コラム
2020年03月23日

進化する「ドライブスルー」-新型コロナウイルスの検査以外にも活用-

生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   金 明中

韓国 医療保険制度 などの記事に関心のあるあなたへ

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新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、世界各国政府は感染拡大を防ぐために、検査の拡大、入国制限の強化、スポーツ大会やエンターテインメント興行の中止や延期、新学期の延期、外出の禁止、商店とレストランの営業禁止など多様な政策を実施している。
 
対策は国別に少し異なるものの、共通している点は症状を早期発見し重症化を防ぐために、PCR検査を拡大していることではないかと思う。先日、筆者は韓国では検査時間を節約し、待機中の交差感染懸念を和らげられるために「ドライブスルー検査」が実施されていることについて紹介した。「ドライブスルー検査」は、検査を受けたい人が「ドライブスルー」が屋外に設置されている選別診療所を訪ねて、車に乗ったまま検査を受ける検査方法である。受付から問診表の作成、医療スタッフの面談、体温の測定、鼻と口からの検体採取までの全プロセスにかかる時間は10分程度で、すべての検査は車に乗った状態で行われる。現在、韓国では「ドライブスルー検査」を実施している選別診療所が約70カ所あり、検査で採取された検体は全国の実験室(118カ所、専門家は約1,200人)に送られ、感染有無が確認される。検査結果は1~2日後に事前に登録した個人の電話やメールに送られる。
 
筆者は、先日、日本の「検査難民」問題を解決する方法として日本でも「ドライブスルー検査」の導入を検討することを提案した。その提案に対しては賛否両論があったものの、反対の意見が多い印象であった。「ドライブスルー検査」を反対する主な理由としては、「日本は重症患者の治療に重点を置いているので、感染拡大を重視している韓国とは政策の目的が違う」、「検査を拡大し、感染者数が急増すると医療崩壊を招く」、「検査を増やすと公務員などの過労死が増加する」、「日本の都会には車を持っている人が少ないので、対策にならない」、「治療薬がない状態で検査だけ増やすのは意味がない」などが挙げられた。
 
上記の意見は全てが一理あるといえるだろう。但し、世界的には「ドライブスルー検査」に対する需要が広がっているようだ。例えば、ドイツのヘッセン州のマールブルク地域やグロースゲーラウ地域では3月からドライブスルー検査所を設置し、「ドライブスルー検査」を実施している。また、ニューヨーク市も3月14日から「ドライブスルー検査」を導入した。このような現象は日本でも起きている。新潟市保健所は3月1日から検査を受ける人が車に乗ったまま採取する「ドライブスルー形式」を始めた。名古屋市も近いうちにドライブスルー方式での検体採取を実施すると発表した状態である。
 
当初、ドライブスルー検査方式に否定的だった日本政府の考えにも少し変化が起きている。加藤厚生労働大臣は、3月17日に開かれた衆議院厚生労働委員会で、「私の地元でも、疑いのある人が待合室に入られると、患者さんが感染するおそれがあるということで、車に乗ったまま駐車場で待っていただき、車まで、お医者さんが行って、診断してくれるケースもある」と、感染の防止に十分に配慮して対応するのであれば、車に乗ったまま受けられるドライブスルー方式で検査を行っても問題はないという見解を示した。
 
以上のような動きを見ると、今後日本でもドライブスルー検査はより広がるのではないかと思われる。さらに、韓国ではドライブスルーが検査以外にも活用されており、注目を集めている。韓国政府は、新型コロナウイルスによる感染拡大を防ぐために幼稚園や小中高の新学期開始を3月9日から4月6日に延期した。その結果、教科書を受け取っていない新入生が、教科書がないまま自宅で自習をしないとならないという問題が発生した。そこで、慶尚北道浦項市のある中学校では、対面接触による感染拡大の問題を回避するためにドライブスルー方式を利用して新入生に教科書を渡すことにした。新入生の保護者などは、3月18日から20日までの間に、学校が指定した場所に車で来ると、車から降りずに教科書を受けとれる。また、ソウル市城東区の区立図書館では3月10日からドライブスルー方式を利用して貸出サービスを提供している。
 
株式会社サーベイリサーチセンターが全国47都道府県にお住まいの20歳以上の男⼥ 4,700人を対象に2020年3月6日から9日の間に実施したインターネット調査によると、日本国内にウイルスが広がる不安は、中国政府が武漢市を封鎖した1月23日時点の59.6%から3月の調査時点には92.1%に上昇した。また、自分自身への感染に対する不安は、同期間に18.5%から75.3%に大きく上昇した。不安度(「とても不安を感じている」と「やや不安を感じる」の合計)を感じる項目としては、「いつまで続くのか、見通しが分からないこと」(85.1%)、「効果的な治療薬やワクチンなどがないこと」(83.1%)、「ウイルスが目に見えないものであること」(78.4%)が上位3位を占めた。一方、「検査(PCR検査)を受けたくても受けられないこと」に対する不安度も66%で高い割合を占めた。この結果から国民の多くが検査を希望していることがうかがえる。
 
政府は現在1日約6,200件が検査できると発表しているものの、実際の検査件数は1日平均約1,500件に留まっている。公的保険が適用されてからも検査件数は大きく改善されていない。さらに、日本医師会は3月18日、医師が保健所に新型コロナウイルスの感染が疑われる患者の検査を依頼しても断られたケースが、290件もあったことを明らかにした。
 
このような昨今の状況を見る限りでは、まだ、日本では「検査難民」の問題が解消されていないことが分かる。予防をしたくてもマスクが買えない、検査を受けたくても検査が受けられない、治療薬が欲しくてもまだ治療薬が開発されていない。このままでは国民の焦りと不安は増すばかりである。PCR検査であり、ドライブスルー検査であり、どのような検査も完璧ではない。だからといって検査を見送ってはならないのではないか。国民が要求するのは大きいものではない。家族の健康を守るための一枚のマスクと希望する時に受けられる検査である。

海外の多様な事例を参考により早く日本で検査が広がり、国民が抱えている不安感が解消されることを強く願うところである1
 
1 韓国のドライブスルー検査の導入背景などについては、ニューズウィク日本版「日韓を読み解く― 新型ウイルス、日本の「検査難民」問題に韓国の「ドライブスルー検査」を活用せよ」2020年2月28日を参照すること。
https://www.newsweekjapan.jp/kim_m/2020/02/post-14.php
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生活研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会政策比較分析、韓国経済

(2020年03月23日「研究員の眼」)

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