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- 復興基金「次世代EU」でEUの地盤沈下は止まるのか?
2020年10月28日
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■要旨
- EUの総額1.8兆ユーロの復興パッケージの承認手続きは遅延しているが、世界的に金融政策は大規模財政出動を支え、信用緩和へと動いており、EU加盟国はEUの安全網も利用可能だ。始動の遅れによってパッケージの意義が大きく損なわれることはない。
- 復興基金の欧州統合史における位置付けは、成果次第の面があり、事後的にしか判断できないが、(1)大規模なEU債発行によるユーロ建て債券市場、サステナブル・ファイナンス市場の強化、(2)EUの独自財源の拡大、(3)格差拡大の抑制、財政緊縮圧力の緩和などを通じて、統合の持続可能性を高める方向に働く。
- 復興基金はコロナ禍という歴史的な非常事態だからこそ実現したものであるが、財政統合への布石となるかは成果次第だ。焦点はガバナンスにあり、主な受益国の南欧、中東欧の底上げに掛かっている。
- 復興基金がGDPで見たEUの世界経済におけるプレゼンス回復につながらなくとも、財政危機や一層の分裂を回避し、経済成長と二酸化炭素排出量の切り離しに一定の成果を挙げ、ポスト・コロナのESG(環境・社会・ガバナンス)重視のトレンドに影響力を発揮できれば、十分成功と言えるだろう。
(2020年10月28日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2015~2024年度 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017~2024年度 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022~2024年度 Discuss Japan編集委員
・ 2022年5月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
・ 2024年10月~ 雑誌『外交』編集委員
・ 2025年5月~ 経団連総合政策研究所特任研究主幹
伊藤 さゆりのレポート
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