2020年08月24日

なぜ研修医は韓国政府の医科大学の定員4,000人増員計画に反対しているのか

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨
 
  • 韓国政府が医科大学の定員拡大や公共医科大学の設立を発表してから、研修医協議会を中心とした医師たちとの対立が続いている。
     
  • 韓国政府は、2006年以降3,058人で凍結されていた医科大学の定員を、2022年から毎年400人ずつ、つまり10年間で合計4,000人増やすことで7,000人近くまで増やす計画である。
     
  • 韓国政府は医科大学の定員を増やす理由として、最近、胸部外科、産婦人科、重症外傷外科等の生命と直結している分野の専門医を志願する若者が少ないことや、医療供給の地域格差が発生していることを挙げている。
     
  • 研修医は、韓国の人口1,000人当たり医師数の年平均増加率はOECD平均より高い、医師の地域格差はOECD加盟国の中で小さい、義務期間10年は医療サービスの質を下げる等の理由を挙げて医科大学の定員拡大や公共医科大学の新設に反対している。
     
  • 韓国政府は、韓国より先に医師不足や医師偏在の問題に対する対策を実施した日本の対策を参考としながら今後の対策を検討する必要がある。特に、医療崩壊や国民の不安を最小化するためにどのような対策を行ったのかに注目することが重要であると考えられる。

■目次

・韓国政府が医科大学の定員の拡大や公共医科大学の新設を発表
・なぜ韓国政府は医科大学の定員を増やそうとするのか?
・なぜ研修医らは医科大学の定員拡大や公共医科大学の新設に反対しているのか?
  (1)人口1,000人当たり医師数の年平均増加率はOECD平均より高い。
  (2)医師の地域格差はむしろOECD加盟国の中で小さい
  (3)義務期間10年は医療サービスの質を下げる
・結びに変えて
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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