2020年04月20日

若者の現在と10年後の未来~働き方編-「働き方改革」の理想と現実のギャップ、アフターコロナに期待

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
  • 若者(20~34歳の未婚者)の働き方についての価値観は、『キャリア重視』志向が高く、『勤務先忠誠』志向が低い。背景には、大企業神話の崩壊やグローバル化によるビジネス環境におけるリスクの常態化、高齢化による就労期の長期化等によって、自分の能力を磨くことでキャリアを切りひらくという意識の高まりがあるのだろう。
     
  • 性別には、女性や年下上司でも構わないという『業績重視』志向や、仕事はお金を稼ぐ手段・できれば働きたくないという『割り切り』志向は女性で高く、男性で低い。男性では依然として価値観を根強い一方、女性では職場での男女平等を求める層と結婚・出産後は家庭を重視したい考える層が混在しているようだ。
     
  • 現在の職場環境については「働き方改革」における制度や仕組みの整備などが進む一方、「制度を利用しにくい」「長時間働ける人が評価されやすい」など実態とのギャップが見られ、若者ではその認識がやや強い。
     
  • 現在と10年後の未来に想像する職場環境を比較すると、若者はテレワークや男性の育休取得のしやすさなどの就労環境の整備の面は進むが、年功序列より業績評価といった性年齢による不公平感の是正は進むとは考えていない。若者では50歳代などより、「女性の活躍」や「業績評価」が進んだ環境にあるため判断基準が高いことに加えて、現在の「働き方改革」の実態とのギャップをやや大きく感じているためだろう。
     
  • その他の未来の働き方を見ると、夫婦世帯間の経済格差は広がる一方、共働きや副業・兼業、高齢期の就労など、働き方の多様化という現在の流れが強まる様子が見えた。なお、全体的に年齢が高いほど、男性より女性で変化が進むと考えている。年代による判断基準の違いに加えて、女性では依然として男性中心の現在の就労環境に対する変革を求めているかもしれない。
     
  • 現在の緊急事態下では、特にテレワークなどの「就労環境の整備」の面で「働き方改革」の舵が大きく切らざるを得ない状況が広がる。アフターコロナは、まず、自社にとって最適なデジタルと非デジタルのバランスを探ることから始まる。制度に加えて就労環境も変わることで、慣習や評価制度も変わる可能性がある。

■目次

1――はじめに~「働き方改革」、新型コロナの影響で業種の垣根を超えて加速度的に波及
2――働き方についての価値観
 ~若者は自分の「キャリア重視」志向が高く、「勤務先忠誠」志向が弱い
3――現在の職場環境~若者は「働き方改革」の理想と現実のギャップをやや強く感じている
  1|20~50歳代全体の状況
    ~「働き方改革」で制度の整備は進むものの、実態は追いついていない面も
  2|若者の状況~30代前半の女性は「女性活躍」、男性は「長時間労働の是正」で
    理想と現実のギャップ
4――未来の職場環境
 ~若者は就労環境整備や柔軟な働き方は進むと考えるが、評価制度は懐疑的?
  1|現在と未来の比較~若者はテレワークや両立環境の整備は進むと考えるが、
    性年齢による不公平感の是正には懐疑的?
  2|その他の未来~高年齢ほど、男性より女性で変化が進むと考える、革新を求めている?
5――おわりに
 ~アフターコロナはデジタルと非デジタルのバランスの最適化、慣習や評価制度にも影響
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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