2020年06月08日

米雇用統計(20年5月)-雇用者数は前月比+250.9万人増、失業率は13.3%。一段の悪化予想に反して前月から改善

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数、失業率ともに悪化予想に反して前月から改善

6月5日、米国労働省(BLS)は5月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+250.9万人の増加1(前月改定値:▲2,068.7万人)と、▲2,053.7万人から下方修正された前月に続き減少を見込んでいた市場予想の▲750万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)に反し、前月から増加に転じた(後掲図表2参照)。

失業率は13.3%(前月:14.7%、市場予想:19.0%)と、こちらも前月から一段の上昇を見込んでいた市場予想に反して、前月から低下した(後継図表6参照)。労働参加率2は60.8%(前月:60.2%、市場予想:60.1%)と前月から低下を予想した市場予想に反して、前月から+0.6%ポイント上昇した(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:経済活動の段階的な再開に伴い、労働市場が底入れした可能性

5月の雇用者数は、1939年の統計開始以来最大の落ち込みとなった前月から増加に転じた。週次の失業保険新規申請件数は雇用統計の調査週でも200万人台前半の高水準を維持していたことから、雇用者数が増加に転じたことは予想外であった。5月は減少が顕著であった娯楽・宿泊業が+123.9万人増と雇用増加幅のおよそ半分を占めたほか、他業種も雇用増加に転じており、外出制限の緩和など経済活動の段階的な再開に伴い、労働市場が底入れした可能性を示唆している。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 家計調査で失業率は前月から低下したものの、3月、4月と同様に本来失業者とカウントされるべき人数の相当数が就業者としてカウントされており、正確に失業者として認識されていた場合には、5月発表の13.3%からおよそ3%ポイント程度高くなっていたようだ。

一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が▲1.0%(前月:+4.7%、市場予想:+1.0%)と、前月に大幅な伸びとなった反動もあって、増加を見込んだ市場予想に反して、減少に転じた。前年同月比は+6.7%(前月改定値:+8.0%、市場予想:+8.5%)と、こちらも+7.9%から上方修正された前月、市場予想を下回った(図表1)。

これまでみたように、5月は雇用者数、失業率ともに労働市場が底入れしている可能性を示唆した。もっとも、経済活動の再開や全米規模に広がっているデモの影響により、米国内での新型コロナの感染拡大に再び弾みがつくような状況になれば、感染対策の再強化によって労働市場の回復に水がさされる可能性も残っている。

3.事業所調査の詳細:飲食・娯楽などの雇用が大幅に増加

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+242.5万人(前月:▲1,735.1万人)と3ヵ月ぶりに増加に転じた(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、娯楽・宿泊が前月比+123.9万人(前月:▲753.9万人)となったほか、小売業が+36.8万人(前月:▲228.6万人)と大幅な雇用減少となった前月から増加に転じた。さらに、医療・社会扶助サービスが+39.1万人(前月:▲212.9万人)、専門・ビジネスサービスが+12.7万人(前月:▲218.9万人)となり、前月から増加に転じた。

財生産部門は前月比+66.9万人(前月:▲237.3万人)とこちらも前月から増加に転じた。建設業が+45.4万人(前月:▲99.5万人)となったほか、製造業が+22.5万人(前月:▲132.4万人)の増加となった。

一方、政府部門は前月比▲58.5万人(前月:▲96.3万人)とマイナス幅は縮小したものの前月に続いて大幅な減少となった。内訳をみると、連邦政府が▲1.4万人(前月:+0.1万人)と前月から小幅ながら減少に転じたほか、州・地方政府が▲57.1万人(前月:▲96.4万人)と大幅な減少となった。

4.家計調査の詳細:労働参加率は4ヵ月ぶりに改善

家計調査のうち、5月の労働力人口は前月対比で+174.6万人(前月:▲643.2万人)と4ヵ月ぶりに増加に転じた。内訳を見ると、失業者数が▲209.3万人(前月:+1,593.8万人)と減少に転じた一方、就業者数が+383.9万人(前月:▲2,236.9万人)と失業者の減少幅を上回る増加に転じた。非労働力人口は▲159.5万人(前月:+657.0万人)と前月の大幅な増加から減少に転じた。

これらの結果、労働参加率は60.8%と、1950年の統計開始以来最大の落ち込み幅となった前月から4ヵ月ぶりに上昇に転じた(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は5月が80.7%(前月:79.9%)とこちらも前月から+0.8%ポイント上昇した。男女の内訳は、男性が87.2%(前月:86.4%)と前月から+0.8%ポイント上昇したほか、女性も74.3%(前月:73.6%)と+0.7%ポイント上昇した。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
一方、5月の失業率は13.3%となったが、BLSは過去2ヵ月と同様に過小評価されている可能性を示唆した。BLSは「その他」を理由に欠勤した回答のうち、4.9百万人は本来失業者として認識しなければならない人が就業者として認識されているとの推計を示し、本来の失業率が発表された結果より3.1%ポイント高い16.4%であった可能性を示唆した。
 
5月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は116.4万人(前月:93.9万人)と前月から+22.5万人増加した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも5.6%(前月:4.1%)と前月から+1.5%ポイント増加した(図表7)。さらに、平均失業期間は9.9週(前月:6.1週)と前月から+3.8週長期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(239.4万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(1,063.3万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、5月が21.2%(前月:22.8%)と前月から▲1.6%ポイント低下したものの、2ヵ月連続で20%超と高止まりした(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+7.9%ポイント(前月:+8.1%ポイント)と、前月から▲0.2%ポイント縮小した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2020年06月08日「経済・金融フラッシュ」)

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