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一律10万円給付の家計へのインパクト-新型コロナ緊急経済対策の効果は?

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- 政府は緊急経済対策として国民一人あたり一律10万円を給付する予定だ。この10万円という金額は、総務省「家計調査」によると、二人以上世帯の一人分の約1カ月分の消費額に相当するが、物価の高い大都市や関東地方では数千円程度不足する。
- 二人以上世帯では、世帯年収800万円までの世帯は一人分の1カ月分の消費額は10万円を下回るが、娯楽費や交際費等の選択的消費の多い世帯年収800万円以上の世帯では、10万円を超える。なお、高年収世帯でも、食費や住居費等の必需的消費分は一人あたり10万円以内におさまる。
- 一方、必需的消費や固定費を家族と折半することができない単身世帯では、家計の合理化が図りにくく、支出がかさむ傾向があるため、10万円という金額は一カ月分の消費額の約6割にとどまり、緊急経済対策の恩恵が薄れる傾向がある。
- 子育て世帯や共働き世帯、高齢者世帯といった世帯属性別に状況を見ると、家族の人数が少ない世帯では単身世帯と同様に家計の合理化が図りにくいために恩恵が薄れる傾向がある。また、共働きで妻がフルタイムで働く世帯では収入が多く選択的消費が多いために、一人あたりの月平均消費額は10万円を超える。
- 以上より、家計の合理化が図りにくい家族の人数が少ない世帯や物価の高い都市部に住む世帯などでは一律10万円給付の恩恵が薄れる傾向がある。また、減収や解雇などの経済的打撃を受けた世帯には追加的な支援策が必要だ。その際、貧困問題が指摘されている母子世帯など、特に生活困窮世帯の多い属性を配慮する必要もある。
■目次
1――はじめに~緊急経済対策として一人あたり一律10万円給付、5月中に開始か
2――二人以上世帯へのインパクト
~一人分の約1カ月分の消費額、高年収世帯でも必需的消費分に
1|都市階級別・地方別の状況
~一人あたり約1カ月分の消費額、物価の高い都市部ではやや下回る
2|世帯年収別の状況~年収800万円までは一人分の約1カ月分の消費額を上回る、
高年収世帯でも必需的消費分を補填
3――単身世帯へのインパクト
~家計の合理化が図りにくいため1カ月分の消費額の約6割にとどまる
4――属性別に見たインパクト~家族の人数が少ない世帯や消費額の多い共働き
・妻フルタイム世帯では一人分の1カ月分の消費額を下回る
5――おわりに~減収・解雇などの生活困窮世帯には追加的な支援策を
(2020年04月27日「基礎研レター」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/12 | 増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/06 | 家計消費の動向(単身世帯の比較:~2025年3月)-節約余地が小さく、二人以上世帯と比べて弱い消費抑制傾向 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/06 | 家計消費の動向-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
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