2020年10月30日

2020年度前半までの新築マンション市場の動向-発売戸数は減少、価格は高止まり

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

コロナ禍で新築マンション市場にも影響が生じている。
 
月次の発売戸数は、一時は最低水準にまで落ち込んだ後に回復してきているようにも見えるが、12ヶ月移動累計では3月以降は前年同月比で▲20~▲30%と前年を大きく下回る水準が継続している。新築マンションの発売戸数は大きく減少しており、マンション供給業者から見て「売れ行きが悪い」状態であるといえよう。
 
発売初月に売却できなかったマンションの割合を「初月残戸率」として求め、発売戸数12カ月移動累計の前年同月比」の動向を比較してみると、初月残戸率が断続的に大きく増加している一方、発売戸数12カ月移動累計は2019年3月以降マイナスが続いている。
 
過去の推移をみれば、初月残戸率が20%近い水準になって初めて発売戸数は増加をしており、今後、発売戸数が増加してくるためには、初月残戸率20%~30%の水準が連続する必要があると思われる。
 
ただし、供給戸数の増加した2010年や2013年は、平均価格も年収倍率も低い水準に
価格を上昇させる余地があったが、2019年後半には6,000万円を超え、現在は6,500万円弱と価格上昇傾向が続いており、少々事情が異なっている。数量調整が価格維持に効果を発揮し、さらに、売り主の認識として値下げしてまでの売却は起こりにくくなっている。積極的に新築マンションを供給することは当面ないだろう。
 
また、今年の販売活動は、モデルルームの予約制や入場制限が続き、新築マンションの発売戸数は前年比▲33%と大幅に減少する見込みである。
 
新築マンションについては、しばらくは価格が高く、供給数も少ない状態が続きそうである。個人にとって、不動産の購入は住宅ローンの借入期間とともに、長期保有を念頭に置くものである。将来の支出計画と合わせて、いつ購入すべきか慎重に判断していく必要があるだろう。

■目次

1. はじめに
2. 新築マンションの発売戸数の推移
3. 新築マンションの売行きと発売戸数の関係
4. 新築マンションの平均価格の推移
5. 新築マンション価格の直近の傾向と今後
6. おわりに
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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