2020年05月13日

新型コロナで増えた消費、減った消費-巣ごもり・デジタルは増加、外出型消費は大幅減、シェアも明暗

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 新型コロナの感染拡大による外出自粛等の影響によって、家計消費は全体では減少しているが、食料品やトイレットペーパーなどの「買いだめ的な行動」のほか、「巣ごもり需要」や「デジタル需要」、「非接触志向」の高まりによって需要が増した領域もある。
     
  • 巣ごもり需要については、出前や家飲み、理美容用家電、家の中で楽しめるゲームや書籍などの支出額が増えている。また、休校が続く中で、学習塾などの補習教育や参考書の需要も高まっている。学習塾では新たにオンライン対応を始めたところも多く、本来は外出型の消費行動でも、屋内型のサービス提供へと切り替えられれば、むしろ需要を上手く取り込めている領域もある。
     
  • デジタル需要については、ネット通販や映画・電子書籍等のデジタルコンテンツ需要の高まりがあげられる。デジタルコンテンツ配信サービスの多くはサブスクリプションモデルであり、時間を持て余す巣ごもり生活と相性が良い。
     
  • シェアリングサービスでは出前などの移動手段のシェアといった一部を除き、非接触志向の高まりから、多くの領域が打撃を受けているだろう。そもそもシェアリングサービスは、カーシェアや民泊、外出用の服やバッグのシェアなど、外出型の消費行動に伴うサービスも多いため、外出自粛によって需要が一旦止まってしまっている。
     
  • 新型コロナとの戦いは長期戦になるという見方もある。しばらくは、外食などの身近な外出型の消費行動で外出自粛のストレスを少しずつ解消しつつ、巣ごもり型を軸とする消費行動が続くだろう。また、雇用環境が急速に悪化しているため、収入が減少することで、必需性の低い消費には充てにくくなるという要因もある。
     
  • 一方で、デジタル消費は、新型コロナの影響がなくとも、近年、進んでいた流れであり、今後も需要が拡大するだろう。また、今回の事態では働き方が大きく変わった。働き方が変われば、暮らし方も消費行動も変わる。ウィズコロナ・アフターコロナの消費行動は、単に中か外かだけではなく、複数の要因が絡み合う。

■目次

1――はじめに~4月の消費者心理は急速に悪化、リーマンショック後の水準を大きく下回る
2――新型コロナによる消費の明暗~巣ごもり・デジタル消費が増加、外出型消費は大幅減少
  1|巣ごもり需要の高まり~出前や家飲み、美容家電、ゲームや本等の室内型娯楽、
    休校でオンライン教育
  2|デジタル需要の高まり~ネット通販、サブスク系デジタルサービス
  3|シェアリングサービスは明暗~出前などの配達系は需要増、モノやスペースなどの
    シェアは一旦ストップ
3――今後の消費行動
 ~しばらくは巣ごもり型を軸に身近な外出型消費から、働き方変化などの要因も
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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レポート紹介

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