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- 改正相続法の解説(4)-銀行預金をどう払い戻すか
2019年08月26日
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■要旨
相続が発生すると被相続人の預貯金は凍結され、遺産分割協議によって預貯金の帰属が定まるまで相続人はお金を引き出すことができないのが原則である。一方で、葬式代など即座に必要なお金が必要となることもあり、改正相続法では遺産分割前の預貯金引き出しについて二つの制度を用意している。
一つ目は、相続人が単独で、自分の相続分に三分の一を乗じた額を引き出せるとするものである。ただし、銀行実務では被相続人の出生から死亡までの戸籍を必要書類とするなど手間がかかるという難点がある。
二つ目は、遺産分割の審判または調停手続きが申し立てられているときに、家庭裁判所から預貯金債権について仮分割の仮処分出してもらうことで、預金を引き出すことができるという制度がある。しかし、これも家庭裁判所での手続きとなるため、手間がかかる。
別の方法として、預貯金を特定の相続人に相続させる遺言を書いておくことが考えられるが、銀行実務ではやはり被相続人の出生からの戸籍を求めるなど簡易な手続きにはなっていないようである。
信託銀行や一部地銀の遺言代用信託を利用することで、被相続人死亡により、事前に指定した特定相続人に信託財産を引き継がせるということが可能となり、また、金銭引き出しのための必要書類も多くはなく、検討の余地がある。
■目次
1――はじめに
2――遺産分割前の預貯金の払戻制度-必要書類取得に手間がかかる-
1|制度の概要
2|具体的な手続き
3――預貯金債権について仮分割の仮処分-家庭裁判所への申立てが必要-
1|制度の概要
2|具体的な手続き
4――遺言等による預貯金の帰属
1|いわゆる相続させる旨の遺言-必要種類の取得や遺言執行者選任の手間がかかる-
2|遺言代用信託-最も簡素な手続きで使い勝手が良い-
5――おわりに
相続が発生すると被相続人の預貯金は凍結され、遺産分割協議によって預貯金の帰属が定まるまで相続人はお金を引き出すことができないのが原則である。一方で、葬式代など即座に必要なお金が必要となることもあり、改正相続法では遺産分割前の預貯金引き出しについて二つの制度を用意している。
一つ目は、相続人が単独で、自分の相続分に三分の一を乗じた額を引き出せるとするものである。ただし、銀行実務では被相続人の出生から死亡までの戸籍を必要書類とするなど手間がかかるという難点がある。
二つ目は、遺産分割の審判または調停手続きが申し立てられているときに、家庭裁判所から預貯金債権について仮分割の仮処分出してもらうことで、預金を引き出すことができるという制度がある。しかし、これも家庭裁判所での手続きとなるため、手間がかかる。
別の方法として、預貯金を特定の相続人に相続させる遺言を書いておくことが考えられるが、銀行実務ではやはり被相続人の出生からの戸籍を求めるなど簡易な手続きにはなっていないようである。
信託銀行や一部地銀の遺言代用信託を利用することで、被相続人死亡により、事前に指定した特定相続人に信託財産を引き継がせるということが可能となり、また、金銭引き出しのための必要書類も多くはなく、検討の余地がある。
■目次
1――はじめに
2――遺産分割前の預貯金の払戻制度-必要書類取得に手間がかかる-
1|制度の概要
2|具体的な手続き
3――預貯金債権について仮分割の仮処分-家庭裁判所への申立てが必要-
1|制度の概要
2|具体的な手続き
4――遺言等による預貯金の帰属
1|いわゆる相続させる旨の遺言-必要種類の取得や遺言執行者選任の手間がかかる-
2|遺言代用信託-最も簡素な手続きで使い勝手が良い-
5――おわりに
(2019年08月26日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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