2020年03月25日

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■要旨
  • 先月27日、全国一斉休校という政府要請が表明され、子育て家庭では大きな混乱が生じたが、その背景には(1)あまりに突然であったこと、(2)日中保護者が不在の家庭が多かったこと、(3)休校による休業で収入が減少する家庭が多かったこと、という3つの理由があげられる。
     
  • (1)については、3月2日(月)からの休校に対して政府要請が出たのは2月27日(木)夕方であり、地方自治体や学校は翌28日(金)に判断して準備を整えることとなった。保護者への連絡は早くても28日の午後であり、夕方になっても連絡がない場合、勤務先への休暇申請も出せずに戸惑いの声もあったようだ。
     
  • (2)については、現在では子育て家庭の6割が共働き、およそ1割が母子世帯であり、合計7割は日中保護者がいない家庭である。今回の休校によって多くの保護者は働き方を変える必要が生じた。また、厚生労働省は小学生の学童保育や保育所等の開所を求めたが、学童保育も待機児童問題がある。今回の大混乱の背景には、居場所のない低学年児童が少なくなかったこともあるだろう。
     
  • (3)については、共働き世帯の妻の過半数はパートタイムで働く妻であり、休校による休業が収入減少に直結する。また、子育て家庭の世帯主の1割は、より休業で収入減少しやすいフリーランスだ。さらに、母子世帯の母の平均年間収入は243万円(うち就労収入は200万円)であり、大半が非正規雇用者という厳しい経済状況にある。
     
  • 政府は休校に伴う保護者の休業支援に約1800億円の予算を確保している。これは支援が必要な可能性のある子育て家庭の5分の1の規模感だ。全ての世帯に支援が必要であるわけではないが、休校の長期化や再度の要請が出る可能性もある。また、休業が解雇につながりやすい非正規雇用者は休業給付が自分の元に入るのかという不安もあるだろう。政府は、困っている家庭の支援に確実につながるような仕組みを整えるとともに、状況を見ながら更なる予算枠確保に対応する必要があるだろう。


■目次

1――はじめに~政府要請で95%超の学校で休校実施、子育て家庭は大混乱
2――「(1)あまりに突然であったこと」~保護者に連絡が来たのは早くても金曜午後
3――「(2)日中保護者が不在の家庭が多かったこと」
 ~子育て家庭は約7割が共働きとシングルマザー
4――「(3)休校による休業で収入が減少する家庭が多かったこと」
 ~共働き世帯の妻の過半数はパート、シングルマザーの平均年収は243万円
5――おわりに~休校による休業支援、長期化すれば更なる予算確保の必要性も
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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【新型コロナ、休校で子育て家庭大混乱の3つの背景】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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