2020年07月20日

ジェネレーションαの時代-Z世代の次を考える

生活研究部 研究員   廣瀨 涼

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1――世代論にみる若者の捉え方

変わりゆく消費文化の中で、その先頭にいたのはいつも「若者」であり、若者の消費を理解することは、現代消費文化そのものの理解に繋がると筆者は考える。しかし、一概に若者といっても明確な定義はなく、例えば政府刊行物をみても15~34歳を若者(内閣府政策統括官2005)と定義する時もあれば15~24歳(文部科学省、厚生労働省、内閣府2003)と定義されていることもある。発達心理学では、中学生から18歳までを「思春期」、18~30を「青年期」と定義したり、広告業界ではセグメンテーションとしてM1(20~34男性)F1(20~34女性)と消費者を分類したりすることもある1

このような世代論は特にアメリカで活発に行われている。例えばウィリアム・ストラウスとニール・ハウによる「ストラウス‐ハウ世代理論(Strauss–Howe generational theory)は、アメリカにおける大きな戦争を伴う社会的な「危機」がおよそ80年の周期で訪れており、それぞれの危機の後にアメリカの国や社会が大きく変化していることを明かしている。これは「フォース・ターニング(第4の節目)」という言葉で知られており、彼らは1つの周期(80年)を約20年ずつに分け、「高揚」「覚醒」「分解」「危機」という、以下の四つに分類している2
 

第一の節目(ファースト・ターニング)
・・・この時期には、その前にあった危機を乗り越えた新しい社会秩序が浸透し、確立する。

第二の節目(セカンド・ターニング)
・・・第一の節目の間に生まれた戦争を知らない世代が成人し、新たな価値観を持つようになる。そして、第一の節目で確立した社会秩序を攻撃し始める。

第三の節目(サード・ターニング)
・・・第一の節目に確立した社会秩序が崩壊し出し、その代わりにセカンド・ターニングに登場した新しい価値観が浸透し始める。

第四の節目(フォース・ターニング)
・・・古い価値観は新しいものに完全に置き換えられる。

 
彼らの主張そのものについてはここでは深く言及しないが、ある周期ごとに人間の生態(嗜好や生活様式など)が変化しているという点については疑う余地はないだろう。

日本においても「新人類」「バブル」「団塊ジュニア世代」「ゆとり世代」「脱ゆとり世代」といったように日本の社会(歴史)に沿って世代語りがされるが、このような分類はいわば“レッテル”であるため、世代論そのものが時代錯誤であると主張する者もいる。彼らの主張を否定はできないが、少なくとも世代ごとにどのような時代を歩いてきたのか、市場変化によってどのような生活習慣を身に着けているのか、と大まかに把握するという意味では世代論は有用である。

筆者が昨今取り組んでいるテーマである「Z世代(1996~2012年生まれ)」もこのような社会変化に伴った人間の生活様式や価値観の変化を世代ごとに分断したものの一つに過ぎない。また、世代の分断方法は、何によって差が生まれているか着目するものによっても異なるため、Z世代と同時期に生まれた層が「ジェネレーションC」や「ニュー・サイレント・ジェネレーション」と呼ばれることもある。明確な定義がないため共通の世代であっても呼び方が異なるのである。また、同様にZ世代そのものにおいてもカナダ統計局の場合には1993年生まれ以降を、アメリカ心理学会の場合には1997年生まれ以降を指すなど、定義は厳密に決められているわけではないが、あくまでも、大まかに世代を把握することが目的にあるのである。
 
1 廣瀨涼(2020)「Z世代の情報処理と消費行動(1)-Z世代が歩んできた時代」『基礎研レター 2020/01/29』
2 ウィリアウム・ストラウス&ニール・ハウ『フォース・ターニング 第四の節目』ビジネス社(奥山真司訳)
 

2――Z世代の由来~X世代とY世代の後継世代

2――Z世代の由来~X世代とY世代の後継世代

そもそもなぜ「Z」なのだろうかという疑問が沸くが、この背景として、Z世代以前の世代として「X世代」と「Y世代」があることに触れる必要がある。
 
Generation X(X 世代) = 1965 – 70 年頃の生まれ
Generation Y(Y 世代) = 1980 – 95 年頃の生まれ
Generation Z(Z 世代) = 1995年以降の生まれ
 
このアルファベットによる世代の分類はX世代が始まりとされており、Z世代はその系譜を踏んでいる。Generation Xをという言葉は、写真家のロバート・キャパ(Robert Capa)の造語に由来する。1950年代に、第二次世界大戦後に成長した若者らをテーマにしたフォトエッセイに「Generation X」というタイトルを付けたことが始まりとされている。“X”というアルファベットがつけられた理由であるが、SFテレビドラマの『X-ファイル』を想起すればわかりやすいが、“X”には未知という意味が込められている。諸説あるが、未知の数量を表すために使われていたアラビア語「Shei」をギリシャ語に置き換えると「Xei」となり、その頭文字であるXを用いて、わからないものを示す単位や記号として「X」が付けられるようになったと考えられている。例えばX線は、発見時にその性質が不明であったためつけていた“X”の名残であるし、遊星から飛来した謎の「物体」を題材にしたSF映画『The Thing』の邦題が『遊星よりの物体X』と訳されるなど、未知の“モノ”をXに置き換えたものは、我々の身近にも多々ある。ロバート・キャパが“X”とつけたように、当時の人たちにとってAfter warの世代は文字通り“未知な世代”だったのだろう。その後、1991年にダグラス・クープランド(Douglas Coupland)の『ジェネレーションX -加速された文化のための物語たち(Generation X: Tales for an Accelerated Culture)』が国際的なベストセラーとなり、「ジェネレーションX」という言葉が広く浸透していった。

X世代の次の世代である1980年~1995年頃に生まれた“ポストX世代”のことをアルファベット順になぞってY世代と呼ぶようになる。この世代は2000年代に成人・社会人になることから「ミレニアル世代」とも呼ばれ、物心ついた時にはインターネットの環境が整っていた「デジタルネイティブ」の文脈で使われる。

デジタルネイティブの多くは、自身が学生の時にはインターネットが普及しており、その新しい技術にいち早く適応していった世代であるが、インターネットが普及した後に生まれた所謂「ネオ・デジタルネイティブ」もいるわけであり、彼らをGeneration Z(Z世代)と呼ぶ。Y世代とZ世代の境目が95年である背景もWindows95の登場によってインターネットが一般的に使用できるようになったという点が挙げられる。Generation Zという言葉自体は2000年にアリソン・ステイン・ウェルナー(Alison Stein Wellner)が雑誌Ad Age(Advertising Age)で使用したことが始まりとされている。Z世代に関しては消費を中心に彼らの文化を考察しているので筆者の過去のレポートを参照されたい。
 

3――ポストZ世代

3――ポストZ世代

現状ではZ世代が所謂新人類として扱われ、彼らの消費行動を把握しようと日夜マーケッターが調査をしているわけだが、彼らの次の世代も生まれている。彼らは「ポストZ世代」であり、追々彼らにスポットが当てられるわけである。このポストZ世代を何と呼べばいいのだろうか。(オタクとしては、漫画『ドラゴンボール』を想起するとZの後はGTだった事からGT世代を期待してしまわなくもないし、XYZの並びから漫画『シティハンター』の冴羽獠を連想しなくもない。)

現状では、彼らポストZ世代は「Generation Alpha(α世代)」と呼ばれることで定着しつつある。α世代は概ね2010年代序盤から2020年代中盤にかけて生まれる世代とされており、2030年代から2040年代頃に社会に進出する世代である。2008年にマーク・マックリンドル(Mark McCrindle)によって考案された言葉で、ラテン文字の最後に当たるZの次にギリシャ文字の最初に当たるαを採用し、新たな時代の始まりをイメージした世代名として考案された。α世代のはじまりが2010年代序盤である背景には、この年にInstagramとiPadが登場したことにある。2010年と言えばエンタメ業界では、流行語大賞にもなった「ゲゲゲの女房」の社会現象やAKB48の『へビーローテーション』が大ヒットした年でもあるが、これらはα世代にとっては生まれる前の昔のコンテンツなのである。
 

4――α世代の展望

4――α世代の展望

Z世代の終わりを、例えば2012年と定めてみると、2020年現在、α世代の1期生は7~8歳である。実際にまだα世代が市場に与える影響力は大きくはないものの現状でもZ世代との間に以下のような価値観や生活様式の差が生まれることが予想されている。Z世代は「スマホ世代(iGen)」とも呼ばれ、スマートフォンを手に持ち、画面を見て指で操作する方法がIT利用の中心であった。しかし、α世代ではAIがより生活に密着していくのみならず、将来的には超小型のITデバイスの登場により身体へのインプランタブル(埋め込み型)も期待されている中で、当面は身に着ける「ウエアラブルデバイス」がより充実していくと予想されている。近年開発が進んでいるのが、衣服タイプの「スマートウエア」である。伸縮性のある導電素材を使った生体情報計測ウエアを製品化され、着るだけで心拍数や心拍周期などの生体情報がわかるなど、スポーツや医療、介護分野での活用が期待されている3

また、彼らの多くが2020年に世界を震撼させた新型コロナウイルスによるパンデミック後に生まれてくるということである。我々は現状beforeコロナ、afterコロナのように生活様式をパンデミック前後と比較し、先行きが見えない中で当面はwithコロナとして現状に適応して生活する必要性を感じている。特に消費行動においては顕著に違いが現れているのではないだろうか。しかし、α世代はbeforeコロナの時代を知らないわけであり、我々が順応していくwithコロナの時代は、彼らにとっては当たり前のこととして価値観や行動様式が形成されていくのであろう。  

5――若者論に対する私論

5――若者論に対する私論

前述した通り見方によっては、世代論は時代遅れであり、世代で分断して語ることは不毛な場合もある。ことによっては、我々世代で言うところの「これだからゆとりは・・・」のように、世代そのものにステレオタイプなイメージを植え付けかねない。そういった中でも我々が世代論を好むのは、自分の知らない世代の存在が文字通り怖いからなのかもしれない。例えばヤフーオークションの誕生やamazonによる流通革命により、わずか20年でネットショッピングはあたかも昔から存在していたかのように、我々の購買方法の選択肢として定着した。しかし、言い換えれば20年前にはネットショッピングという選択肢は存在してはおらず、我々は市場変化に適応していったのである。一方でZ世代においては、一期生である1996年生まれが小学校に入学した時には「amazonマーケットプレイス」がオープンしており、彼らの多くは、ネットショッピングが存在していない時代を知らないのである。これは、Z世代とそれ以前の世代で消費行動そのものや、ネットショッピングに対する価値観や意識、態度、受容度が異なることを意味している。このような市場変化に限らず、若者は新規性を好み、新しいサービスや商品に対する受容度が高いことから流行やトレンドといった社会現象を生み出す中心にいる。このような新規性に適応し、時代を作っていく彼らの消費文化は、時代の流れについていけなくなったそれ以前の世代にとっては正に「未知」そのものなのである。

また、「近頃の若いもんは・・・」や「俺たちの若いころは・・・」といった常套文句も元を正せば、価値観の違いによって発せられるわけであり、その差は市場変化や社会(環境)変化によって生まれているのである。情報ソース一つとっても例えば団塊ジュニア世代までの世代にとってはマスメディアが中心であり、発信者によってスクリーニングされている情報をいわば受動的に取り入れていた。一方Z世代は、マスメディアのみならず誰もが情報を発信できるマイクロメディアが乱立し、情報の供給過剰状態に常に身を置き、社会動向を文字通りで傍観しているのである。またその社会動向自体の多様化に伴い、今まで「当たり前」だったことが「当たり前ではない」と認識に変化がうまれたり、マイノリティが声を上げやすい世の中にもなった。これ等の変化は紛れもない事実であり、この変化に対応していった世代と、生まれたときから新しい社会的価値観の元に身を置く世代とでは、考え方が異なるのは当然のことである。そのため「若者は何を考えているかわからない」というのはあながち間違いではなく、「未知」な存在であると世代間で一線を引いてしまうということも一種の防衛反応に近いものであると筆者は考える。

しかし、若者が「未知」であるということは何も今始まったわけではなく、前述した通り、戦後間もないアメリカの若者たちも当時の人々にとっては「未知」な存在であった。フジテレビ系列で放送していたアニメ『こちら葛飾区公園前派出所』のエンディングテーマである「おいでよ亀有」4
 
誰でも一度は子供だったけど みんな忘れてる
偉そうな顔した政治家や 目の上ブルーなおばさんも

という歌詞があるが、今若者でない世代も以前は誰しもが若者で、彼らもまた「未知」の存在だったのである。世代論の焦点はここにあると筆者は考えている。

結局若者(市場)が注目を浴びるのは、未知であるから魅力であり、彼らが担う未来に期待しているからではないだろうか。Zであろうがその後に控えるαであろうが、本質はロバート・キャパがつけた「X」が表しているのだろう。
 
4 作詞ラサール石井 作曲佐橋俊彦 日本コロムビア
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生活研究部   研究員

廣瀨 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャー、テーマパーク、ノスタルジア

(2020年07月20日「基礎研レター」)

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