2019年11月06日

「会社の芯から地球環境問題に対峙する」-迫りくる異常気象にビッグ・ピボットせよ-

立教大学ビジネススクール 大学院ビジネスデザイン研究科 教授 田中 道昭

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■要旨
  1. 地球環境問題は、企業において、もはや社会貢献活動やCSRの一環といった言わば「脇役」の存在から、ビジネスの中核から対峙すべき課題になってきている。
     
  2. 典型的な事例である米アップルでは、経営の核となる6つの価値観のうちの2つとして、「環境」と「サプライヤー責任」を掲げている。そこでは、再生可能エネルギー比率を100%にする、材料や製造プロセスを低炭素デザインにするなど具体的項目が設定されている。アップルは、製品のデザイン・製造、サプライチェーンにおいて、社内外のコミュニティ全体で地球環境保護に対する責任を果たしている。
     
  3. アマゾンは、パリ協定目標を10年前倒しで達成する取組みである気候変動対策に関する誓約「Climate Pledge」を発表し、地球環境保護への強固な姿勢を示した。その中で、再生可能エネルギーの電力比率を2030年までに100%にすること、EVトラック10万台導入などが発表された。
     
  4. 「国連気候アクション・サミット2019」に合わせて、低炭素推進機関投資家イニシアティブ「Investor Agenda」による共同声明「Global Investor Statement to Governments on Climate Change」が出され、また国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)による国連責任銀行原則「Principle for Responsible Banking」が発足した。機関投資家や金融機関は、気候変動や異常気象を経営リスクとして捉えるようになっている。
     
  5. 異常気象がいわばニューノーマル化する中、私たちが環境問題に対峙するに際して、アンドリュー・S・ウィンストンが言う「異次元のイノベーション」を強く意識する必要がある。
     
  6. 筆者は、武田信玄が戦国時代に築いたとされる堤防「信玄堤」は、戦国時代の当時においても、令和時代の現在においても、「異次元のイノベーション」の典型的な事例の一つであったと考える。それは、想定外を前提とした治水システムであり、自然を取り込んでリスクを分散、最小化するという、「自然と共生」する「レジリエント」なシステムであったと考えられるからである。
     
  7. 筆者は、「異次元のイノベーション」を起こさなければならない今だからこそ、信玄堤を事例とするような日本各地で培われた知見に学びつつ、最先端テクノロジーとの相乗効果を発揮させるような大胆なイノベーションを官民あげて起こす必要があると考える。

■目次

1――迫りくる異常気象にビッグ・ピボットせよ
2――アップルの環境対策は「気候変動」「資源」「よりスマートな化学」
3――EVトラック10万台導入を発表、アマゾンの「The Climate Pledge」
4――気候変動や異常気象は経営リスクそのもの
5――異次元のイノベーションを追及する
6――「異次元のイノベーション」としての信玄堤
7――日本各地の歴史に学ぶ
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立教大学ビジネススクール 大学院ビジネスデザイン研究科 教授

田中 道昭

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