2020年09月08日

新型コロナで住宅市場は更に減速、ホテル・商業は厳しさを増す-不動産クォータリー・レビュー2020年第2四半期

基礎研REPORT(冊子版)9月号[vol.282]

金融研究部 准主任研究員   渡邊 布味子

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コロナ禍による需要急減の影響は、不動産市場においても顕在化しはじめている。。8/17に公表の2020年4-6月期の実質GDPは前期比▲7.8%と3四半期連続のマイナス成長になった。住宅市場は営業活動自粛などを背景に一段と減速し、上昇基調にあった地価は転換期を迎えている。

1―経済動向と住宅市場

8/17に公表の2020年4-6月期の実質GDPは前期比▲7.8%(前期比年率▲27.8%)と3四半期連続のマイナス成長になった。緊急事態宣言の発令に伴う外出自粛や店舗休業の影響で、民間消費や住宅投資が大幅減少となったほか、企業収益の悪化から設備投資が落ち込み、外需もマイナス寄与となる見通しである。ニッセイ基礎研究所は、8月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2020年度▲5.8%、2021年度3.6%を予想する[図表1]。経済基盤が損なわれたことから経済活動が元の水準に戻るまでには時間を要する見通しである。
[図表1]実質GDP成長率の推移(年度)
住宅市場は、昨年後半から既に悪化傾向にあったが、コロナ禍による着工休止などを背景に一段と減速している。2020年6月の新設住宅着工戸数は71,101戸(前年同月比▲12.8%)となり12カ月連続で減少した[図表2]。また、4‐6月累計では前年同期比▲12.7%減少した。
[図表2]新設住宅着工戸数(全国、暦年比較)
2020年6月の首都圏のマンション新規発売戸数は1,543戸( 前月同月比▲31.7%)と10カ月連続で減少し、4-6月累計では2,622戸(前年同期比▲55.5%)にとどまった[図表3]。モデルルームの閉鎖など営業活動を自粛したことで大きく落ち込んだ状態が続いている。
[図表3]分譲マンション新規発売戸数暦年比較(首都圏)

2―地価動向

これまで上昇基調にあった地価は転換期を迎えている。国土交通省の「地価LOOKレポート(2020年第1四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「73」( 前回97)、横ばいが「23」( 前回3)、下落が「4」(前回0)となり、横ばい地点が増加したほか下落地点が2014年第2四半期以来の出現となった[図表4]。
[図表4]全国の地価上昇・下落地区の推移

3―不動産サブセクターの動向

1│オフィス
三鬼商事によると、6月の都心5区空室率は4カ月連続上昇の1.97%(前月比+0.33%)となり、水準自体は低いものの上昇傾向が強まっている。一方、平均募集賃料(月坪)は78カ月連続で前月比プラスの22,880円(前年同月比+6.3%)となり、前回のピーク水準(08年8月)に迫る動きとなった。

三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2020年第2四半期の東京都心部Aクラスビル賃料(月坪)は38,871円( 前期比+0.3%)となった。Aクラスビルの空室率が7期連続で1%を下回るなか、賃料は4万円目前での天井感が続いている[図表5]。

ニッセイ基礎研究所は、東京都心部Aクラスビルの成約賃料は2020 年末に3.7 万円台、2024年末に3.6万円台へ下落すると予測する。
[図表5]東京都都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
2│賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は引き続き上昇している。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2020年第1四半期は前年比でシングルタイプが+4.1%、コンパクトタイプが+3.5%、ファミリータイプが+6.0%上昇した。また、LMCによると、都心5区の平均募集賃料(6月末、前年比)は全ての区で上昇し、なかでも渋谷区の上昇が顕著となっている。
3│商業施設
コロナ禍の影響はテナントの業態によって明暗が分かれている。商業動態統計などによると、2020年4-6月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が▲49.9%、スーパーが+2.8%、コンビニエンスストアが▲8.6%となった[図表6]。スーパーは日用品需要や巣ごもり消費が堅調な一方、百貨店は免税店売上の急減や外出自粛の影響などから大幅なマイナスとなった。コンビニエンスストアもオフィス街を中心に都心部の客数が減少している。
[図表6]商業施設の月次販売額(既存店、前年比)
4│ホテル
ホテルセクターは、コロナ禍によるダメージが一段と厳しさを増している。2020年4-6月累計の訪日外国人客数は前年同期比▲99.9%の約7千人となった[図表7]。また、宿泊旅行統計調査によると、2020年4-6月の延べ宿泊者数は前年同期比▲78.8%減少し、このうち外国人が▲98.3%、日本人が▲73.6%となった[図表8]。入国規制が厳格化され、国内においても人の移動自粛が要請されるなか、ホテルの宿泊需要はほぼ蒸発し、ホテルオペレータの倒産が相次ぐなど予断を許さない状況が続いている。
[図表7]訪日外国人客数の推移(12ヶ月累計、前年同月比)
[図表8]延べ宿泊者数の推移(月次、前年比)
5│物流施設
CBREによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2020年6月末)は0.6%(前期比+0.1%)と、引き続き過去最低水準で推移している[図表9]。近畿圏の空室率は4.8%(前期比+1.1%)に上昇したが、大型物件が空室を残して竣工したことが主因で、需要は引き続き堅調である。
[図表9]大型マルチテナント型物流施設の空室率
6│J-REIT(不動産投信)・不動産投資市場
2020年第2四半期の東証REIT指数(配当除き)は3月末比+4.5%上昇した。金融市場の落ち着きを受けて反発に転じたものの、TOPIX(+11.1%)の上昇と比べて戻りは鈍い[図表10]。

J-REITによる第2四半期の物件取得額(引渡しベース)は2,413億円(前年同期比▲47%)、上期累計で7,153億円(▲20%)となった。
[図表10]東証REIT指数の推移(2019、12末=100)
新型コロナウイルス感染拡大の影響は、J-REITの業績にも顕在化し始め、今後についても、J-REIT各社は守りを固めたリスクマネジメント重視の運用戦略が求められることになりそうだ。

不動産売買市場では、コロナ禍により売買交渉が停滞しており、第2四半期としては2011年の東日本大震災直後に次いで小さい金額となった。一方で、ジョーンズラングラサール社の調査によると、67%の投資家が「価格調整があれば新規投資を積極的に行う」と回答するなど、コロナ禍後も投資家の物件取得意欲は衰えていない模様である。今後は新型コロナに対する政策対応や景気回復のスピード、オフィス需要の動向、金融機関の貸出姿勢、リスクマネーの動向などについて注視が必要である。
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

(2020年09月08日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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