2019年09月09日

米国経済の見通し-引き続きトランプ大統領のチキンゲームに翻弄される米国経済

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 米国の4-6月期の成長率(前期比年率)は+2.0%(前期:+3.1%)と前期から低下。個人消費は堅調であったものの、在庫投資や外需などが前期の反動もあって成長押し下げに転じた。さらに、設備投資が16年4-6月期以来のマイナスとなり成長を押下げた。
     
  2. 足元の経済指標は、労働市場の回復持続を背景に消費が堅調を維持しているものの、一部消費者センチメントに悪化がみられるほか、企業の設備投資や景況感の悪化が顕著になっている。これは、米中貿易戦争を中心にトランプ大統領の通商政策に伴う実体経済への影響が顕在化しているとみられる。
     
  3. 金融市場は、FRBの追加緩和を求める催促相場の様相を呈しているが、株式市場と債券市場では米経済に対する評価は大きく異なっている。FRBは通商政策の先行きが見通せない中、金融市場の金融政策に対する反応も睨んで難しい舵取りを求められている。
     
  4. 当研究所は、20年の大統領選挙を睨んでトランプ大統領が早ければ年内にも米中通商交渉で部分合意し来年以降は対中関税を段階的に見直す前提で、19年の成長率を+2.3%、20年を+1.9%と予想している。金融政策は年内2回(0.50%)の追加利下げの後、来年は政策金利の据え置きを予想している。
     
  5. 上記見通しに対するリスクは欧州や中国経済の大幅な下振れに加えて、トランプ大統領によるチキンゲームとも言える不合理な政権運営である。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  (経済概況)4‐6月期の成長率は個人消費が堅調も、前期から低下
  (経済見通し)
   成長率は19年+2.3%、20年+1.9%に低下。トランプ大統領の政策がリスク
2.実体経済の動向
  (労働市場、個人消費)
   労働市場は回復持続もモメンタムは低下、消費マインドは指標で明暗
  (設備投資)設備投資は軟調、通商政策が重石
  (住宅投資)住宅ローン金利の低下が住宅市場を下支えする可能性
  (政府支出、債務残高)「財政の崖」は回避も、残る連邦政府機関の閉鎖リスク
  (貿易)
   米中関税競争の動向は依然不透明も、対中関税は来年以降の段階的な引き下げを予想石
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  (物価)エネルギー価格が19年の物価を押下げ、20年は押上げ
  (金融政策)19年に2回の追加利下げを予想
  (長期金利)足元の金利低下は行き過ぎ、19年末1.8%、20年末2.0%を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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