2020年09月30日

お得な旅行のために知るべきホテルの収益構造-OTAとホテル公式ページ、選ぶ予約窓口で生じる違い

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

宿泊旅行をするとき、オンライン・トラベル・エージェント(Online Travel Agent、以下、OTA)を利用してホテルを選ぶ人は多いのではないだろうか。
 
旅行調査の世界大手であるフォーカスライト社によると、日本旅行のOTA販売比率は2018年には44%に達しており、2022年には60%に達すると予測されていた。これに加えて、今回のGo Toトラベルキャンペーンは、旅行の交通費については代理店やOTA経由で予約した旅行商品のみが対象であるという制度的な後押しをすることになる。OTAの販売比率はこれまで見込まれていた以上に大きく伸びていく可能性がある。
 
各客室の宿泊料金を引き上げることができ、かつ稼働率を高く維持することができれば、ホテルは高収益を上げることができる。一方、ホテルの運営費用のうちの多くの費用項目は客室稼働率の高低にかかわらず大きく変動することがないが、広告費や販売手数料(OTA等へ支払い)は広告・販売戦略により変動する。ホテルはOTA経由で宿泊客を獲得した場合、通常、OTAに宿泊料金の1~2割を販売手数料として支払わなければならない。
 
多くの場合、ホテル自身で全ての客室の販売は困難である。インターネット広告にかける費用の効果は、各エリアに分散するホテルよりもエリア内に多くのホテルの販売の受託をしているOTAのほうがはるかに効果的、効率的である。訪日客が増加し、宿泊料金が上昇していた近年、ホテルとOTAは相互補完の関係にあり、双方が利益を伸ばしてきた。
 
しかし、コロナ禍でホテルもOTAも業績が悪化している。ホテルはOTAの販売手数料を払うことが困難な状況になり、OTAも客室販売が成立しなければ収益を得ることはできない。今後OTAは、自社ホームページから予約するように宿泊見込客を誘引することになるのではないだろうか。
 
一方、ホテルから見れば、OTA経由の予約は販売手数料がかかることに加えて、相対的にキャンセル率が高く、多くは初回客でリピート見込みもあまりない。ホテルが稼働率の低い状態で営業するなら、販売手数料が取られず相対的に利益率が高い自社のホテル公式ページからの直接予約客を増やそうとするだろう。
 
宿泊希望者はホテルやOTAの行動をいち早く知ることで、先方の販売戦略を有効活用して比較検討すれば、よりお得な旅行をすることができるのではないだろうか。

■目次

1. はじめに
2. オンライン・トラベル・エージェント(OTA)とは何か
3. ホテルの収益構造とOTA
4. OTAの現状と今後の行動
5. 価格下落競争の中でホテルはどう行動するか
6. 宿泊希望者から見たOTA経由の予約とホテル直接予約
  (1) OTAはお得な宿泊料金の部屋を見つけやすい
  (2) ホテル公式ページからは満足度の高い部屋が取りやすい
7. 終わりに
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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