2020年03月18日

貿易統計20年2月-中国の生産停止の影響で輸入が急減

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.中国からの輸入がほぼ半減

財務省が3月18日に公表した貿易統計によると、20年2月の貿易収支は11,098億円の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:9,172億円、当社予想は7,622億円)を上回る結果となった。輸出入ともに減少したが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う中国の生産停止の影響で、輸入の減少幅(前年比▲14.0%)が、輸出の減少幅(同▲1.0%)を大きく上回ったため、貿易収支は前年に比べ7,811億円の改善となった。対中国では、輸出が前年比▲0.4%(1月:同▲6.4%)、輸入が前年比▲47.1%(1月:同▲5.7%)であった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.4%(1月:同▲1.6%)、輸出価格が前年比1.5%(1月:同▲1.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲17.3%(1月:同▲1.7%)、輸入価格が前年比4.1%(1月:同▲2.0%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 季節調整済の貿易収支は4,983億円(1月:▲787億円の赤字)と2ヵ月ぶりの黒字となった。輸出が前月比3.4%の増加となる一方、輸入が前月比▲6.1%の減少となった。

2月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=70.7ドル(当研究所による試算値)となり、1月の70.4ドルから若干上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は30ドル程度まで急落しており、通関ベースの原油価格は3月には60ドル程度、4月には40ドル台へと大きく低下することが見込まれる。

2.3月以降は輸出入ともに大きく落ち込む可能性

20年2月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲4.5%(1月:同▲8.9%)、EU向けが前年比▲9.7%(1月:同▲9.1%)、アジア向けが前年比▲1.0%(1月:同▲1.5%)、うち中国向けが前年比▲2.6%(1月:同▲4.8%)となった。なお、20年1月31日に英国がEUから離脱したため、EUは1月までの28ヵ国から27ヵ国に変更されている。
IT関連輸出の推移 中国は新型コロナウィルス感染拡大の影響で20年入り後の経済活動が急速に落ち込んでいるが、現時点では中国向け輸出にその影響は明確に表れていない。また、グローバルなITサイクルの底打ちを受けた半導体電子部品などのIT関連品目の輸出は持ち直しを続けている。

新型コロナウィルス感染拡大に伴う中国工場操業停止の影響はまず、中国からの輸入急減に表れたが、3月以降はサプライチェーン寸断の影響で輸出入がともに大きく落ち込むことが見込まれる。

また、新型コロナウィルス感染拡大の中心は中国から欧米に移っていることから、3月以降は対世界の輸出入が大幅に減少する可能性が高い。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2020年03月18日「経済・金融フラッシュ」)

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