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退職後に生活水準の低下をどう防ぐか?-リバース・モーゲージなど金融商品の活用について考える
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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1――資産活用という選択肢
1 基礎研レポート「50代の半数はもう手遅れか-生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する」
2 基礎研レポート「就労延長で生活水準はどうなるか」
2――就労延長しても生活水準の低下が見込まれるのはなぜ?
借入利率を上回る運用利回りを確保できるならば、借入金の返済に充てるよりも資産運用に回す方が有利である。しかし、借入利率を上回る運用利回りを確保できることは稀5で、通常は、借入利率を上回る運用利回りを目指すためには、相応の資産価格変動リスクを受け入れる必要がある。理屈上は借入金を相殺した純資産残高を資産運用に回すよりも、借入金の返済に充てずに金融資産残高を資産運用に回す方が、投資額が大きいため資産価格が上昇した場合の利益が大きい。しかし、運悪く資産価格が下落した場合の損失も大きい。一般的には資産価格が下落した場合の損失を回避したいと考える(リスク回避的)ので、70歳まで働いてもなお退職後に生活水準の低下が見込まれる世帯の大部分は、資産運用に回せる資金を保有していないと考えているであろう。そこで、金融資産額残高や収入に照らして多額の住宅ローンが残っており、かつリスク回避的な世帯を想定し、純資産残高には勘案されていないが住宅ローンにより取得しているはずの住宅資産の活用の効果を評価する。
3 退職一時金及び企業独自の退職年金をまとめて退職金を記載する
4 野尻哲史「高齢者の金融リテラシー~生活に不安を抱えながらも資産の持続力に楽観的~」フィデリティ退職・投資教育研究所
5 住宅ローン減税やiDeCoなどの節税効果が期待できる場合や、固定金利で借入れた後に市場金利が大きく上昇した場合など
3――多額の住宅ローンが残っているのなら、いっそのこと返済しないという選択もある
残念ながら、リバース・モーゲージの大部分は金利が上昇すると利息の支払い負担も増大する変動金利型である。今回は金利変動リスクを勘案しない代わりに、実勢を上回る水準を含む様々な借入金利(1.5%~4.5%、1.0%刻み)を想定し、リバース・モーゲージ活用の効果を確認する。リバース・モーゲージには、金利変動リスクだけでなく担保不動産の価格変動リスクもある。中には、自宅(担保物件)の価値が大きく下落した場合に生存中でも借入金(元本の一部)の返済義務が生じるタイプのリバース・モーゲージもあるが、今回は、住宅融資保険を利用することで、不動産価格が大きく下落しても生存中に借入金の返済義務が生じないタイプを前提とする。住宅融資保険を利用した商品は、資金の使い道が限定されるが、住宅ローンの借換えを目的とした利用が可能である。したがって想定する金融資産額残高や収入に照らして多額の住宅ローンが残っており、かつリスク回避的な世帯には適切な手段と考えられる。
リバース・モーゲージへの借換えタイミングは年齢制限を満たす限り任意だが、本稿では、65歳到達時に借換えることを前提に住宅資産の活用の効果を評価してみる。リバース・モーゲージによる資金調達は、借換え時の年齢が低いほど調達額の制約が大きく、満60歳未満の場合は不動産評価額の30%までに、満60歳以上でも50%~65%までに制限されるからである。なお、65歳時点の残債は現時点の負債総額の50%と仮定し、65歳時点で負債総額が500万円(現時点で1,000万円)を上回る場合のみリバース・モーゲージへ借換えるという前提で検証する。
6 一般の住宅ローンのように、条件を満たせば借入金利を割引くことで、1.5%程度の商品もあるが、その条件は他のサービスの併用(購入)であり、老後の生活資金が不足する世帯は通常購入しない余裕のある世帯向けサービスである。
4――長生きリスクをシェアするという選択
5――世帯によって最適な金融商品は異なる
このように老後のための資金の準備状況や所得水準、更には目先の生活が楽になれば備えは要らないと考えるのか、将来への備えは必要と考えるのかによって、最適な金融商品は異なる。このため、適切な情報提供やアドバイスを通じて、各世帯が適切に金融商品を選択できるように金融機関等がサポートする仕組みが極めて重要である。当レポートが各世帯のより良い選択の一助となることを願う。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
(2019年10月09日「基礎研レポート」)
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