2020年04月30日

鉱工業生産20年3月-1-3月期はかろうじて増産も、4-6月期の大幅減産は不可避

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.1-3月期は前期比0.4%と3四半期ぶりの増産

経済産業省が4月30日に公表した鉱工業指数によると、20年3月の鉱工業生産指数は前月比▲3.7%(2月:同▲0.3%)と2ヵ月連続で低下したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲5.1%、当社予想は同▲8.6%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比▲5.0%と4ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比1.9%と2ヵ月ぶりの上昇となった。

3月の生産を業種別に見ると、輸出の落ち込みやサプライチェーン障害の影響などから自動車が前月比▲5.1%と大きく落ち込んだほか、生産用機械(前月比▲10.2%)、無機・有機化学(同▲11.0%)が前月比で二桁の大幅減産となるなど、ほとんどの業種が前月比でマイナスとなった。

20年1-3月期の生産は前期比0.4%と3四半期ぶりの上昇となったが、19年10-12月期が消費税率引き上げの影響で前期比▲3.6%の大幅減産となっていたことからすれば、戻りは非常に弱い。

業種別には、グローバルなITサイクルの底入れを受けて、電子部品・デバイスが前期比5.9%と5四半期ぶりの増産、自然災害からの挽回生産で輸送機械が同1.2%と3四半期ぶりの増産となったが、半導体製造装置の輸出が大きく落ち込んだことなどから、情報通信機械が前期比▲7.2%の大幅減産となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は19年10-12月期の前期比▲7.0%の後、20年1-3月期は同▲0.5%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は19年10-12月期の前期比▲3.4%の後、20年1-3月期は同▲1.9%となった。GDP統計の設備投資は19年10-12月期の前期比▲4.6%の後、20年1-3月期も減少する可能性が高い。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は19年10-12月期の前期比▲4.5%の後、20年1-3月期は同▲0.2%となった。非耐久消費財が前期比0.8%(10-12月期:同▲2.5%)と2四半期ぶりに上昇したが、耐久消費財が前期比▲0.9%(10-12月期:同▲7.2%)と3四半期連続で低下した。

1-3月期の消費関連指標を確認すると、消費財出荷指数、小売業販売額などの財消費はそれほど弱くなかったが、各種イベント、会合の中止、外出自粛の影響で、旅行、外食などのサービス消費が急速に落ち込んだため、消費全体としては弱い動きとなった。

GDP統計の民間消費は、19年10-12月期の前期比▲2.8%の後、20年1-3月期も減少する可能性が高い。

2.4-6月期の大幅減産は不可避

製造工業生産予測指数は、20年4月が前月比1.4%、5月が同▲1.4%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ▲2.2%、▲7.1%であった。4月の予測修正率のマイナス幅は現行指数(2013年~)では最大となった。
最近の実現率、予測修正率の推移 20年3月の生産指数を4、5月の予測指数で先延ばしすると、20年4、5月の水準は1-3月期を▲1.9%下回る。今回の予測指数は、4/7の緊急事態宣言発令後の4/10時点で調査されているが、その後自動車工場などの操業停止が相次いでおり、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。

1-3月期の鉱工業生産は小幅ながら前期比プラスを確保した。新型コロナウィルスの感染拡大による悪影響は、まず旅行、外食などのサービスを中心に表れているため、鉱工業生産への影響は今のところ限定的にとどまっている。しかし、4月以降は世界各国の工場停止に伴うサプライチェーン寸断の影響で大きく落ち込むことは避けられず、4-6月期の生産は前期比で二桁のマイナスとなることが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2020年04月30日「経済・金融フラッシュ」)

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