2020年05月27日

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(3) 市場拡大が続くサードプレイスオフィス
堅調なオフィス需要を支えている要因の1つに、「レンタルオフィス」や「シェアオフィス」、「コワーキングスペース」等のサードプレイスオフィスの増加が挙げられる。企業は、「働き方改革」の一環として従業員の働きやすさを担保しワークライフバランスの向上を図るため、働く場所に関して多様な選択肢の提供が求められている。デロイトトーマツ「働き方改革の実態調査」によれば、「働き方改革の施策内容」として、「在宅勤務やシェアードオフィス等のオフィス外勤務の促進」を挙げる企業も多い(図表-11)。

また、サードプレイスオフィスは、働き方改革への対応等を目的とした大企業の利用のほか、スタートアップ企業やフリーランスによる利用をターゲットとしている。国内ベンチャーへの投資はこれまで増加傾向で推移していた。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターによれば、2019年の国内ベンチャー投資額は2164億円(前年比+59%)となり、調査開始(2013年)以来の最高額に達した(図表-12)。しかし、フォースタートアップスによれば、2020年1月から4月20日までのスタートアップ企業による資金調達額は1,430億円となり、前年比で▲232億円も減少したことのである6
図表-11 働き方改革の施策内容/図表-12 国内ベンチャーへの投資額
また、INTLOOP「フリーランス人材への新型コロナウィルス感染症の影響アンケート」によれば、「現在の仕事量」について「減少した」との回答が85%となり、「収入の状況」についても「減少した」との回答が75%を占めた(図表-13)。

2016年以降、スタートアップ企業やフリーランスによる利用の増加を見込み、大手不動産会社を中心にサードプレイスオフィス事業への進出が相次いてきた。しかし、今後スターアップ企業の成長が止まり、フリーランス市場が厳しい経済環境に直面するなか、サードプレイスオフィスの需要が減少する可能性がある。

既存の企業によるサードプレイスの利用においても、不特定多数の利用者が出入りし、人との交流機会が多いオープンなスペースの活用は当面控えざるを得ないと思われる。一方で、新型コロナウィルスの感染拡大を受けた事業継続活動(BCP)を考えた場合、事業拠点のエリア分散を検討する企業が増える可能性がある。内閣府「平成 29 年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によれば、想定する企業活動のリスクについて、「地震」との回答が最も多く、次いで「火災・爆発」、「新型インフルエンザ等の感染症」との回答が多かった(図表-14)。これまでは感染症拡大への対策は地震などの自然災害と比較して遅れていたことが窺える。

今後、事業拠点のエリア分散に取り組む企業が増えた場合、郊外部に所在するサードプレイスオフィスの利用が増加すると思われる。これまでサードプレイスオフィスの開設は都心部を中心に進んできたが、今後は郊外部でのオフィス開設が増加する可能性がある。
図表-13 新型コロナウィルス感染症の影響/図表-14 今想定している企業活動のリスク

4. オフィス市場の見通し

4-1. 経済見通し
2020 年1-3 月期の実質GDP は、新型コロナウィルスの感染拡大を受けた政府の自粛要請の影響で、民間消費、住宅投資、設備投資などが減少し2 四半期連続のマイナス成長となった。ニッセイ基礎研究所では、2020 年4-6 月期の実質GDP は、政府の緊急事態宣言を受けて前期比▲6.7%と、リーマン・ショック後の2009 年1-3 月期(同▲4.8%)を超えるマイナス成長を予想する(図表-15)。その後も企業の倒産や失業者の急増などによりV字回復のための経済基盤が損なわれることで、経済活動が元の水準に戻るまでに一定以上の時間を要する見込みである。実質GDP 成長率は2020 年度が▲5.5%、2021 年度が3.6%を予想する。
図表-15 実質GDP 成長率見通し
4-2. 東京Aクラスビル市場の見通し
2020年は、港区虎ノ門の「神谷町トラストタワー」や千代田区丸の内の「Otemachi One」、港区芝浦の「田町ステーションタワーN」等、大規模ビルが多数竣工し、約20万坪の大量供給が見込まれている。しかし、テナントリーシングはこれまで順調に進捗しており、新規物件のテナント内定率(3月時点)は約9割に達するとのことである(CBRE調査)。一方で、今後については経済環境の急激な悪化に伴いオフィス需要が弱含むことで、一定程度の2次空室の発生が見込まれる。

東京都心部Aクラスビルの空室率は、3月末時点の0.6%から2020年末には2%程度まで上昇すると見込む。その後は、2021年と2022年の新規供給が限定的なこともあり、空室率は2%近辺で推移し、2023年の大量供給を受けて空室率は再び上昇する見通しである。ただし、過去10年平均の5%を下回る4%程度の水準に留まると予想する(図表-16・左図)。

東京都心部Aクラスビルの成約賃料は空室率の上昇に伴い、2020年12末に3.7万円台/月坪へ下落する見通しである。その後は賃料の下落スピードは緩やかとなり、2024年に3.6万円台/月坪となる見込みである(図表-16・右図)。2019年末の賃料水準と比較して▲14%下落するものの、2017年の賃料水準(34,599円)と同水準に留まる見通しである。
図表-16 東京都心部A クラスビルの空室率および成約賃料見通し
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて、これまで堅調に増加してきたオフィスワーカー数は減少に向かうだろう。また、設備投資の縮小を受けて、オフィス環境を改善する動きがひとまず鈍化するとともに、「在宅勤務」を取り入れた新たなワークスタイルが定着していく可能性がある。サードプレイスオフィスの需要にも変化が生じると思われる。

以上を鑑みると、東京都心部のオフィス需要は当面弱含むと考えられる。今回の予測では2月時点の予測から、空室率(2024年時点)を3.4%から4.3%へ、成約賃料(2024年時点)を3.8万円/月坪から3.6万円/月坪へと下方修正した。

約2ヵ月に及んだ緊急事態宣言が5月25日に全面解除された。解除後は、「3密」リスクの高い場所への外出を極力避けることが求められるなか、国内では経済活動の制限が段階的に解除される。オフィス市場の先行きは、今後の景気回復状況や各国の金融・財政対応等によるところが大きい。引き続き厳しい状況が続くが、国・自治体、各国間が緊密に連帯し危機克服に向けて一丸となって対策に取り組むことを願いたい。
 
 

(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2020年05月27日「不動産投資レポート」)

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【「東京都心部Aクラスビル市場」の現況と見通し~新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえて見通しを改定】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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