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アップルとグーグルのプライバシー対応
立教大学ビジネススクール 大学院ビジネスデザイン研究科 教授 田中 道昭
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- プライバシーを重視する社会情勢の先鋭化と合わせて、プライバシー保護に関する法規制も強化されてきている。それに伴って、「ビッグデータ×AI」によって個人情報を事業の核に据えてきたデジタル・プラットフォーマーも、方針転換を迫られている。
- 現在、デジタル・プラットフォーマーのうちプライバシー保護で先行しているのは、広告収入に依存していないアップルである。アップルはプライバシーを基本的人権ととらえ、アップルのすべての製品・サービスは顧客のプライバシーと安全を徹底的に保護するために設計・開発されている。
- アップルのプライバシー保護にかかわるポイントは、写真、マップ、FaceTime、AIアシスタント「Siri」などはデバイスの中で処理・実行され、そのデータはデバイスの中に保存される、という点である。つまり、アップルが掲げた「iPhoneの中で起こることは、iPhoneの中に残ります」というフレーズの通り、原則として個人データがデバイスの外に出ることはないということである。アップルでは、ユーザーが同社の製品・サービスを利用することで作製される個人情報は、原則、いかなる目的でも開示されず販売もされないとしている。
- 個人情報やクッキーを活用した広告をビジネスモデルの柱とするグーグルは、プライバシーとセキュリティに関して「収集するデータの内容とその目的を明確にする」「ユーザーの個人情報を決して販売しない」「ユーザーが自分自身のデータを確認、移動、削除できるようにする」など「7つの原則」を掲げ、プライバシー保護やセキュリティ強化へ力を入れている。特に、2020年1月、広く普及するブラウザ「クローム」において2年以内に広告目的のクッキーを利用制限すると発表するなど、具体的な対策を打ち出してきている。
- アップルは、クッキーを、自社の製品・サービスの品質向上および「Apple News」「App Store」といった自社の広告プラットフォーム内での広告配信を目的として使用する。一方、グーグルは、クッキーを、グーグルパートナーという第三者と共有することを通してユーザー毎の最適な広告配信に使用、デジタル広告のエコシステムの中で広告収入を得るために利用している。両社とも、欧州の一般データ保護規則、米国カリフォルニア州の消費者プライバシー法でクッキーにかかわる法規制が厳格化される中、ユーザーに対して、クッキーがどのように使用されているのかについて丁寧な説明をしている。
- 「プライバシー保護」にかかわる法規制強化の流れはもはや不可逆であり、「データの利活用」によって成長を遂げてきたデジタル・プラットフォーマーには、「プライバシー保護」の概念を製品・サービスの設計・開発段階から取り入れることが求められてきている。彼らは、今後否応なく、「データの利活用」と「プライバシー保護」の両立というテーマへより高いレベルで対峙することになる。
■目次
1――アップルのプライバシー対応
1|プライバシーを強化するアップル
2|「iPhoneの中で起こることは、iPhoneの中に残ります」
3|アップルのサービスにおけるプライバシー保護
4|クッキーを第三者に渡さないアップル
2――グーグルのプライバシー対応
1|グーグルが掲げる「7つの原則」
2|グーグルのサービスにおけるセキュリティ対策
3|グーグルのプライバシー保護
4|より最適な広告を配信するためにクッキーを活用
5|オープンなエコシステム「プライバシーサンドボックス」構想
3――「データの利活用」と「プライバシー保護」の両立
(2020年08月19日「基礎研レポート」)
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立教大学ビジネススクール 大学院ビジネスデザイン研究科 教授
田中 道昭
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