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「データの利活用」と「プライバシー重視」を両立させる時代~CES2020『チーフプライバシーオフィサー・ラウンドテーブル:消費者は何を求めているのか?』でアップルとフェイスブックのプライバシー担当役員が語ったこと
立教大学ビジネススクール 大学院ビジネスデザイン研究科 教授 田中 道昭
- CES2020において開催されたパネルディスカッション『チーフプライバシーオフィサー・ラウンドテーブル:消費者は何を求めているのか?』に、アップルとフェイスブックのチーフプライバシーオフィサー(CPO)、および連邦取引委員会(FTC)のコミッショナーなどが登壇した。
- アップルは、プライバシー保護の重要な方針を「プライバシー・バイ・デザイン」と「データ・ミニマイゼーション」とした。前者は、アップルのすべての製品・サービスにおいて開発段階からプライバシー保護に配慮した設計がされていること。後者は、ユーザーから収集・取得、または活用する個人データを最小限に抑えるという概念である。
- 個人データ流出事件でプライバシー問題の中心にあったフェイスブックは、「プライバシー診断ツール」などプライバシー保護への対応強化を打ち出した一方で、プライバシー問題の所在や社会から求められていることを本当に理解しているのか不十分に感じざるを得ないような発言も目立った。
- FTCのコミッショナーは、企業のプライバシー規約やユーザーによるプライバシー・レベルの設定手順は複雑でわかりにくいとし、「プライバシーは消費者の選択である、個人データがどのように扱われるかを決めるのは消費者自身である」として企業が個人データを保護するための負担を消費者側に負わせていることについて懸念を表明した。
- プライバシー重視の姿勢について高い評価を受けるアップルでさえも、その取り組みが不十分であると捉えられている、それ程までにプライバシー重視を求める世論の声が高まってきている。
- 2020年1月1日施行の米国カリフォルニア州消費者プライバシー法においては、オンラインでのターゲティング広告に利活用される「クッキー」は個人情報として法規制対象となる。したがって、広告代理店やアドテック企業は「クッキー」の取扱いに法的な制限がかかることから、ターゲット広告に「クッキー」を利活用しづらくなっている。現時点ではこのような法律は米国ではカリフォルニア州に限定されているが、連邦レベルでの個人データやプライバシー保護の法制化の見通しもあり、プライバシー規制強化の流れは米国においては不可逆なものとなっている。
- 「データの利活用」と「プライバシー重視」を両立させなければならない時代が到来している。このような中で日本がとるべき対応は、「データの利活用」「プライバシー重視」の状況を冷静に分析し、より的確な答えを見出だしていくことである。そして、むしろ後発の利益を意図的に享受するような、さらにはその両立において世界をリードするような戦略的な動きをとっていくべきであろう。
■目次
1――CPOラウンドテーブルにアップルとフェイスブックが登壇
2――アップルの「プライバシー・バイ・デザイン」と「データ・ミニマイゼーション」
3――プライバシー問題の中心に置かれたフェイスブック
4――米国企業は消費者のプライバシーを守っているのか
5――iPhoneの中で起こることは、iPhoneの中に残る?
6――米国における個人情報の取り扱い、カリフォルニア州CPAが施行
7――2020年は「プライバシー・テック」の年に
立教大学ビジネススクール 大学院ビジネスデザイン研究科 教授
田中 道昭
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