2020年06月01日

米個人所得・消費支出(20年4月)-新型コロナの影響で個人所得は前月比+10.5%の大幅増加、消費支出は同▲13.6%の大幅減少

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想を下回る

5月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は4月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+10.5%(前月改定値:▲2.2%)と▲2.0%から下方修正された前月から大幅な増加に転じ、減少を予想していた市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の▲5.9%を大幅に上回った(図表1)。個人消費支出は前月比▲13.6%(前月改定値:▲6.9%)と、▲7.5%から上方修正された前月からマイナスは幅が拡大、市場予想(▲12.8%)も下回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲13.2%(前月改定値:▲6.7%)と、▲7.3%から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想(▲12.9%)も下回った(図表5)。貯蓄率1は33.0%(前月:12.7%)と、前月から+20.3%ポイントの急上昇となった。

価格指数は、総合指数が前月比▲0.5%(前月改定値:▲0.2%)と▲0.3%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(▲0.6%)は上回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は▲0.4%(前月改定値:横ばい)と▲0.1%から上方修正された前月、市場予想(▲0.3%)を下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+0.5%(前月:+1.3%)と前月を下回った一方、市場予想(+0.5%)に一致した。コア指数は+1.0%(前月:+1.7%)と前月、市場予想(+1.1%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:新型コロナの影響で所得、消費は前月比で59年以来の変動

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 4月は外出制限などの新型コロナの感染対策に伴い消費が大幅に減少した一方、経済対策として実施された現金給付が実行されたことから、所得が大幅に増加した。前月比でみた変化率は所得、消費ともに統計が開始された1959年以来で最大となった(図表1)。また、貯蓄率も59年以来で最高となった。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともに前月から大幅に低下した。総合指数は15年12月(同+0.4%)、コア指数は11年1月(同+1.0%)以来の水準となった。とくに物価の基調を示すコア指数が、FRBの物価目標(2%)を大幅に下回り、物価目標に回復する時期が見通せないことから、FRBによる金融緩和政策は長期化が不可避とみられる。

3.所得動向:連邦政府による現金給付が所得を大幅に押上げ

個人所得は前月から2桁の増加となったが、内訳をみると政府による社会保障関連の補助金などの移転所得が前月の704億ドルから4月は2兆9,991億ドルに42.6倍に増加し、前月比+218.2%(前月:+10.1%)となったことが大きい(図表2)。一方、賃金・給与は前月比▲15.1%(前月:+0.2%)、自営業者所得も▲21.5%(前月:+1.5%)と前月から大幅なマイナスに転じたほか、利息・配当収入も▲3.0%(前月:▲1.6%)と前月からマイナスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、4月が+12.9%(前月:▲2.1%)と前月から大幅な増加に転じた(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースも+13.4%(前月:▲1.8%)とこちらも大幅な増加に転じた。いずれも前月比としては59年の統計開始以来最大となった。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費、サービス消費ともに前月比で2桁の落ち込み

4月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲16.5%(前月:▲1.6%)と前月からマイナス幅が拡大したほか、サービス消費が▲12.2%(前月:▲9.3%)も、前月からマイナス幅が拡大し2桁の落ち込みとなった(図表4)。

財消費では、耐久財が▲17.3%(前月:▲12.1%)とマイナス幅が拡大したほか、非耐久財も▲16.2%(前月:+3.9%)となり、前月から2桁のマイナスに転じた。

耐久財では、家具・家電が▲18.0%(前月:▲7.1%)、自動車・自動車部品が▲15.7%(前月:▲20.2%)、娯楽財・スポーツカーが▲13.1%(前月:▲4.0%)、と前月に続き大幅な落ち込みとなった。

非耐久財では、ガソリン・エネルギーが▲39.9%(前月:▲19.6%)、衣料・靴が▲32.3%(前月:▲29.5%)と前月に続き2桁の落ち込みとなった。また、前月に大幅な増加となっていた食料・飲料も▲15.2%(前月:+22.6%)と前月の反動もあって大幅なマイナスに転じた。

サービス消費は、前月に続き娯楽が▲42.9%(前月:▲29.7%)、外食・宿泊が▲34.6%(前月:▲27.4%)、輸送サービスが▲32.9%(前月:▲26.3%)、医療サービスが▲28.7%(前月:▲16.3%)と軒並み2桁の大幅な落ち込みとなったほか、前月からマイナス幅がさらに拡大した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前年同月比で物価押し下げ幅が拡大

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲9.2%(前月:▲6.0%)と4ヵ月連続で物価押し下げとなったほか、押し下げ幅が拡大した(図表6)。一方、食料品価格指数は+2.4%(前月:+0.6%)とこちらはエネルギー価格とは対照的に4ヵ月連続で物価を押し上げたほか、前月から押し上げ幅が拡大した。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲17.6%(前月:▲6.6%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほか、15年10月(同▲18.6%)以来のマイナス幅となった(図表7)。一方、食料品価格指数は+3.9%(前月:+1.1%)とこちらは17年7月以来34ヵ月連続のプラスとなったほか、12年2月(同+4.1%)以来のプラス幅となった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2020年06月01日「経済・金融フラッシュ」)

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