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- 消費者物価(全国20年7月)-コロナ禍でも一定の底堅さを維持するが、10月以降は再びマイナスへ
2020年08月21日
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1.コアCPI上昇率は2ヵ月連続のゼロ%
コアCPIの内訳をみると、電気代(6月:前年比▲1.6%→7月:同▲2.0%)の下落幅は若干拡大したが、ガス代(6月:前年比▲1.2%→7月:同▲0.7%)、ガソリン(6月:前年比▲12.2%→7月:同▲9.2%)、灯油(6月:前年比▲16.7%→7月:同▲15.3%)の下落幅が縮小したことから、エネルギー価格の下落率は6月の前年比▲5.3%から同▲4.5%へと縮小した。
また、テレワークや巣ごもり需要の増加を反映し、家庭用耐久財(6月:前年比2.5%→7月:同4.0%)、教養娯楽用耐久財(6月:前年比3.1%→7月:同3.9%)が伸びを高めたこともコアCPIを押し上げた。
また、テレワークや巣ごもり需要の増加を反映し、家庭用耐久財(6月:前年比2.5%→7月:同4.0%)、教養娯楽用耐久財(6月:前年比3.1%→7月:同3.9%)が伸びを高めたこともコアCPIを押し上げた。

なお、観光需要が急速に落ち込んでいる中、宿泊料が6月の前年比▲6.6%から同▲4.5%へとマイナス幅が縮小したほか、需要がほぼ消失した状態が続いている外国パック旅行が6月の前年比▲7.1%から同1.3%とプラスに転じた。ただし、宿泊旅行関係は取引がほとんどないことが推察されるため、消費者物価指数の価格が必ずしも実態を反映していないことには留意が必要だ。宿泊料については、Go To トラベルキャンペーンの実施に伴う割引が8月から反映されるため、価格が大幅に低下することが見込まれる。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.51%(6月:▲0.59%)、食料(生鮮食品を除く)が0.11%(6月:0.18%)、その他が0.07%(6月:0.08%)であった(当研究所試算による消費税、教育無償化の影響を除くベース)。
2.上昇品目数の割合が50%を割り込む

3.コアCPI上昇率は10月以降、はっきりとしたマイナスに
コアCPI上昇率は2ヵ月連続でゼロ%となった。緊急事態宣言後の需要の急激な落ち込みを考えれば、物価は一定の底堅さを維持していると判断される。巣ごもり需要の高まりから、食料品、日用品、家電製品などの消費は堅調なものが多いこと、自粛要請などにより需要が急激に落ち込んでいる外食、旅行などのサービスについては、通常の景気悪化時と異なり、値下げによる需要喚起が期待できないことがその背景にあると考えられる。
ただし、足もとの消費者物価上昇率は消費税率引き上げ(+1.0%程度)+教育無償化(▲0.7%程度)の影響で0.3%程度押し上げられており、この影響を除けば引き続きマイナスとなっている。コアCPI上昇率は、8月にはエネルギー価格の下落幅縮小からいったんプラスに転じる可能性もあるが、10月以降は消費税率引き上げ(+幼児教育無償化)の影響が一巡することから、再びマイナスに転じる可能性が高い。その後は、自粛ムードが引き続き強い中で、雇用所得環境の悪化が財、サービスにかかわらず個人消費の下押し要因となり、需給面からの物価押し下げ圧力が強い状態が続くこと、賃金の下落がサービス価格の下押し圧力となることから、20年度後半にかけてマイナス幅が拡大することが予想される。
ただし、足もとの消費者物価上昇率は消費税率引き上げ(+1.0%程度)+教育無償化(▲0.7%程度)の影響で0.3%程度押し上げられており、この影響を除けば引き続きマイナスとなっている。コアCPI上昇率は、8月にはエネルギー価格の下落幅縮小からいったんプラスに転じる可能性もあるが、10月以降は消費税率引き上げ(+幼児教育無償化)の影響が一巡することから、再びマイナスに転じる可能性が高い。その後は、自粛ムードが引き続き強い中で、雇用所得環境の悪化が財、サービスにかかわらず個人消費の下押し要因となり、需給面からの物価押し下げ圧力が強い状態が続くこと、賃金の下落がサービス価格の下押し圧力となることから、20年度後半にかけてマイナス幅が拡大することが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年08月21日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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