2020年03月23日

新型コロナウイルス感染予防に対する企業の取り組み-被用者に対するアンケート調査より

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――取り組みの最多は「オフィスに消毒液の設置」。何の取り組みもない勤務先も4割

図表1 新型コロナウイルス感染予防に向けた勤務先の取り組み まず、勤務先が実施している2取り組みをみると、調査対象者の55.9%が勤務先でなんらかの取り組みを実施していると回答した。取り組みの内容としては、「オフィスに消毒液の設置」が34.9%で最も高く、次いで「会社イベントの中止・延期(24.0%)」「セミナー、打ち合わせ等の制限(21.0%)」、「時差出勤(18.5%)」が続いた。

なんらかの取り組みを行っている勤務先は、今回提示した取り組み11個中、平均3.10個を実施していた。一方、44.1%が「とくにない」と回答しており、取り組みを実施している企業と、していない企業で差があった。
 
2 実施のための議論をしている場合を含む
 

2――取り組み実施は企業規模で大きな差

2――取り組み実施は企業規模で大きな差

企業規模別にみると、規模が大きくなるほど「なんらかの取り組みあり」が高く、300名未満の企業では半数以上が何の取り組みも行っていなかった。

全体で最も実施率が高かった「オフィスに消毒液の設置」は、いずれの規模の企業でも最も高かった。規模の小さい企業では「マスク配布」が、規模の大きい企業では「会社イベントの中止・延期」が高い傾向があった。公務員では、地方公務員の方が国家公務員よりも取り組んでいる割合が高かった。両者を比較すると、地方公務員で高かったのは「オフィスに消毒液の設置」「会社イベントの中止・延期」であり、国家公務員で高かったのは「時差出勤」「テレワーク」だった。
図表2 企業属性別実施状況
地域別では大きな差はなかったが、東京・神奈川・千葉で「時差出勤」「テレワーク」が他地域より高かった。2/28に緊急事態宣言を行った北海道は、取り組みを実施している勤務先が多く、「飲み会等個人的なイベントの自粛」が23.7%、「出勤停止・自粛」が11.5%と他の地域と比べて高かった。

なお、海外に拠点がある、海外企業との業務上のやりとりが頻繁、勤務先企業には外国人が多い企業、および従業員の健康増進に熱心な企業で、対策が行われている割合が高かった。
 

3――テレワークや時差出勤は、管理職・マネジメント、技術系専門職で導入されている

3――テレワークや時差出勤は、管理職・マネジメント、技術系専門職で導入されている

続いて、回答者の雇用形態や役職でみると、一般社員・職員、契約社員、派遣社員では大きな差はなく、管理職以上で実施している取り組みを多く回答していた。
図表3 被用者属性別実施状況
職種でみると、管理職・マネジメントで取り組み実施率が特に高かった。今回の調査では、実施のための議論をしている場合も含めて回答してもらったため、管理職の方が勤務先の取り組みについて多くの情報を持っている可能性があること、会社イベントの中止や延期は管理職に徹底されている可能性があること、「時差出勤」や「テレワーク」等では管理業務の方が導入しやすい可能性があることが考えられる。「時差出勤」は、管理職・マネジメントの他、事務系専門職や技術系専門職でも高く、「テレワーク」は技術系専門職でも高かった。

人と接することが多いと思われる医療福祉、教育関係の専門職、営業職、販売職、接客サービス職のうち、「マスクの配布」は営業職で高く、医療福祉、教育関係の専門職、販売職、接客サービス職は「時差出勤」「テレワーク」の実施率が低かった。医療福祉、教育関係の専門職は、「マスクの配布」「オフィスに消毒液設置」のいずれかを実施している割合が高かった。

居住地と通勤手段別にみると、大都市や公共交通機関で通勤する被用者の勤務先で取り組み実施は多かった。「時差出勤」や「テレワーク」は大都市に居住しており公共交通機関で通勤する被用者で特に高かった。
 

4――人と接する職種で取り組みが行き届いていない可能性

4――人と接する職種で取り組みが行き届いていない可能性

以上みてきたとおり、感染予防のための取り組みの実施状況は、企業規模だけでなく、職種や従業員の通勤手段でも大きな差がある。

人と接することが多い職種では、そもそも感染リスクが高いうえ、テレワークや時差通勤等の実施で人と接する機会を減らすことが難しく、予防がしづらいと思われる。テレワークや時差通勤等の導入だけでなく、人と接する職種の従業員を守るための対策を別途検討していく必要があるだろう。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2020年03月23日「基礎研レター」)

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