2020年07月10日

健康経営と「健康経営優良法人2020」認定法人-大規模法人部門 1,476法人、中小規模法人部門4,816法人を認定

小林 直人

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1――はじめに

2020年3月に「健康経営優良法人2020」認定法人が認定、発表された1。本稿では、「健康経営」と「健康経営優良法人認定制度」について紹介する。
 
1 経済産業省「『健康経営優良法人2020』認定法人が認定されました!」2020年3月2日(https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200302004/20200302004.html, 2020年6月26日最終閲覧)。
 

2――健康経営・健康投資とは

2――健康経営・健康投資とは

経済産業省では、「健康経営®2」とは、従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することとしている3

また、健康投資とは、健康経営の考え方に基づいた具体的な取組とし、取組に必要な経費は単なる「コスト」ではなく、将来に向けた「投資」であると捉えられている。

そのうえで、企業が経営理念に基づき、従業員の健康保持・増進に取り組むことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上へ繋がることが期待されるとしている。

なお、「健康」とはWHO(世界保健機関)が示すHealth の定義に準じ、以下の通りとしている4
 
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not
merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、
そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。
 
2 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
3 経済産業省「健康経営の推進について」12頁((2020年4月) (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf, 2020年5月21日最終閲覧)、経済産業省「健康投資管理会計ガイドライン」2頁(2020年6月12日)(https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200612001/20200612001-2.pdf, 2020年6月26日最終閲覧)。
4 経済産業省「健康投資管理会計ガイドライン」2頁(2020年6月12日)( https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200612001/20200612001-2.pdf, 2020年6月26日最終閲覧)。経済産業省「健康経営の推進について」12頁((2020年4月) https://www.meti.go.jp/policy/ mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf, 2020年6月26日最終閲覧)。また、日本WHO協会「健康の定義について」(https://www.japan-who.or.jp/commodity/kenko.html, 2020年6月26日最終閲覧)参照。
 

3――健康経営優良法人認定制度

3――健康経営優良法人認定制度

(1) 「健康経営優良法人認定制度」とは
経済産業省は健康経営の普及促進に向けて、次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ(日本健康会議健康経営500社ワーキンググループ及び中小1万社健康宣言ワーキンググループと合同開催)において「健康経営優良法人認定制度」という顕彰制度の設計を行っており、2020年(令和2)年3月2日付けで「健康経営優良法人2020」を発表した5。この顕彰制度の認定主体は、日本健康会議である6

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度である。

健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としている。

健康経営の普及促進及び質の向上の観点から、健康経営優良法人2019(大規模法人部門)の認定においては、健康経営優良法人(大規模法人部門)全体を通称「ホワイト500」としていたが、健康経営優良法人2020より、健康経営優良法人(大規模法人部門)認定法人の中で、健康経営度調査結果の上位500法人のみを通称「ホワイト500」として認定するなどの変更が行われている7
 
5 経済産業省「『健康経営優良法人2020』認定法人が認定されました!」2020年3月2日(https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200302004/20200302004.html, 2020年6月26日最終閲覧)、経済産業省「健康経営優良法人認定制度」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_se rvice/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html, 2020年6月26日最終閲覧)。
6 経済産業省「健康経営優良法人についてよくある質問」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/yuryohoujin_faq.pdf, 2020年6月24日最終閲覧)。
7 経済産業省「健康経営優良法人についてよくある質問」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/yuryohoujin_faq.pdf, 2020年6月24日最終閲覧)等参照。
(2) 「健康経営優良法人2020」認定法人の状況
「健康経営優良法人2020」の認定は大規模法人部門と中小規模法人部門で行われている。
4回目の認定となる今回は、大規模法人部門に1,476法人(うち500法人を「ホワイト500」とする。)、中小規模法人部門に4,816法人が認定され8、それぞれ前回の大規模法人部門の813法人9からで約1.8倍、中小規模法人部門の2,501法人10から約1.9倍の認定数となっている(2020年(令和2)年7月1日現在)。
 
8 経済産業省「健康経営優良法人認定制度」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_se rvice/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html, 2020年7月9日最終閲覧)、「健康経営優良法人2020(大規模法人部門(ホワイト500))認定法人一覧」(2020年7月1日更新)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2020_daikibo_list_20200302.pdf, 2020年7月9日最終閲覧) 、「健康経営優良法人2020(中小規模法人部門)認定法人一覧」(2020年7月1日更新)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2020_chushokibo_list_20200302.pdf, 2020年7月9日最終閲覧)。
9 「健康経営優良法人2019(大規模法人部門)認定法人一覧」(2020年3月1日更新)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2019_daikibo_list_20190221.pdf, 2020年6月26日最終閲覧)。
10 「健康経営優良法人2019(中小規模法人部門)認定法人一覧」(2020年3月1日更新)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2019_chushokibo_list_20190221.pdf, 2020年6月26日最終閲覧)。
1) 大規模法人部門
大規模法人部門については、法人格の分類を見ると、表・図1のとおり、会社法上の会社等が1,366法人と全体の9割以上を占め、医療法人、社会福祉法人、健保組合が59法人で続いている。
《表・図1》大規模法人部門:法人格の分類
会社法上の会社等の1,366法人における業種の内訳では、表・図2のとおりサービス業が201法人でも最も多く、情報・通信業が195法人、小売業が176法人と続いている。
《表・図2》大規模法人部門:会社法上の会社等における業種(証券取引所に準拠する業種)の内訳
2) 中小規模法人部門
中小規模法人部門については、都道府県別では、表・図3のとおり、大阪府の612法人が最も多く、愛知県が588法人、東京都が355法人と続いている。
《表・図3-(1)》中小規模法人部門:都道府県別認定法人数
《表・図3-(2)》中小規模法人部門:都道府県別認定法人数
業種別でみると。表・図4のとおり、製造業が1,027法人で最も多く、建設業が932法人、その他が744法人、その他サービス業が508法人と続いている。
《表・図4》中小規模法人部門:業種別認定法人数

4――おわりに

4――おわりに

経済産業省では、健康経営が今後更に普及拡大するためには、健康経営が全ての企業において当たり前のものとなる、すなわち、「健康経営」の概念が自走していく必要があるとしている。

「自走」には(1)健康経営の考え方の自走化(2)健康経営の顕彰制度の自立の2つがあるとし、「自走」に向けた検討の一つとして、健康投資管理会計ガイドラインの整備等を「健康投資の見える化」検討委員会で議論している11

今年の健康経営優良法人2021認定に向けた申請のスケジュールは、昨年の健康経営優良法人2020と同様のスケジュールが予定されており、基準については7月頃公開予定とされている11。健康経営に取り組む法人が、今後も引き続き増えていくことが期待される。
 
11 経済産業省「健康経営の推進について」55頁( (2020年4月) (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf, 2020年6月29日最終閲覧)、経済産業省「第4回健康投資の見える化検討委員会事務局説明資料①(健康投資管理会計ガイドラインの今後の検討方針とスケジュールについて)」1頁( (2020年1月30日) (https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jisedai_health/kenko_toshi/mieruka/pdf/004_02_00.pdf, 2020年6月29日最終閲覧)。健康投資管理会計ガイドラインについては、第4回「健康投資の見える化検討委員会」では7月頃に取りまとめ予定とされているが、6月に公表されている(経済産業省「『健康投資管理会計ガイドライン』を策定しました-健康経営の効果的な実施や、様々な市場との対話のための枠組み-」(2020年6月12日)(https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200612001/20200612001.html, 2020年6月29日最終閲覧)、経済産業省「「健康投資管理会計ガイドライン」について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoutoushi_kanrikaikei_guideline.html, 2020年6月29日最終閲覧))。
12 経済産業省「健康経営優良法人認定制度」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html, 2020年6月29日最終閲覧)。

(2020年07月10日「基礎研レター」)

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小林 直人

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