2019年06月13日

米国経済の見通し-トランプ大統領のチキンレースに付き合わされる米国経済

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. トランプ大統領による5月5日の対中関税率の引き上げ発表によって、合意間近とみられていた米中通商交渉が難航していることが示された。同大統領は米中首脳会談が実現しない場合に対中関税の対象を輸入品全額に拡大する可能性を示唆しており、実体経済への影響が懸念されている。
     
  2. 足元の経済指標は生産や企業景況感が悪化している一方、消費者センチメントや消費は底堅い状況が続いており、まちまちの結果となっている。
     
  3. 金融市場はインフレが政策目標を下回っていることに加え、通商政策に伴う景気減速懸念から、年内複数回の利下げを既に織り込んでいる。このため、FRBは政策目標の達成に加え、金融市場にも配慮した、難しい金融政策運営を迫られている。
     
  4. 米中貿易摩擦をはじめ、理不尽とも言える圧力によって合意を引き出そうとするトランプ大統領の政策チキンゲームに米経済は無理やり付き合わされおり、非常に不安定な状況と言える。
     
  5. 当研究所は、現時点では関税強化策が回避されることや資本市場の不安定な状況が長期化しない前提で、19年の成長率を+2.5%、20年を+1.9%と予想しており、予測期間において政策金利の据え置きを予想している。
     
  6. ただし、来週のFOMC会合や米中首脳会談など見通しに大きな影響を与えるイベントが目白押しとなっており、経済や金融政策見通しに対する不透明感は強い。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)1‐3月期の成長率は、前期から加速も外需、在庫などが押上げ
  ・(経済見通し)
    成長率は19年+2.5%、20年+1.9%に低下。トランプ大統領の政策がリスク
2.実体経済の動向
  ・(設備投資)設備投資は暫く通商政策が重石
  ・(住宅投資)住宅市場の回復はもたつき、ただし、低金利が一定程度下支える可能性
  ・(政府支出、債務残高)20年の選挙を前に歳出拡大で合意する可能性
  ・(貿易)関税強化策の継続は疑問
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)原油価格の上昇、賃金上昇から物価は緩やかに上昇
  ・(金融政策)20年にかけて政策金利は据え置き
  ・(長期金利)
    足元の金利低下は行き過ぎ、19年末2.6%、20年末2.8%まで緩やかな上昇を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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