2020年09月23日

二次医療圏思考 (2020)-比較を通じて、二次医療圏に馴染んでみよう!

保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   篠原 拓也

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1――はじめに

自分の「二次医療圏」について、どれくらい知っているだろうか?

医療は、数年単位の医療計画に基づいて整備されている。現在は、第7次医療計画(2018~2023年度)の途中だ。医療計画では、医療圏が設定されており、医療圏ごとに計画が立てられる。医療圏には、概ね市町村単位の一次医療圏、都道府県単位(北海道のみ、6つ)の三次医療圏、そして一般に複数の市区町村で構成されている二次医療圏の3つがある。医療計画は、二次医療圏を中心に立案される。たとえば、医師や看護師の数や病床数などが計画される。本稿では、比較を通じて、二次医療圏への理解を高め、各地域の医療の姿を眺めていくこととしたい。

なお、本稿は、弊著「二次医療圏思考-自分の二次医療圏を知っていますか?」(基礎研レター, ニッセイ基礎研究所, 2019年5月24日)(以下、「前稿」)の続編にあたる。前稿では、二次医療圏の見直し基準などに触れている。本稿とあわせて、ご参照いただきたい。
 

2――二次医療圏の再編

2――二次医療圏の再編

現在、各都道府県で二次医療圏の再編が進められている。前稿では、344の二次医療圏を取り上げた。現在は、以下の再編により9つ減って、335の二次医療圏となっている。
 

福島県 :「会津」と「南会津」が統合して「会津・南会津」となった。

神奈川県:「横浜北部」と「横浜西部」と「横浜南部」が統合して「横浜」となった。

愛知県  :「名古屋」と「尾張中部」が統合して「名古屋・尾張中部」となった。

兵庫県  :「阪神南」と「阪神北」が統合して「阪神」、「中播磨」と「西播磨」が統合して「播磨姫路」となった。

香川県 :「大川」と「高松」が統合して「東部」、「中讃」と「三豊」が統合して「西部」となった。

熊本県 :「熊本」と「上益城」が統合して「熊本・上益城」となった。


本稿末に一覧表を付している。この表から、自分の住む地域がどの二次医療圏か確認できる。

次章では、いくつかの統計データをもとに、二次医療圏の比較をしていく。
 

3――二次医療圏の比較

3――二次医療圏の比較

前稿に続いて、二次医療圏への理解を高めるために、データをもとにいくつかの比較をしてみよう。

1人口最多の医療圏と最少の医療圏では、180倍以上の違いがある
まず、人口や人口構成についてランキングをとる。結果は、つぎのようになった。
図表1. 二次医療圏ごとの人口、75 歳以上割合、15~64 歳割合、人口密度の比較
【人口】
圏内人口最多の神奈川・横浜と最少の島根・隠岐では、180倍以上の違いがある。ひとくちに二次医療圏といっても、大小さまざまな規模の医療圏があることがわかる1
 
1 第2節以降で、人口10万人当たりの数を比較する場合は、この平成27年国勢調査人口を用いる。
【75歳以上割合】
また、高齢化の状況も地域ごとに大きく異なる。大分・豊肥と石川・能登北部は、人口の4人に1人が75歳以上となっている。一方、愛知・西三河北部と滋賀・湖南は、75歳以上割合が8%台となっている。医療体制の整備を図るうえでは、地域の高齢化の状況を踏まえる必要があるものと思われる。

【15~64歳割合】
公的医療保険制度を支える現役世代の状況をみると、東京の区部や、神奈川の川崎が、15~64歳割合60%台後半で上位を占めている。大学への就学や就職により、地方から東京圏に人口移動が生じている様子がうかがえる。一方、下位10の二次医療圏では、15~64歳割合が50%未満となっており、働き手が少ない状況がみてとれる。

【人口密度】
人口密度では、東京の区部など、都市部の医療圏が上位を占めている。こうした地域では、医療施設への患者の集中を避けるなど、調整が必要となるものと考えられる。一方、下位には、北海道の医療圏が並んでいる。これらの地域では、救急医療における、患者の迅速な搬送が課題となろう。
2医師や歯科医師は、都市部に集中している
つぎに、医療関係者の状況をみる。人口10万人当たりの人数のランキングは、つぎのようになった。
図表2. 二次医療圏ごとの人口10 万人当たり医師数、歯科医師数、看護師数、療法士数の比較
医師】
医師は、都市部に集中している。特に、東京・区中央部への集中は顕著となっている。島根・出雲、群馬・前橋など地方都市にも集中地域がある。逆に、北海道、茨城、鹿児島の農村部などには、医師数が少ない地域がある。地域医療の展開にあたり、医師をどう確保するか、が大きな課題といえる2
 
2 医師については、人口構成等を補正した医師偏在指標が公表されている。詳細は、「医師の需給バランス-医師の偏在は是正されるか?」篠原拓也(ニッセイ基礎研レター, ニッセイ基礎研究所, 2019年5月10日)を参照いただきたい。
【歯科医師】
歯科医師も、都市部に集中している。上位には、東京、福岡、新潟などの医療圏が並んでいる。一方、青森、北海道、鹿児島、沖縄の農村部などには、歯科医師数が少ない地域がある。高齢者医療では、口腔機能の管理がQOL維持のポイントとなる。それに向けて、歯科医師の確保が必要といえる。

【看護師】
看護師は、西日本で多い。東京・区中央部を別にすると、上位に、九州地方や、山口、高知の医療圏が並んでいる。その反面、京都や首都圏には看護師が少ない医療圏がある。看護師の拡充には、地元での育成がカギとなる。医療系大学での看護学部の設立など、長期的な人材育成が求められる。

【療法士】
療法士のランキングは、特徴的だ。上位にも下位にも大都市の地域はない。山梨・峡東が一番多く、その他、高知、九州地方の諸地域が上位を占めている。一方、療法士が少ない医療圏には、東京・島しょや、東北、北海道の地域が入っている。これらの地域では、療法士の拡充が望まれるといえよう。
3病院の充実度は、最多地域と最少地域で約10倍の違いが生じている
続いて、医療施設の様子をみる。医療圏ごとのランキングをとると、つぎのようになった。
図表3. 二次医療圏ごとの人口10万人当たり病院数、一般診療所数、訪問診療施設数、在宅看取り施設数の比較
【病院】
九州、四国地方や北海道で、人口比の病院数が多い地域がある。一方、関東、近畿地方や愛知の医療圏の一部は、病院が少ない。その結果、最多の熊本・芦北と、最少の神奈川・川崎北部では、約10倍の違いが生じている。

【一般診療所】
一般診療所は、都市部に多くみられる。東京・区中央部や大阪・大阪市のような大都市に限らず、島根・大田のような地方都市でも充実している地域がある。反面、北海道の農村部などでは、少ない地域がある。一般診療所は、地域医療の要の施設であるため、整備が急がれるものと考えられる。

【訪問診療施設】
訪問診療施設は、中国地方や、和歌山、鹿児島で、充実している地域がある。一方、関東地方には、施設が少ない地域が散在している。在宅や介護施設での医療の展開には、これらの地域での訪問診療施設の整備が不可欠とみられる。

【在宅看取り施設】
長野・大北や京都・丹後など、在宅看取り施設が充実している地域がみられる。一方、北海道の5つの医療圏や、佐賀・西部には在宅看取りを行った施設がなかった。北海道や東北で、施設が少ない地域が点在している。ターミナルケアを行う拠点として、その整備が求められるものと考えられる。
4病床は、九州地方や北海道、中国・四国地方に充実している地域がある
最後に、病床の整備と、代表的な治療の実施についてランキングをとってみる。
図表4. 二次医療圏ごとの人口10万人当たり病床数、人工透析数、全身麻酔数、悪性腫瘍手術数の比較
【病床】
病床は、九州地方や北海道、中国・四国地方に充実している地域がある。一方、関東地方には病床の少ない地域がみられる。病床の整備状況は、地域ごとの違いが大きい。

【人工透析】
人工透析の実施件数の上位には、九州地方の地域が比較的多くみられる。一方、和歌山・橋本や秋田・北秋田などでは少ない。これらの地域では、今後、人工透析患者の増加への対応が必要となろう。

【全身麻酔】
全身麻酔は、大規模病院が多く、多数の手術が行われる東京・区中央部が突出している。これに、千葉・安房、群馬・前橋が続いている。一方、11の医療圏では、実施件数が0であった。

【悪性腫瘍手術】
悪性腫瘍手術は、都市部の医療圏で実施件数が多い。上位10の医療圏の都道府県がすべて異なっているのが特徴的といえる。一方、6つの医療圏では、実施件数が0であった。
 

4――おわりに

4――おわりに

地域医療を考える際は、二次医療圏がベースとなる。本稿では、二次医療圏に焦点を当てて、いくつか比較を行った。比較を通じて、読者の二次医療圏に対する関心が高まれば幸いである。今後も、こうした比較を試みることとしたい。(なお、次ページ以降には、二次医療圏の一覧表を付している。自分の住む医療圏の確認、他の二次医療圏との比較等に、ご活用いただきたい。)
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保険研究部   主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

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