2020年05月25日

新型コロナウィルスと各国経済-双子の赤字と財政ファイナンス

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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■要旨
 
  • 新型コロナウィルスが猛威をふるうなか、各国では封じ込め政策における行動制限とともに、各種の財政政策や金融政策を実施してきた。
     
  • 本稿ではこれら各国中央銀行の金融政策、財政収支の状況を調査する。
     
  • 調査結果を要約すると以下の通りである。
 

【金融政策】
・先進国・新興国を問わず、金融政策は「(1)伝統的手段である流動性供給において金融仲介機能を維持させる工夫」や「(2)非伝統的手段の積極的な採用」がなされている。
-(1)は民間企業貸出を優遇するインセンティブ付の流動性供給が代表例である。
-(2)は量的緩和(国債等購入)および、質的緩和・信用緩和(社債等購入)が代表例である。

・これらは危機時の「金融システムの機能不全」を防止する手段として実施されている。
-金融システム機能不全防止のため、中央銀行は積極的に民間の信用リスクを引き受けている。
-中央銀行は、量的緩和で国の信用リスクを引き受けている、という面がある。

【各国の信用リスク(ソブリンリスク)】
・新興国を中心に信用リスクプレミアムが上昇している。

【双子の赤字】
・双子の赤字を抱える国は信用リスクプレミアムが大きい国の代表例である。

【長期戦に向けて】
・経済・政治基盤の弱い新興国や経常赤字国では、自国の財政出動と金融政策だけで危機を乗り切ることが難しい状況になることが考えられる。

・経済・政治基盤の強い国がリーダーシップを発揮し、これらの国を支援することが重要だろう。


■目次

1――概要
2――各国の金融政策張
3――各国の信用リスク
4――信用リスクが大きい国と双子の赤字
5――コロナショックは「一時的」か
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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