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オルタナティブデータから見たコロナ禍における宿泊業の現状-不動産市場分析におけるオルタナティブデータの応用可能性(1)

佐久間 誠
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1――はじめに
オルタナティブデータとは、経済統計や財務情報などこれまで伝統的に活用されてきたデータ以外の非伝統的なデータの総称である。伝統的なデータと比べて、オルタナティブデータは頻度が高いデータや粒度が細かいデータをタイムリーに取得できることが多い2。これまで日本におけるオルタナティブデータの活用は進んでこなかったが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、関心が高まっている3。
こうしたなか、内閣府地方創生推進室と内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局は、コロナ禍の地域経済への影響を迅速かつ詳細に可視化するため、オルタナティブデータのデータプラットフォーム「V-RESAS」を2020年6月にリリースした。V-RESASにおいて宿泊業に関しては、観光予報プラットフォーム推進協議会が集計した宿泊数データを提供している。同データは、旅行会社店頭、予約サイト、外国語予約サイトなどから集計され、地域別や宿泊者属性別などに宿泊者数データを週単位や月単位で確認できる。そこで本稿では、同データをもとに宿泊業の動向を確認する。
1 他にも民間企業が提供するものとしてはSTR社のデータなどがある。
2 オルタナティブデータの活用に当たっては課題もあり、次稿以降で述べる。
3 辻中(2020)
2――オルタナティブデータで見る宿泊業の現状
4 佐久間(2020)「Go To Travelによるワーケーションのすすめ-感染防止と両立したウィズ/アフターコロナの働き方を体験する旅を」、研究員の眼、ニッセイ基礎研究所、2020年7月14日
5 水野・大西・渡辺(2020)では、各都道府県の4月19日の自粛率は同時点の感染者数の対数関数に従うことを示している。同先行研究では4月19日までの「累積感染者数」、本稿では2020年7月の「新規感染者数」を説明変数とした点において厳密には異なるが、第一波にあった4月時点の累積感染者数は現在の新規感染者数と概ね同様の意味合いを持つと考えている。
6 日本経済新聞(2020)
3――おわりに
ただし、新型コロナの感染動向やワクチン・治療薬の開発動向が刻々と変化するなか、宿泊業を取り巻く環境は今後も急変する可能性がある。高頻度・高粒度の分析を可能にするオルタナティブデータは、現在のように不確実性が高い環境において、現状を適切かつタイムリーに把握するためのツールとして有用だろう。
7 星野リゾート(2020)
8 中沢(2020)によれば、星野リゾートはマイクロツーリズムに注力することで、2020年8月には4分の3の施設の稼働率が平年並みに戻った。
参考文献
- 佐久間誠(2020)「Go To Travelによるワーケーションのすすめ-感染防止と両立したウィズ/アフターコロナの働き方を体験する旅を」、研究員の眼、ニッセイ基礎研究所、2020年7月14日< https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64930?site=nli>
- 辻中仁士(2020), 「COVID-19でにわかに注目を集めるオルタナティブデータ ~オルタナティブデータで捉える経済(1)」『経済セミナー』、2020年9月号、pp.52-57、日本評論社
- 東洋経済オンライン「新型コロナウイルス 国内感染の状況」制作:荻原和樹 < https://github.com/kaz-ogiwara/covid19>2020年9月14日参照
- 中沢康彦(2020)「星野リゾート、4分の3の施設が前年並みに 「小さな旅」が奏功」、日経ビジネス、<https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00181/081900015/?P=2>2020年9月14日参照
- 日本経済新聞(2020)「国交相、GoTo東京追加表明 来月1日から」、2020年9月11日、朝刊1面
- 星野リゾート(2020)「【星野リゾート】星野リゾートが提案する「マイクロツーリズム」~地域の魅力を再発見し、安心安全な旅 Withコロナ期の旅の提案~」
<https://www.hoshinoresorts.com/information/release/2020/05/90190.html>2020年9月14日参照 - 水野貴之・大西立顕・渡辺努(2020), 「流動人口ビッグデータによる地域住民の自粛率の見える化 - 感染者数と自粛の関係 -」、一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所<https://cigs.canon/article/20200422_6369.html> 2020年9月14日参照
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2020年09月15日「不動産投資レポート」)
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