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就労延長で老後の生活水準はどうなるか
基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.273]

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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1―就労延長という選択肢
しかし、退職までの期間が相対的に短い50代であっても、生活水準を維持できる十分な資産を用意できている世帯は少ない。およそ半数の世帯は退職後に生活水準が10%以上低下する可能性が高い*1。十分な資産を用意できていない世帯にとって、老後の収入を増やすことが生活水準の低下を防ぐ最も有効な手段となる。まずは公的年金の受給開始を繰下げることで、収入を増やすことが可能だ。そこで、就労期間の延長によって老後の生活水準がどの程度改善するかを確認する。老後も現役時代と同程度の生活水準が維持できる世帯の割合を、65歳で退職する場合と70歳まで就労期間を延長する場合で比較する。70歳まで就労期間を延長する場合は、公的年金の受給開始も70歳まで繰り下げることとする。70歳まで繰下げると、公的年金受給額は42%も増額(1月あたり0.7%×60ヶ月)されるからだ。
そこで、65歳から69歳までの就労形態は、(1)非正規の従業員として就労するパターン、(2)正規の従業員として就労するパターンに分けて考え、更に非正規の従業員として就労するパターンは、(1-1)パートやアルバイトの従業員として就労するパターンと(1-2)パート・アルバイト以外の非正規の従業員として就労するパターンに分け、計3パターンとする。続いて、厚生労働省平成30年賃金構造基本統計調査を参考に、それぞれの就労パターンで期待できる収入を図表2の通り想定した。
3―就労延長による効果
就労パターン別の各グループの構成割合は図表3の通りである。1番左は65歳で退職すると同時に公的年金の受給を開始する場合を示しており、右側3つは70歳まで働き退職と同時に公的年金の受給を開始する場合を、就労パターン別に示している。
4―まとめと今後の課題
しかし、就労延長による生活水準の低下を抑制する効果を勘案してもなお、およそ50代の3割程度は生活水準が低下する可能性が極めて高く、かつ低下率が10%を超えることが見込まれる。75歳や80歳まで働くといった選択肢もあるが、自宅を含む保有資産の活用や、長寿年金など相互扶助を可能とする金融商品の活用も併せて検討した方がいい。世帯の所得水準、老後の資金の準備状況や考え方によって、適切な金融商品も異なる。各世帯が適切な金融商品を選択でき、また適切な消費水準を把握できるだけの十分な金融リテラシーを身に付ける方が良いが、簡単ではない。フィナンシャル・プランナーなどの適切なサポートも重要である。
*1 基礎研レポート「50代の半数はもう手遅れか-生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する」
*2 家計調査及び広報中央委員会家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年調査結果)、厚生労働省平成30 年就労条件総合調査、東京都労働相談情報センター中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版))、及び中小企業庁中小企業の企業数・事業所数(2016年)
(2019年12月06日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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