2019年12月06日

もう1人も同じである確率ー追加情報は、確率に影響を与えるか?

基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.273]

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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確率は奥が深い。次の問題を考えよう。
 

(2人のこどもの問題)
ある家庭に、2人のこどもがいます。そのうちの1人が、男の子だとわかりました。
このとき、もう1人も、男の子である確率は、いくらでしょうか。
ただし、男の子と女の子の生まれる確率は同じとします。

慌てていると、次の誤答をしやすい。「2人のこどものうち、1人が男の子だろうが、女の子だろうが、もう1人の性別に、関係はないはずだ。問題文は、回答者を混乱させようとして、無意味な条件をつけているのに違いない。男の子と、女の子の生れる確率は同じだというのだから、もう1人が男の子である確率は、2分の1だ。」
 
しかし、冷静になると正しい答えが見えてくる。「2人のこどもがいる、というのだから、その性別のパターンは、『兄弟』『兄妹』『姉弟』『姉妹』の4つしかない。男の子と、女の子の生まれる確率は同じ、というのだから、これらのパターンは均等に現れるはずだ。2人のうち、1人が男の子だとわかったのだから、『姉妹』ということはあり得ない。残る3つのうち、もう1人も男の子となるのは『兄弟』だけだ。従って、もう1人も男の子である確率は、3分の1。」
 
次に、この問題の応用を考えてみたい。応用といっても条件が1つ加わるだけだ。
 

(2人のこどもの問題 ―何曜日生まれかがわかった場合)
ある家庭に、2人のこどもがいます。そのうちの1人が、火曜日生まれの男の子だとわかりました。
このとき、もう1人も、男の子である確率は、いくらでしょうか。
ただし、男の子と女の子の生まれる確率、こどもが各曜日に生まれる確率はそれぞれ同じとします。

慌てていると、次の誤りに陥りやすい。「2人のこどものうち、1人が男の子だったとして、その男の子が何曜日に生まれたとしても、そんなことが、もう1人の性別に影響するはずがない。前の問題で1人が男の子だったとわかったときに、もう1人も男の子である確率は3分の1だったから、この問題でも3分の1だ。」
 
しかし、次のように地道に考えてみる。
 
まず、2人とも男で、兄が月曜日、弟が火曜日生まれの場合を、(兄月・弟火)と表すことにする。この場合、弟が火曜日生まれの男の子なので、問題の条件を満たしている。他にも(兄日・弟火)や(兄火・妹土)は、火曜日生まれの男の子を含むので、条件を満たす。しかし、(兄水・弟土)や(姉火・弟日)は、2人とも火曜日生まれの男の子ではないので、条件を満たしていない。
 
それでは、条件を満たす場合は、どれだけあるだろうか。書き並べてみよう。
このように、全部で27通りの場合がある。それぞれの場合は、同じ確率で発生する。要注意点は、空白部分の(兄火・弟火)を、重複カウントしないことだ。
 
さてこのうち、2人とも男の子である場合は、1列目と2列目に並べた13通り。つまり、もう1人も男の子である確率は、27分の13(約48%)となり、これが正しい答えだ。この確率は、3分の1よりもだいぶ大きくなり、むしろ2分の1に近い。
 
この様子を図を使って理解してみよう。第1子を縦軸、第2子を横軸として、性別と何曜日生まれかを図示すると、196個のセルのどれかとなる。各セルが発生する確率は、全部同じだ。
前の問題では、青い太枠部分内のセル(147個)のうち、赤い太枠部分内のセル(49個)の比率が問われている。したがって、もう1人も男の子である確率は、3分の1であった。
 
一方、後の問題では、青色または赤色に色塗りしたセル(27個)のうち、赤色のセル(13個)の比率が問われている。このため、もう1人も男の子である確率は、27分の13ということになる。
 
どういう仕組みで、このようなことになるのだろうか。実は、男の子だとわかった1人に何らかの条件が付けば付くほど、2人ともその条件を満たすことはレアケースとなり、もう1人も男の子である確率は、そのもう1人のみで考えた場合の確率、つまり2分の1に近づくのだ。
 
このように、確率は、一見、無関係な情報によって、変化することがある。
 
いま、世の中は、デジタル革命の真っ只中といわれる。ビジネスでは、ビッグデータをもとに、経営者がさまざまな判断を行うようになってきている。どの情報をとるか、捨てるか。確率の評価には、情報の取捨選択のセンスが問われるものと思われるが、いかがだろうか。
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

(2019年12月06日「基礎研マンスリー」)

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