2019年05月07日

【19年1-3月期米GDP】前期比年率+3.2%、在庫投資、外需が成長を押上げ

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は前期、市場予想を上回る

4月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は19年1-3月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+3.2%となり、前期(同+2.2%)から上昇、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+2.3%も上回った(図表1・2)。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
1-3月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率+1.2%(前期:+2.5%)と3期連続で前期から伸びが鈍化したほか、民間設備投資も+2.7%(前期:+5.4%)と前期から伸びが鈍化した(図表2)。さらに、住宅投資は▲2.8%(前期:▲4.7%)とこちらは5期連続のマイナス成長となった。

一方、政府支出が+2.4%(前期:▲0.4%)と前期からプラスに転じたほか、外需の成長率寄与度も+1.03%ポイント(前期:▲0.08%ポイント)と前期から成長押上げに転じた。さらに、在庫投資の成長率寄与度も+0.65%ポイント(前期:+0.11%)と前期から成長率の押上げ幅が拡大した。

当期は、個人消費の大幅な鈍化が見込まれていたため、当研究所は成長率が前期から低下すると予想していた。しかしながら、主に在庫投資や外需が当研究所の想定以上に成長率を押上げた結果、成長率は前期を大幅に上回り、18年7―9月期に迫る高成長となった。もっとも、外需や在庫投資の成長押上げは一時的とみられることから、来期以降のGDP成長率は低下しよう。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)自動車・自動車部品消費の落ち込みから、財消費が減少
1-3月期の個人消費は、財消費が前期比年率▲0.7%(前期:+2.6%)と前期からマイナスに転じたほか、サービス消費も+2.0%(前期:+2.4%)と前期から伸びが鈍化した(図表3)。財消費では、娯楽財・スポーツカーが+7.2%(前期:+2.6%)と前期から伸びが加速したものの、自動車・自動車部品が▲18.4%(前期:+8.5%)と前期から大幅なマイナスに転じたこともあって、耐久財全体でも▲5.3%(前期:+3.6%)と前期からマイナスに転じた。

一方、衣料・靴が▲5.7%(前期:+1.1%)、ガソリン・エネルギーが▲0.2%(前期:+3.0%)と前期からマイナスに転じたこともあって、非耐久財全体でも+1.7%(前期:+2.1%)と前期から伸びが鈍化した。

最後にサービス消費は、医療サービスが+3.8%(前期:+0.3%)、金融サービスも+4.5%(前期:+3.3%)と前期から伸びが加速したものの、住宅・公共料金が+1.3%(前期:+1.7%)と前期から伸びが鈍化した。さらに、飲食・宿泊が▲1.3%(前期:▲2.7%)とマイナス幅は縮小したものの、2期連続のマイナスとなったほか、娯楽サービスが▲2.6%(前期:+1.4%)とマイナスに転じた。

一方、実質可処分所得は前期比年率+2.4%(前期:+4.3%)と、前期から伸びが鈍化した(図表4)。また、貯蓄率は7.0%(前期:6.8%)と2期連続の上昇となった。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 (民間投資)設備機器投資、建設投資が軟調
1-3月期の民間設備投資は、知的財産投資が前期比年率+8.6%(前期:+10.7%)と前期から伸びは鈍化も好調を維持した一方、設備機器投資が+0.2%(前期:+6.6%)と前期から大幅に鈍化したほか、建設投資が▲0.8%(前期:▲3.9%)と3期連続のマイナス成長となった(図表5)。

建設投資では、商業・医療が+6.8%(前期:▲6.9%)と前期からプラスに転じたものの、製造業が▲7.1%(前期:+2.1%)とマイナスに転じたほか、電力・通信が▲6.3%(前期:▲14.1%)、資源関連も▲1.1%(前期:▲2.7%)と前期に続きマイナス成長となった。

設備機器投資では、コンピュータ・周辺機器が+3.9%(前期:▲15.1%)と前期からプラスに転じたことから情報処理関連が+0.8%(前期:▲2.8%)とプラスに転じた一方、産業機器が+1.3%(前期:+5.5%)、輸送機器も+7.3%(前期:+17.0%)と、いずれも前期から伸びが鈍化した。

知的財産投資では、ソフトウエアが+13.3%(前期:+9.9%)と前期から伸びが加速したものの、研究・開発が+5.1%(前期:+12.1%)と前期から伸びが鈍化した。

最後に住宅投資は、集合住宅が前期比年率+17.6%(前期+20.1%)と2桁の伸びとなったものの、戸建てが▲19.1%(前期:▲16.9%)と前期からマイナス幅が拡大して全体の足を引っ張った。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)州・地方政府支出が全体を押上げ
1-3月期の政府支出の内訳は、連邦政府支出が前期比年率横這い(前期:+1.1%)と、前期から伸びが鈍化した一方、州・地方政府が+3.9%(前期:▲1.3%)と前期からプラスに転じ、全体を押上げた(図表6)。

なお、連邦政府支出では、国防関連支出が+4.1%(前期:+6.4%)と前期から伸びが鈍化したほか、非国防支出が▲5.9%(前期:▲6.1%)と、13年10-12月期(同▲7.7%)以来の落ち込みとなった前期に続いて2期連続のマイナスとなった。
(貿易)輸出入ともに貿易収支を改善
1-3月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率+3.7%(前期:+1.8%)と前期から伸びが加速した一方、輸入が▲3.7%(前期:+2.0%)とこちらは前期からマイナスに転じており、当期は輸出入ともに貿易収支を改善させる方向に働いた(図表7、8)。

輸出を仔細にみると、サービス輸出が前期比年率+1.8%(前期:+2.7%)と前期から伸びが鈍化したものの、財輸出が+4.7%(前期:+1.2%)と前期から伸びが加速して全体を押上げた(図表7)。財輸出では、工業用原料が▲1.3%(前期:+13.1%)、資本財(自動車関連除く)も▲1.6%(前期:+5.5%)と前期からマイナスに転じた。一方、消費財(食料・自動車関連を除く)が+10.2%(前期:+7.6%)と前期から伸びが加速したほか、食料・飲料が+45.5%(前期:▲48.6%)、自動車関連も+48.3%(前期:▲13.8%)と、前期からプラスに転じた。

輸入は、サービス輸入が前期比年率▲0.8%(前期+8.6%)、財輸入も▲4.4%(前期:+0.5%)といずれも前期からマイナスに転じた(図表8)。財輸入では消費財(食料・自動車関連を除く)が+4.5%(前期:+13.2%)と前期から伸びが鈍化したほか、自動車関連が▲5.9%(前期:+11.4%)と前期からマイナスに転じた。さらに、食料・飲料が▲5.1%(前期:▲8.8%)、工業原料が▲9.9%(前期:▲12.7%)、資本財(自動車関連除く)も▲6.1%(前期:▲2.7%)と2期連続のマイナスとなった。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期から伸びが鈍化
1-3月期のGDP価格指数は、前期比年率+0.9%(前期:+1.7%)と前期から伸びが鈍化し、市場予想(同+1.2%)も下回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+3.8%(前期:同+4.1%)と実質ベースとは対照的に前期から伸びが鈍化した(図表9)。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+0.6%、前年同期比+1.4%(前期:+1.5%、+1.9%)と前期比、前年同期比ともに前期から伸びが鈍化し、前年同期比ではFRBの物価目標(2%)を前期からさらに下回った(図表10)。また、食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も前期比年率+1.3%、前年同期比+1.7%(前期:+1.8%、+1.9%)と、こちらも前期比および前年同期比で伸びが鈍化し総合指数同様、物価目標を下回った。このため、1-3月期は物価上昇圧力が後退した。
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2019年05月07日「経済・金融フラッシュ」)

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