2020年05月15日

企業物価指数(2020年4月)―当面はマイナス圏での推移が続く公算大

藤原 光汰

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1.国内企業物価は下落幅が拡大

5月15日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年4月の国内企業物価指数は前年比▲2.3%(3月:同▲0.4%)と、2ヵ月連続の前年比マイナスとなり、前月から下落幅を大きく拡大させた。事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲1.5%、当社予想は同▲1.6%)を上回る下落幅となった。消費税を除いた4月の国内企業物価指数は、前年比▲3.7%(3月:同▲2.0%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。

原油価格の下落を受けて、石油・石炭製品(消費税を含むベース)が前年比▲29.9%(3月:同▲10.2%)と急落し、前年比寄与度が▲2.00%pt(3月:▲0.67%pt)と大きく国内企業物価を下押ししたほか、既往の原油安が遅れて反映される電力・都市ガス・水道が同▲4.2%(3月:同▲5.1%)と大幅なマイナスが継続していることが下落要因となった。

国内企業物価指数は前月比では▲1.5%(3月:同▲0.9%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。前月比で内訳をみると、ガソリン(3月:前月比▲8.5%→4月:同▲13.2%)、灯油(3月:同▲13.7%→4月:同▲23.3%)、軽油(3月:同▲14.7%→4月:同▲23.8%)、C重油(3月:同▲3.6%→4月:同▲47.1%)などが下落幅を拡大させたことにより、石油・石炭製品が前月比▲19.6%(3月:同▲9.1%)の大幅下落となった。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う銅価格の下落を受けて、非鉄金属が前月比▲1.6%(3月:同▲4.3%)と3ヵ月連続のマイナスとなったほか、薬価改定の影響により化学製品が前月比▲3.4%(3月:同▲1.1%)のマイナスとなった。一方、巣籠もり需要の拡大を受けて豚肉や鶏卵が上昇するなど、農林水産物は前月比0.9%(3月:同▲0.4%)とプラスに寄与した。
国内企業物価指数(前年比・前月比)の推移/国内企業物価指数の前年比寄与度分解

2.原油価格の下落が輸入物価を大きく下押し

20年4月の輸入物価指数1は、契約通貨ベースでは前月比▲6.0%(3月:同▲3.2%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。一方、4月のドル円相場は前月比0.5%と若干の円安水準となったことから、円ベースでは前月比▲5.6%(3月:同4.7%)と下落幅は契約通貨ベースを下回った。
輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、原油が前月比▲34.4%と3月の同▲15.5%から下落幅を大幅に拡大させたことや、世界的な輸送用燃料需要の後退によるジェット燃料油・灯油の下落幅拡大(3月:前月比▲16.5%→3月:同▲34.0%)により、石油・石炭・天然ガスは前月比▲20.8%(3月:同▲9.0%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。前月比寄与度は▲5.62%ptとなり、石油・石炭・天然ガスの急落が輸入物価指数を大きく下押しした。また、世界的な需要の落ち込みにより、非鉄金属が前月比▲3.3%(3月:同▲6.6%)と2ヵ月連続で下落したことなどを受けて、金属・同製品が同▲2.9%(3月:同▲4.1%)と3ヵ月連続のマイナスとなる一方、電気・電子機器は同1.1%(3月:同0.2%)とプラスを維持した。

このところ欧米諸国の一部地域において経済活動の再開に向けた動きが広がっているほか、日本でも今月14日に39県の緊急事態宣言が解除されたものの、需要の回復には時間がかかると見込まれる。原油価格も低迷が続いており、輸入物価指数は今後も弱い動きが続く公算が大きい。
 
1 輸入物価指数は、消費税を除くベースで作成されている

3.国際商品市況の悪化が価格面に波及

20年4月の需要段階別指数(国内品+輸入品)2をみると、素原材料が前年比▲20.4%(3月:同▲11.0%)、中間財が前年比▲5.1%(3月:同▲2.9%)、最終財が前年比▲3.2%(3月:同▲1.8%)となり、すべての需要段階で下落幅が拡大した。特に素原材料の下落幅が大きく、国際市況の悪化を反映して中間財、最終財の価格にも今後波及するだろう。
需要段階別指数の推移 また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲4.1%(3月:同▲2.2%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。

原油価格の下落による下押し圧力や、消費増税後の国内需要の弱さを反映し、国内企業物価は今後も弱い動きが続く可能性が高い。国内企業物価は当面の間、前年比でマイナス圏での推移が続くだろう。
 
2 需要段階別指数は、消費税を除くベースで作成されている
 
 

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(2020年05月15日「経済・金融フラッシュ」)

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