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新型コロナ 陽性率も要チェック-第2波の襲来は、どのように把握すべきか?
基礎研REPORT(冊子版)9月号[vol.282]

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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◆新規感染者数の“信ぴょう性”
特に、東京都の新規感染者数の推移は激しい。5月23日にはわずか2人にまで減ったが、6月より徐々に増え、7月下旬以降、最多人数を更新する日が続いた。
感染再拡大時の新規感染者の大半は若齢者だが、今後、高齢者や基礎疾患のある人などに感染が拡大して、入院患者が増え、医療現場が逼迫する恐れもある。医療機関は、警戒を強めている。
この新規感染者数は、日々の変動が大きく、一喜一憂する原因となりがちだ。
たとえば、月曜日は、数が少なくなる。これは、日曜日に医療機関に持ち込まれる検体数が少ないため、月曜日に確認される人数も少なくなるからとされている。
また、4月の感染拡大時には、PCR検査が十分に行われていないのでは?との声があった。つまり、新規感染者数の信ぴょう性に疑問が投げかけられていた。
◆度々見直されてきた陽性率計算方法
東京都は5月8日に陽性率の公表を開始。過去にさかのぼってその推移をみると、4月は常に10%以上で、11日には最大31.7%にまで上がった。5月には、1%を切る水準まで低下。しかしその後、再び上昇し、7月中旬以降は6~7%近辺で推移。第2波の襲来を予感させる動きとなった。
この陽性率には、さまざまな疑問が出されて、計算方法が見直されてきた。
○同じ人が何回も検査する場合がある。回数で計算するのはヘンではないか?
→検査回数ではなく、検査した人の数をもとに計算することとした。
○患者が回復後に行なう陰性確認の検査を計算に含めるのはおかしいのでは?
→陰性確認のための検査は、陽性率の計算には含めないこととした。
○6月16日まで抗原検査で陰性判定の人にはPCR検査で確定検査を行っていた。この間の抗原検査の陰性を計算に含めると“二重計上”になってしまう。
→この時期の抗原検査の陰性は、陽性率の計算には含めないようにした。
○民間機関を含めずに、行政が行う検査 だけで計算するのはおかしいのでは?
→民間の検査機関分も含めて計算することとした。
○曜日の関係などで日々の検査数が異な ると、陽性率の値が大きく変動する。
→東京都や大阪府などでは、7日間の移動平均値で計算することとした。
◆陽性率をどうみるべきか
● 検査数が少な過ぎるから陽性率が高いのでは?というネガティブな反応。
● 濃厚接触者など、感染疑いの強い人たちに集中して検査を行なっているのだから、陽性率が高いのは当たり前だという冷めた見方。
● 感染の疑いのある人をうまく抜き出して、効率的に検査ができていると評価する意見。
● 潜在的な感染者(検査をすれば陽性となる人)が水面下にたくさんいるのでは?という恐怖感。
● 検査の精度は100%ではないため、やみくもに検査をすれば、偽陽性(本当は感染していないのに陽性となる)や、偽陰性(本当は感染しているのに陰性となる)の人がたくさん出る。その結果、偽陽性の人が療養する施設が不足する、偽陰性の人が人混みに入って感染を広げる、などコントロールが効かなくなるという、やや行政目線の指摘。
世界保健機関(WHO)は、3月に、検査の陽性率について見解を示している。〈陽性率が3~12%ならば、検査はかなり広範囲で実施されている。率がわずかのときは、検査対象を誤っているかもしれない。80%、90%などと高ければ、たぶん多くの感染者を検査できていない。〉
新規感染者数に一喜一憂せず、陽性率などを多面的にみて、感染拡大をとらえるべきと思われるが、いかがだろうか。
(2020年09月08日「基礎研マンスリー」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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