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2020年03月26日
1――キャッシュレス決済比率は27%に
キャッシュレス決済比率は決済額で測られる指標である。キャッシュレス決済比率は指数関数的に増加しており、この2年間は3%(年間)の増加幅となっている。このペースでキャッシュレス決済比率が上昇していくことができれば、2025年に40%のKPIの達成がみえてくる。
このキャッシュレス決済比率の指数関数的な伸び2を牽引しているのがクレジットカードである。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、販売信用3におけるカード決済額は中長期で指数関数的に増加してきたことが分かる(図表2)。特にポイント還元策が導入された2019年後半のカード決済額は、それまでの指数関数的な増加率(点線)よりも高い位置にある。つまり、ポイント還元額の導入は、それ以前と比較して、消費者行動に対してさらにクレジットカードでの決済額を増やす方向に構造変化を生じさせたものと解釈できるだろう。
このキャッシュレス決済比率の指数関数的な伸び2を牽引しているのがクレジットカードである。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、販売信用3におけるカード決済額は中長期で指数関数的に増加してきたことが分かる(図表2)。特にポイント還元策が導入された2019年後半のカード決済額は、それまでの指数関数的な増加率(点線)よりも高い位置にある。つまり、ポイント還元額の導入は、それ以前と比較して、消費者行動に対してさらにクレジットカードでの決済額を増やす方向に構造変化を生じさせたものと解釈できるだろう。
次に電子マネーの利用状況について確認する。2019年の民間最終消費支出に対する決済額の割合でみると1.9%となっている。電子マネーはチャージの上限額が数万円程度のサービスが中心になっており、少額決済での利用が中心になっている。電子マネーによる決済額は直線的に増加してきたものと見られる。日本銀行の決済動向によると、電子マネーには12月に一時的に決済額が増える傾向があることを考慮に入れると、ポイント還元策の導入前後でこれまでの直線的な決済額の増加率のペース(点線)から大きく上振れたわけではない(図表3)。
最後に、デビットカードは徐々に利用額は伸びているものの、民間最終消費支出に対する割合でみると、0.5%程度の利用にとどまっている。
最後に、デビットカードは徐々に利用額は伸びているものの、民間最終消費支出に対する割合でみると、0.5%程度の利用にとどまっている。
1 クレジットカード、デビットカード、電子マネーによる決済額を民間最終消費支出で除したものである。
2 「指数関数的な伸び」は、増加幅が徐々に拡大する特徴を持つ。
3 販売信用はクレジットカードによる商品やサービスの購入を指しており、消費者金融(クレジットカードキャッシングや消費者ローン)は含まれない。
2――消費者はどこでキャッシュレス決済を増やしたのか
1|ポイント還元策導入前後にみられる小売業における消費者行動の構造変化
2018年と2019年のクレジットカード決済額を比較すると、前年比で平均10.7%増加している。図表4から、主にポイント還元策の導入前後でカード決済額の上昇に寄与したのは、「百貨店・総合スーパー」「その他の小売業」と「その他4」であることが分かる。この3業種については、ポイント還元策が導入される直前の2019年9月のクレジットカード決済額の増加率が最も高い。これは、消費増税前の駆け込み需要においてクレジットカードが利用されたことを示していると考えられる。ポイント還元策が導入された直後の2019年10月以降は、駆け込み需要の影響もあって、クレジットカード決済額の増加率の低下がみられるものの、時間が経過するにつれて増加率は徐々に高まっている。
寄与度の大きい小売業における消費者行動について、別のデータを用いて確認しておきたい。図表5は商業動態統計における業種別の販売額に関する増減率(前年同月比)を示したものである。2019年9月のカード決済額の上昇をもたらした候補として、「各種商品」「自動車」「機械器具」「医薬品・化粧品」等での消費が候補として挙げられる。つまり、主にこれらの耐久財(テレビやパソコンなど)・半耐久財(衣服など)に対する購入に対してクレジットカードで決済が行われたことがキャッシュレス決済比率の上昇に寄与したと解釈できる。特に、これらの商品・サービスは非耐久財(食料など)と比較して単価の高いものが多いため、1単位あたりの購入がもたらすカード決済額の伸びへの寄与が大きくなる。
2018年と2019年のクレジットカード決済額を比較すると、前年比で平均10.7%増加している。図表4から、主にポイント還元策の導入前後でカード決済額の上昇に寄与したのは、「百貨店・総合スーパー」「その他の小売業」と「その他4」であることが分かる。この3業種については、ポイント還元策が導入される直前の2019年9月のクレジットカード決済額の増加率が最も高い。これは、消費増税前の駆け込み需要においてクレジットカードが利用されたことを示していると考えられる。ポイント還元策が導入された直後の2019年10月以降は、駆け込み需要の影響もあって、クレジットカード決済額の増加率の低下がみられるものの、時間が経過するにつれて増加率は徐々に高まっている。
寄与度の大きい小売業における消費者行動について、別のデータを用いて確認しておきたい。図表5は商業動態統計における業種別の販売額に関する増減率(前年同月比)を示したものである。2019年9月のカード決済額の上昇をもたらした候補として、「各種商品」「自動車」「機械器具」「医薬品・化粧品」等での消費が候補として挙げられる。つまり、主にこれらの耐久財(テレビやパソコンなど)・半耐久財(衣服など)に対する購入に対してクレジットカードで決済が行われたことがキャッシュレス決済比率の上昇に寄与したと解釈できる。特に、これらの商品・サービスは非耐久財(食料など)と比較して単価の高いものが多いため、1単位あたりの購入がもたらすカード決済額の伸びへの寄与が大きくなる。
ポイント還元策が導入された2019年10月以降、小売業全体における販売額は前年同月比で減少傾向または横ばいの状況が継続している。2019年9月に消費サイクルの長い耐久財・半耐久財の決済額が大きかったことから、ポイント還元策導入後は非耐久財を中心に現金決済からキャッシュレス決済へ移行が進んだものとみられる。図表4で得られた情報を組み合わせると、消費者はポイント還元策導入以降、小売業での消費を抑制しながらポイント還元が享受できるクレジットカードでの決済額を徐々に増やしたことが分かる。よって、小売業では販売額が上昇しない中でキャッシュレス決済の利用が増えており、決済手数料や資金繰りのコストが増えたことで収益性がかえって悪化した事例も無視できない程度に出てきているものと考えられる5。
図表6は、同じく商業動態統計における「百貨店」「スーパー」「コンビニエンスストア」「家電大型専門店」「ドラッグストア」「ホームセンター」の販売額の増減率(前年同月比)を示したものである。小売業全体での販売額が低下している中で、コンビニエンスストアとドラッグストアにおける販売額が増加または横ばいであることが分かる。スーパーもポイント還元策導入後の販売額の落ち込みから回復しつつあるようにみえる。特にコンビニエンスストアやドラッグストアの中にはスマホ決済の決済サービス事業者による還元率の高いキャンペーンが行われていたところがあり、消費者は経済的なメリットを求めてこれらの店舗での消費を増やした可能性が考えられる。
図表6は、同じく商業動態統計における「百貨店」「スーパー」「コンビニエンスストア」「家電大型専門店」「ドラッグストア」「ホームセンター」の販売額の増減率(前年同月比)を示したものである。小売業全体での販売額が低下している中で、コンビニエンスストアとドラッグストアにおける販売額が増加または横ばいであることが分かる。スーパーもポイント還元策導入後の販売額の落ち込みから回復しつつあるようにみえる。特にコンビニエンスストアやドラッグストアの中にはスマホ決済の決済サービス事業者による還元率の高いキャンペーンが行われていたところがあり、消費者は経済的なメリットを求めてこれらの店舗での消費を増やした可能性が考えられる。
4 「その他」には娯楽業、運輸業、不動産業などが含まれ、小売業や飲食店、旅館・病院・診療所に該当しないものを指す。
5 東京商工リサーチによると、2019年12月にキャッシュレス決済の普及に伴う資金繰りの悪化から手元資金が乏しくなったことによる破産事例がある。経済産業省の調査では、資金繰りに困るようになったと回答した店舗が約2割あった。そこで、キャッシュレス決済に対する資金繰り支援として、2020年3月に日本政策金融公庫による低利融資制度も始まっている。
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