速により恩恵を受ける物流施設やデータセンターへの注目が高まるなど、不動産セクター間の格差が強まった。また、商業施設セクターでは、堅調な巣ごもり消費や底堅い生活必需品に対して、コト消費が甚大なダメージを被るなど、一部ではセクター内での強弱も鮮明となった。
オルタナティブデータをもとに現在の不動産市場を確認すると、確実に正常化に向けた改善の動きが見られる。徐々に人出が戻るにつれ、コロナ禍により拡がったセクター間やセクター内の格差も縮小傾向にある。ただし、感染リスクの高いエリアやセグメントでは、依然として回復の足取りが鈍い。感染者数が増えれば、改善傾向に揺り戻しの動きも見られよう。オルタナティブデータを活用することで、このような動きをタイムリーに把握することができるため、今後も定期的に情報発信していきたい。
オルタナティブデータをもとに現在の不動産市場を確認すると、確実に正常化に向けた改善の動きが見られる。徐々に人出が戻るにつれ、コロナ禍により拡がったセクター間やセクター内の格差も縮小傾向にある。ただし、感染リスクの高いエリアやセグメントでは、依然として回復の足取りが鈍い。感染者数が増えれば、改善傾向に揺り戻しの動きも見られよう。オルタナティブデータを活用することで、このような動きをタイムリーに把握することができるため、今後も定期的に情報発信していきたい。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年11月05日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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