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2019年12月12日
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4|オンライン仲介サービスにおける個人データ等の利用
消費者、事業者から入力された個人データ等、およびオンライン仲介サービス上の取引により生じた個人データ等を活用できるかどうかは、オンライン仲介サービス企業および事業者の事業の成否を左右する。第9条はデータを誰がどのように利用できるかどうか規則で定めるのではなく、利用できる者と利用範囲、利用条件等をオンライン仲介サービス企業に明確に契約条項に定めることを求めることとしているものである。
すなわち、オンライン仲介サービス企業は、その契約条項に、個人データ等の利用に関する技術上、契約上の説明(利用ができない場合はその旨)を入れなければならない(第9条第1項)。
この説明には、以下の事項が十分に記載されていなければならない(第9条第2項)。①オンライン仲介サービス企業が個人データ等を利用できるかどうか、利用の範囲およびその条件、②事業者が自身の取引に関する個人データ等を利用できるかどうか、利用の範囲およびその条件、③事業者が、他の事業者の取引にかかる個人データ等の集計を利用できるかどうか、利用の範囲およびその条件、④オンライン仲介サービス企業が個人データ等を第三者と共有する場合に、その目的と、事業者が第三者へのデータの提供を拒否できるか(オプトアウト)について記載されなければならない(図表4)。
消費者、事業者から入力された個人データ等、およびオンライン仲介サービス上の取引により生じた個人データ等を活用できるかどうかは、オンライン仲介サービス企業および事業者の事業の成否を左右する。第9条はデータを誰がどのように利用できるかどうか規則で定めるのではなく、利用できる者と利用範囲、利用条件等をオンライン仲介サービス企業に明確に契約条項に定めることを求めることとしているものである。
すなわち、オンライン仲介サービス企業は、その契約条項に、個人データ等の利用に関する技術上、契約上の説明(利用ができない場合はその旨)を入れなければならない(第9条第1項)。
この説明には、以下の事項が十分に記載されていなければならない(第9条第2項)。①オンライン仲介サービス企業が個人データ等を利用できるかどうか、利用の範囲およびその条件、②事業者が自身の取引に関する個人データ等を利用できるかどうか、利用の範囲およびその条件、③事業者が、他の事業者の取引にかかる個人データ等の集計を利用できるかどうか、利用の範囲およびその条件、④オンライン仲介サービス企業が個人データ等を第三者と共有する場合に、その目的と、事業者が第三者へのデータの提供を拒否できるか(オプトアウト)について記載されなければならない(図表4)。
5|オンライン仲介サービスとは別のチャネルを通じたサービス・商品の提供の制限
第10条の規律は、事業者が、たとえば実店舗や事業者自体のオンラインサービスで販売するとしたときに、オンライン仲介サービスよりも有利な条件で取引をすることを制限することに関するものである。最恵国待遇とも呼ばれる、オンライン仲介サービスでの価格を最安値とさせるような契約条項に対する規律である。
オンライン仲介サービス企業は、事業者がそのオンライン仲介サービス以外で同じ商品・サービスを別条件で提供することを制限する契約条項を設ける場合には、そのような制限の根拠、条件を明確にし、容易に公衆が見ることができるような方法で公表しなければならない。根拠には主要な経済的、商業的または法的な考慮が加えられていなければならない(第10条第1項、図表5)。
第10条の規律は、事業者が、たとえば実店舗や事業者自体のオンラインサービスで販売するとしたときに、オンライン仲介サービスよりも有利な条件で取引をすることを制限することに関するものである。最恵国待遇とも呼ばれる、オンライン仲介サービスでの価格を最安値とさせるような契約条項に対する規律である。
オンライン仲介サービス企業は、事業者がそのオンライン仲介サービス以外で同じ商品・サービスを別条件で提供することを制限する契約条項を設ける場合には、そのような制限の根拠、条件を明確にし、容易に公衆が見ることができるような方法で公表しなければならない。根拠には主要な経済的、商業的または法的な考慮が加えられていなければならない(第10条第1項、図表5)。
また、このような契約条項は競争法などEUの規制や各国の法律に反するものであってはならない(第10条第2項)。
6|ランキング
本項(第5条)と次項(第7条)で説明する規定は、オンライン仲介サービス企業とオンライン検索エンジン企業の両方に適用がある。
第5条はランキングについて定めるが、オンライン仲介サービスやオンライン検索エンジンにとっては、表示される順番やお勧めランキングはサイトの利便性を高める「売り」のひとつである。
オンライン仲介サービスでは、事業者との契約条項の中に、人気商品やお勧めを示すなどのランキングを決めることとなる主な変数(parameters)と、その変数が他の変数よりも重要である理由を記載しなければならない(第5条第1項)。
他方、オンライン検索エンジンでは、表示順などランキングを定めるにあたってもっとも重要な変数と、その変数がほかの変数より重要であることについて、簡易で一般的に分かりやすい表現で公表しなければならない(第5条第2項)。ランキングは、事業者の売り上げを左右する重要なものであるため、その根拠が透明化されなければならないからである(前文(24))。ただし、ランキングを外部から操作されることを防止するために、ランキングを決める算出方法(アルゴリズム)の開示までは求められない(第5条第6項、イメージとして図表6)。
6|ランキング
本項(第5条)と次項(第7条)で説明する規定は、オンライン仲介サービス企業とオンライン検索エンジン企業の両方に適用がある。
第5条はランキングについて定めるが、オンライン仲介サービスやオンライン検索エンジンにとっては、表示される順番やお勧めランキングはサイトの利便性を高める「売り」のひとつである。
オンライン仲介サービスでは、事業者との契約条項の中に、人気商品やお勧めを示すなどのランキングを決めることとなる主な変数(parameters)と、その変数が他の変数よりも重要である理由を記載しなければならない(第5条第1項)。
他方、オンライン検索エンジンでは、表示順などランキングを定めるにあたってもっとも重要な変数と、その変数がほかの変数より重要であることについて、簡易で一般的に分かりやすい表現で公表しなければならない(第5条第2項)。ランキングは、事業者の売り上げを左右する重要なものであるため、その根拠が透明化されなければならないからである(前文(24))。ただし、ランキングを外部から操作されることを防止するために、ランキングを決める算出方法(アルゴリズム)の開示までは求められない(第5条第6項、イメージとして図表6)。
事業者やウェブ開設者からオンライン仲介サービス企業等に支払われる料金が、ランキングの変数に影響を与える可能性がある場合には、そのことを明示しなければならない(第4条第3項)。これは消費者にとって客観的でない基準でランキングが決められる場合はそのことを開示しなければならないということである。
オンライン検索エンジンが、第三者からの申し出に基づいてランキングを変える場合あるいは特定のウェブサイトをリストからはずす場合には、ウェブ開設者に第三者からの申し出の内容を調査する機会を与えなければならない(第4条第4項)。
オンライン検索エンジンが、第三者からの申し出に基づいてランキングを変える場合あるいは特定のウェブサイトをリストからはずす場合には、ウェブ開設者に第三者からの申し出の内容を調査する機会を与えなければならない(第4条第4項)。
同じように、オンライン検索エンジン企業は、自社または自社が支配下に置くウェブ開設者と、その他のウェブ開設者とを別取扱とする、あるいはその可能性がある場合には、そのことを公表しなければならない(第7条第2項)。
上記で言う別取扱とは以下に関するものを含む。1)オンライン仲介サービス企業またはオンライン検索エンジン企業、および傘下の事業者またはウェブ開設者による個人データ等の利用、2)商品・サービスに対するランキングその他の設定(「お勧め商品」など)、3)オンライン仲介サービスまたはオンライン検索エンジン利用に当たって課される直接的・間接的な料金、4)オンライン仲介サービスまたはオンライン検索エンジンへのアクセス、条件、サービスや機能の利用料金、技術的インターフェイス、が挙げられている(第7条第3項)。
上記で言う別取扱とは以下に関するものを含む。1)オンライン仲介サービス企業またはオンライン検索エンジン企業、および傘下の事業者またはウェブ開設者による個人データ等の利用、2)商品・サービスに対するランキングその他の設定(「お勧め商品」など)、3)オンライン仲介サービスまたはオンライン検索エンジン利用に当たって課される直接的・間接的な料金、4)オンライン仲介サービスまたはオンライン検索エンジンへのアクセス、条件、サービスや機能の利用料金、技術的インターフェイス、が挙げられている(第7条第3項)。
4――紛争解決
EU規則は紛争処理制度についても定めている。下記(1)(2)はオンライン仲介サービス企業と事業者の間の紛争解決である。
(1)内部苦情処理制度 オンライン仲介サービス企業は、事業者の苦情を処理する内部手続を設けなければならない。内部苦情処理制度は事業者が無料で利用ができ、合理的な期間内に処理されるものでなければならない。また、透明性・公平性の原則の下で苦情をその重要さや複雑さに適切に応じた方法で扱うものでなければならない(第11条)。
(2)調停 オンライン仲介サービス企業は、事業者との裁判外における紛争の和解を目的として、二人以上の調停者を契約条項で指名しなければならない(第12条)。また、欧州委員会は加盟国と協力し、オンライン仲介サービス企業やオンライン仲介サービス企業で構成される団体等が、国際間の紛争を裁判外で解決するための調停組織を設立するよう奨励するものとされている(第13条)。
オンライン仲介サービス企業とオンライン検索エンジン企業に関するもので、若干、毛色の変わった規定が次の(3)である。
(3)代表組織または公的団体による裁判手続 事業者や企業のウェブサイト利用者を代表する正当な利益を有する組織または協会、あるいは加盟国の公的団体は、オンライン仲介サービス企業またはオンライン検索エンジン企業の当規則違反行為の停止または禁止を求めて、加盟国の裁判所に訴訟を提起することができる(第14条第1項)。これは事業者が苦情を申し立てたとすれば、オンライン仲介サービス企業から報復のおそれがあるようなケースを想定した規定である(前文(44))。
(1)内部苦情処理制度 オンライン仲介サービス企業は、事業者の苦情を処理する内部手続を設けなければならない。内部苦情処理制度は事業者が無料で利用ができ、合理的な期間内に処理されるものでなければならない。また、透明性・公平性の原則の下で苦情をその重要さや複雑さに適切に応じた方法で扱うものでなければならない(第11条)。
(2)調停 オンライン仲介サービス企業は、事業者との裁判外における紛争の和解を目的として、二人以上の調停者を契約条項で指名しなければならない(第12条)。また、欧州委員会は加盟国と協力し、オンライン仲介サービス企業やオンライン仲介サービス企業で構成される団体等が、国際間の紛争を裁判外で解決するための調停組織を設立するよう奨励するものとされている(第13条)。
オンライン仲介サービス企業とオンライン検索エンジン企業に関するもので、若干、毛色の変わった規定が次の(3)である。
(3)代表組織または公的団体による裁判手続 事業者や企業のウェブサイト利用者を代表する正当な利益を有する組織または協会、あるいは加盟国の公的団体は、オンライン仲介サービス企業またはオンライン検索エンジン企業の当規則違反行為の停止または禁止を求めて、加盟国の裁判所に訴訟を提起することができる(第14条第1項)。これは事業者が苦情を申し立てたとすれば、オンライン仲介サービス企業から報復のおそれがあるようなケースを想定した規定である(前文(44))。
5――おわりに
当規則はデジタルプラットフォーマーと、それを利用する事業者の間の契約に介入するものである。当規則は当事者間の交渉力の差異に鑑み、対等の契約当事者間では結ばれることがないような契約条項や、競争法上で問題が生じかねない契約条項あるいはランキングなどの取り扱いを規律の対象としている。不公正な契約等の発生を防ぐために、一定の手続を経るようにしたり、経済的、法的な根拠を明確化させたり、公表を求めたりする要件を課すことで、当事者間の交渉力の差異を埋めようとするアプローチと考えられる。
デジタルプラットフォーマーの経済的な力に鑑みれば、直接的に独占禁止法を適用して、たとえば、不公正な取引方法の禁止(独占禁止法第19条)のひとつである優越的地位の濫用や拘束条件付取引などを適用することも可能性として考えられる。他方、この分野は「控えめに言っても」日進月歩であり、過度な規制はイノベーションを阻害することもあり、また、もし適用対象が国内企業限定であれば、国内企業の国際競争力を削ぐ可能性もある。この意味でEUのアプローチはひとつのモデルとなりうると思われる。
デジタルプラットフォーマーにかかる法的問題としては、競争法(独占禁止法)問題に限られず、消費者問題、著作権問題、知的財産権問題等多彩な課題が提起されている。引き続きこの問題に取り組んでいきたい。
デジタルプラットフォーマーの経済的な力に鑑みれば、直接的に独占禁止法を適用して、たとえば、不公正な取引方法の禁止(独占禁止法第19条)のひとつである優越的地位の濫用や拘束条件付取引などを適用することも可能性として考えられる。他方、この分野は「控えめに言っても」日進月歩であり、過度な規制はイノベーションを阻害することもあり、また、もし適用対象が国内企業限定であれば、国内企業の国際競争力を削ぐ可能性もある。この意味でEUのアプローチはひとつのモデルとなりうると思われる。
デジタルプラットフォーマーにかかる法的問題としては、競争法(独占禁止法)問題に限られず、消費者問題、著作権問題、知的財産権問題等多彩な課題が提起されている。引き続きこの問題に取り組んでいきたい。
(2019年12月12日「基礎研レター」)
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03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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