2020年06月11日

キャッシュレスを学ぼう(5)-暗号資産(仮想通貨)

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)は、ブロックチェーン(分散台帳)技術によって、取引が行われる。通貨の機能が期待されているが、実態としては、現時点で資産運用の対象となっているものが多いようだ。
 
一般に暗号資産は、資金決済法によって規制されており、暗号資産を交換・保管する業者は経済産業省の登録を受けなければならない。業者は、暗号資産が流出しないような措置を取る必要があり、また万一の流出時に備えて、一定の暗号資産の分別保管が求められる。業者は誤認表示を行ってはならないとされ、また専ら利益を得るために売買をすることを助長するような表示をすることは禁止される。
 
新たに暗号資産を発行することをInitial Coin Offering(ICO)という。このうち、配当を得ることができる暗号資産(セキュリティトークン、法律上は電子記録移転権利という)の新規発行については、金融商品取引法の適用がある。電子記録移転権利のICOを広く行うには、有価証券届出書等の開示規制に従う必要があるほか、その取扱いは第一種金融商品取引業者が行う必要がある。金融商品取引業者は一定の説明義務を負い、誤認させるような説明は禁止される。
 
暗号資産(電子記録移転権利を含む)のマーケット参加者には、不公正な行為が禁止され、偽計取引や風説の流布等が規制されている。

■目次

1――はじめに
2――暗号資産の構造
  1|暗号資産とは何か
  2|暗号資産の一形態としてのトークン
3――暗号資産にかかる法的規制
  1|資金決済法による規制の対象
  2|利用者資産の保護
  3|業務の適正さの確保
4――金融商品取引法の規制
  1|電子記録移転権利特有の規制
  2|暗号資産を用いた不公正な行為の規制
  3|暗号資産デリバティブ
5――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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【キャッシュレスを学ぼう(5)-暗号資産(仮想通貨)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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