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- 新型コロナウイルス感染症がもたらす不動産価格への影響を考える
2020年04月03日
新型コロナウイルス感染症の感染拡大と、これによる実体経済への下押し圧力から、先行きの不透明感は増している。現時点では、ワクチンがないことなどから終息時期は見えず、東京五輪への影響も不明であるなど、全体像は見えず定量的な計測は難しいが、過去の3つの出来事を振り返ることにより、不動産価格の推移を把握し、不動産市場への影響を考えてみたい。
1つ目は2008年9月の金融市場に端を発したリーマンショックである。利回りについてはCBREの不動産投資家調査から、リーマンショック前の2008年4月のオフィス(東京・大手町)の期待利回りは3.9%、リーマンショック後の10月には4.35%、2009年7月には4.65%にまで上昇したことが確認できる(図表1)。また、不動産価格は、東京都心部のオフィス価格を求めるものとし、ニッセイ基礎研究所のオフィスレントインデックスの東京都心部の賃料、および上記の利回りを用い、直接還元法1を参考に算出した。不動産価格は、2008年半ばの天井圏から翌年末ごろまでに、東京都心部Aクラスビル2が6割、Bクラスビルが5割、Cクラスビルが4割下落している(図表2)。この後、不動産市場は不動産担保融資を通じて多方面に甚大な損失が生じ、市場崩壊に至った。
1 不動産価格はP=a÷R (P:対象不動産の収益価格、a:一期間の純収益、R:還元利回り)で求められる。
1つ目は2008年9月の金融市場に端を発したリーマンショックである。利回りについてはCBREの不動産投資家調査から、リーマンショック前の2008年4月のオフィス(東京・大手町)の期待利回りは3.9%、リーマンショック後の10月には4.35%、2009年7月には4.65%にまで上昇したことが確認できる(図表1)。また、不動産価格は、東京都心部のオフィス価格を求めるものとし、ニッセイ基礎研究所のオフィスレントインデックスの東京都心部の賃料、および上記の利回りを用い、直接還元法1を参考に算出した。不動産価格は、2008年半ばの天井圏から翌年末ごろまでに、東京都心部Aクラスビル2が6割、Bクラスビルが5割、Cクラスビルが4割下落している(図表2)。この後、不動産市場は不動産担保融資を通じて多方面に甚大な損失が生じ、市場崩壊に至った。
1 不動産価格はP=a÷R (P:対象不動産の収益価格、a:一期間の純収益、R:還元利回り)で求められる。
2 Aクラスビルは、エリア、延床面積(1万坪以上)、基準階面積(300坪以上)、築年数(15年以内)、設備のガイドラインを基に、個別ビル単位で立地・建物特性を重視して選別。Bクラスビルは、基準階面積200坪以上でAクラスビルに含まれないビル (築年数経過でAクラスの対象外となったビルを含む) Cクラスビルは、基準階貸室面積100坪以上200坪未満のビル (築年数による制限はない)
2つ目は、2011年3月の東日本大震災である。事業拠点の被災などの直接的な影響のほか、全国にサプライチェーンの分断や、電力不足による間接的な影響が経済全体に及んだ。不動産市場はリーマンショックから立ち直っていない時期ではあったが、東京都心部Aクラスビルの賃料は半年程度で震災前の水準に回復し、利回りもほとんど上昇しなかったことから、不動産価格に大きな変化はなかった(図表1、2)。
3つ目はアベノミクスである。リーマンショック後に長く低迷していた不動産価格は、第2次安倍内閣が発足した2012年12月から上昇を開始し、2019年第4四半期には2.3倍(2012年第4四半期比)にまで上昇している(図表3)。
3つ目はアベノミクスである。リーマンショック後に長く低迷していた不動産価格は、第2次安倍内閣が発足した2012年12月から上昇を開始し、2019年第4四半期には2.3倍(2012年第4四半期比)にまで上昇している(図表3)。
今後は、感染拡大から派生する負の影響が懸念されるところであり、悲観シナリオは、実体経済の不調からオフィス需要が冷え込み、これまで好調であった賃料相場が下落に転じることだろう。しかし、過去の3つの出来事から、不動産価格への実体経済の影響はややゆるやかで、金融市場からの影響がより大きく反映されやすい、と考えられる。想定される楽観シナリオは、実体経済からの影響が不動産市場に及ぶ前に、経済低迷への対策を目的とした主要中央銀行の協調的な金融緩和などで、さらに投資資金が不動産に流れ込み、不動産価格の高値水準が継続することだろう。
現在はやや楽観シナリオ寄りのように見える。2019年の不動産取引は売出物件の枯渇から高値水準が継続し、潤沢な資金調達環境を背景に、ポートフォリオや高額物件を購入する事例なども散見された。また、旺盛なオフィス需要により、2023年頃までの竣工予定ビルの予約が進んでおり、大型物件の不足から先行きが見えない段階で解約行動などが生じる可能性は少ないと見られる。一方で、ホテルや商業施設の厳しい状況は続いている。早期の感染症終息と、実体経済の落ちつきを期待したいが、物件タイプ毎に注視していく必要がある。
現在はやや楽観シナリオ寄りのように見える。2019年の不動産取引は売出物件の枯渇から高値水準が継続し、潤沢な資金調達環境を背景に、ポートフォリオや高額物件を購入する事例なども散見された。また、旺盛なオフィス需要により、2023年頃までの竣工予定ビルの予約が進んでおり、大型物件の不足から先行きが見えない段階で解約行動などが生じる可能性は少ないと見られる。一方で、ホテルや商業施設の厳しい状況は続いている。早期の感染症終息と、実体経済の落ちつきを期待したいが、物件タイプ毎に注視していく必要がある。
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(2020年04月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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