2019年09月25日

50代の半数はもう手遅れか~生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子

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■要旨
  1. 一般的に、夫婦二人の老後に必要な資金は2,000万円~3,000万円が目安とされる。実際、2,000万円~3,000万円の資産を有す高齢者の約半数が現在の生活で満足しているといった調査結果がある。しかし、2,000万円~3,000万円もの資産があっても、半数は満足できる生活ができていないとも言える。
     
  2. 2,000万円~3,000万円もの資産があっても、人によって満足できる生活ができない理由として、世帯構成や居住エリアの物価水準などの影響もある。しかし、そもそも人によって満足できる生活水準が異なることの影響も大きいと考えられる。
     
  3. 退職前の生活水準が、退職後の満足できる生活水準に大きく影響していると考えられる。消費支出額は年間収入に比例する傾向があるため、退職後に満足できる生活水準は、退職前の年間収入に左右されると言い換えることができる。
     
  4. そこで、まず50代のサラリーマン夫と専業主婦の二人世帯を対象に、老後の生活のために用意すべき金額を年間収入別に推計した。その結果、年間収入500万円未満の世帯にとっては、2,000万円~3,000万円で老後のための資金としては十分であることがわかった。一方、年間収入1,000万円以上の世帯では7,000万円~8,000万円もの資金が必要であるという推計結果が得られた。
     
  5. 次に、50代の世帯を対象に老後のための資金の準備状況を確認した結果、退職後も退職前と同程度の生活を維持可能な世帯は全体の3分の1程度と少ないことが分かった。更に、およそ半数の世帯は、退職後に生活水準を10%以上も低下させざるを得ない状況にあることもわかった。
     
  6. 老後のための資金の準備状況と年間収入とに明らかな相関関係はない。1,000万円を超える世帯に限っても、退職後も退職前と同程度の生活を維持可能な世帯は全体の3分の1程度に過ぎず、更に、退職後に生活水準を10%以上低下する見通しの世帯も4割に及ぶ。
     
  7. 老後のための資金の準備状況が芳しくない世帯にとっては、自宅を含む保有資産の活用、就労期間の延長、長寿年金等により相互扶助などの活用が重要となる。
■目次

1―老後のための必要資産額は人それぞれ
2―老後の生活のために用意すべき金額を年間収入別に推計する
  1|退職後の可処分所得を推計する
  2|退職後の消費支出
  3|年間収入別、老後の生活のために用意すべき資産金額
3―準備が整っている人はどれくらいいるのか
4―まとめと今後の課題
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

経歴
  • 【職歴】
     1999年 日本生命保険相互会社入社
     2006年 ニッセイ基礎研究所へ
     2017年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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