2020年03月24日

インフルエンザの流行はほぼ収束~いま高熱が続いたら、新型コロナウイルスか?

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――新型コロナウイルス流行の影でインフルエンザの流行はピークを過ぎた

図表1 シーズン別のインフルエンザ定点あたり報告数 2019~2020年シーズンは、前稿1でも紹介したとおり、インフルエンザが流行しはじめるタイミング2が、2019年第37週(2019年9月9日~15日)と、この10年間でもっとも早かった。その後、第52週をピークとして、2020年第1週以降は減少傾向にあり、第10週(3月9日~15日)には1.29まで下がった。定点あたりの報告数が1.0を流行の目安とされていることから、流行は過ぎつつあると言える。

今シーズンのインフルエンザが低く抑えられた理由として、新型コロナウイルス感染予防としての手洗い・うがいが奏功したという話もあるが、流行が収まりはじめたのが12月から1月上旬の早期の段階であることを踏まえると、暖冬の影響や予防接種の影響3等の影響が考えられるだろう4。もっとも1月後半以降は、日本でも新型コロナウイルスの流行が話題となり、手洗い・うがい、マスク着用、体調悪い時に外出をしない等の対策によってさらに減っている可能性はある。

9月以降の、インフルエンザによる入院患者の定点あたり報告数5累計は、第11週までに12,923人(昨年同時期には19,285人)と重症者も少ない。

都道府県別にみると、定点あたりの報告数が5.0以上は、岩手県(5.64)、2.5以上は、石川県(2.90)、青森県(2.72)、大阪府(2.53)、京都府(2.50)であり、地域によっては、まだ流行が続いている。
 
1 村松容子「今年はインフルエンザの流行が早い可能性」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2019年10月25日)
2 国立感染症研究所では、流行状況を判断するために、全国約5000の医療機関で、1週間に受診した1医療機関当たりの患者数を調査している。1.0が流行の目安となっている。
3 2016/17年シーズン以降でもっともワクチン製造量が多かった。また、国立感染症研究所によると、シーズン前に予想された4つのインフルエンザの型のうち、現在のところ感染者の9割を占めるA/H1pdmのワクチンが効果的だったと分析されている。
4 新型コロナウイルスが全国紙で最初に取り上げられたのは1月9日で、日本で最初に感染が確認されたのが1月16日である。この頃から、例年と比べて手洗い・うがいを徹底していた人は少ないと思われる。
5 インフルエンザ入院サーベイランスでは、全国500定点医療機関からの報告数で動向を把握している。
 

2――新型コロナウイルスの検査は?

2――新型コロナウイルスの検査は?

新型コロナウイルスの検査を受ける目安は、高齢や特定の基礎疾患をもつ等リスクが高い人以外は、4日間37.5℃以上の高熱が続くこととされている。その一方で、インフルエンザの場合は48時間以内に抗インフルエンザ薬(タミフルやリレンザ等)を処方してもらうことで症状が早く改善することから、早めの受診が推奨されている6

インフルエンザが収束しつつあることから、健康な成人が、37.5℃を超えるような高熱が続いた場合は、新型コロナウイルスを疑ってしまう。しかし、ピークが過ぎたとはいえ、インフルエンザの感染者数は、この1週間で4万人もいると推計されている。まだしばらく、インフルエンザとの見極めが難しそうだ。
 
6 3月11日、日本医師会は、十分な検査体制を持たない医療機関においては、医師への新型コロナウイルス感染リスクが高まるため、たとえば、インフルエンザにおいては検査ではなく臨床診断によって治療薬を処方することを検討するよう呼びかけたことから、インフルエンザの検査は行わない場合もある。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2020年03月24日「基礎研レター」)

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