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- エンタメ狂の独り言-[速報] ザ・シンプソンズ ディズニーの祭典に登場決定
コラム
2019年06月25日
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D23という名前を聞いたことがあるだろうか。D23は、ウォルト・ディズニーがハリウッドに映画会社を設立した1923年にちなんで名づけられた世界最大のディズニー公式ファンクラブである。当ファンクラブは会員制であり、年間を通じて会報やグッズが送られてきたり、特別なイベントに参加する権利を得ることが出来る。2年に1度「D23 EXPO」と称してディズニー関連最大のイベントがあり、アメリカ・アナハイムで3日間開催される。そこでは、今後計画されている映画やアニメ、テーマパークを含めたプロジェクトが発表される。まさに、ディズニーの描く未来をファンと共有するイベントと言えるだろう。筆者も筋金入りのディズニーファンで、過去に参加経験もあり、今年開かれる「D23 EXPO 2019」にも取材に行く予定である。
さて2019年6月25日、D23公式ツイッターから以下のようなアナウンスがあった。
“JUST ANNOUNCED: The Simpsons Will make their #D23 Expo debut with a special presentation and convention floor appearances.1”
アメリカの人気アニメ『ザ・シンプソンズ』がD23 EXPO 2019に登場することが決まった、という発表である。『ザ・シンプソンズ』については、「CCレモン」のCMに出演していた黄色い人間のキャラクターが出る番組といえば想起できる人も多いのではないだろうか。日本では、なじみが薄いかもしれないが、アメリカアニメ史上最長寿番組であり、現在は60か国以上で20か国語に翻訳され、全世界で毎週6000万人以上が視聴している。このザ・シンプソンズがディズニーのイベントに姿を現すという事で、恐らくコンテンツ業界に激震が走るだろう。
この背景には、2017年12月、ウォルト・ディズニー・カンパニーによる21世紀フォックスの映像製作事業、ケーブル放送事業、映像配信サービス事業の買収発表があった。ディズニーは過去にも、2009年には、世界中で大ヒットした『アベンジャーズ』を始めとしたMCUシリーズを有する「マーベル・エンターテインメント」を4億ドルで買収し、さらに、2012年には『スターウォーズ』『インディージョンズ』を制作した「ルーカス・フィルム」を40億5千万ドルで買収している。今回買収発表した21世紀フォックス(20世紀フォックス)と言えば、ウォルト・ディズニー・カンパニー、ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント、パラマウント、ユニバーサル・スタジオ、ワーナー・ブラザーズ・エンターテインメントに並ぶ6大映画ブランドとして『タイタニック』、『ホームアローン』、『プレデター』『アバター』など日本でも馴染み深い映画を配給していた。そして、今回2019年3月20日、ディズニーは、713億ドルを投じ2、フォックスの映画・テレビ部門を手に入れた。
この買収成功によって、テレビ部門の看板番組とも言える『ザ・シンプソンズ』もディズニーファミリーになったわけである。これに伴い公式サイトのトップページには『ザ・シンプソンズ』も載せられている。さて、当キャラクターがD23 EXPOというディズニーの今後の明暗を占う祭典に登場することは何を意味しているのか。当番組は、アメリカの中流階級(労働者階級)の生活・文化および社会状況を風刺的かつ強調して描き出したものであり、下品な言葉や暴力、性的な話題を含むなど、内容によっては視聴年齢制限指定がつくこともある。家庭によっては『ザ・シンプソンズ』を見ることを禁ずるケースもあり、買収完了当初から下品な作風の本シリーズをディズニーの傘下に入れるなとか、ディズニー傘下となるのであれば、これまでとは異なった制限をかけろ、といった意見も出ていた。ディズニーは、クリーンなイメージを大事にしており、子供に安心して見せることが出来るコンテンツである、というのが一般的認識だろう。ディズニーにとっては、つつかれたくない点であり、筆者自身は、ディズニーブランドに「ザ・シンプソンズ」のイメージを極力つけない戦略をとることを予想していたが、実際にD 23 EXPOでのプレゼンテーションが企画されているところをみると、当作品は本当の意味で「ディズニー」になったといえるだろう。
さて、今回の事業買収によって、フォックスが持っていた『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』などのマーベルコミックスの権利がディズニーに移ることで、『デッドプール』もディズニーの傘下に入ることとなる。『デッドプール』は過激すぎる暴力的なシーンや下品なジョークによりR指定(17歳未満は保護者同伴が必要)を受けているが、アメリカ史上「R指定映画で最も売れた作品」3という記録をつくっている。ファミリーフレンドリーを大事にするディズニーは、R指定の作品を製作する気がないことを過去に明言していた4。しかし、ディズニーの会長兼最高経営責任者(CEO)のボブ・アイガー氏は
“It [Deadpool] clearly has been and will be Marvel branded. But we think there might be an opportunity for a Marvel-R brand for something like Deadpool.5”
(訳:デッドプールのようなR指定映画を作るのもいい機会である。)
と発言しており、ディズニーが実際にどれだけこれまでの ディズニーから逸脱できるか、大変興味深いところである。
なにはともあれ、今回のD23 Expo 2019において何らかの『ザ・シンプソンズ』に関する“D’oh”(主人公の決まり文句)が聞けることを、筆者は大変楽しみにしている。
1 D23公式ツイッター https://twitter.com/DisneyD23/status/1143202164900106241 2019/06/25
2 ディズニー、8兆円でフォックス買収へ 競合相手が断念 https://www.asahi.com/articles/ASL7M7F5PL7MULFA03D.html 2018/07/19
3 『デッドプール』が“R指定で最も売れた作品”となった理由ーー善悪を超えたヒーローの革新性https://realsound.jp/movie/2016/06/post-1888.html 2016/06/07
4 ディズニー傘下に!デッドプールが自虐…クリエヴァ&ヒューも反応https://www.cinematoday.jp/news/N0097004 2017/12/15
5 'Deadpool' Can Stay R-Rated at Disney, Says Bob Iger https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/deadpool-will-stay-r-rated-fox-disney-merger-1067651 2017/12/14
さて2019年6月25日、D23公式ツイッターから以下のようなアナウンスがあった。
“JUST ANNOUNCED: The Simpsons Will make their #D23 Expo debut with a special presentation and convention floor appearances.1”
アメリカの人気アニメ『ザ・シンプソンズ』がD23 EXPO 2019に登場することが決まった、という発表である。『ザ・シンプソンズ』については、「CCレモン」のCMに出演していた黄色い人間のキャラクターが出る番組といえば想起できる人も多いのではないだろうか。日本では、なじみが薄いかもしれないが、アメリカアニメ史上最長寿番組であり、現在は60か国以上で20か国語に翻訳され、全世界で毎週6000万人以上が視聴している。このザ・シンプソンズがディズニーのイベントに姿を現すという事で、恐らくコンテンツ業界に激震が走るだろう。
この背景には、2017年12月、ウォルト・ディズニー・カンパニーによる21世紀フォックスの映像製作事業、ケーブル放送事業、映像配信サービス事業の買収発表があった。ディズニーは過去にも、2009年には、世界中で大ヒットした『アベンジャーズ』を始めとしたMCUシリーズを有する「マーベル・エンターテインメント」を4億ドルで買収し、さらに、2012年には『スターウォーズ』『インディージョンズ』を制作した「ルーカス・フィルム」を40億5千万ドルで買収している。今回買収発表した21世紀フォックス(20世紀フォックス)と言えば、ウォルト・ディズニー・カンパニー、ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント、パラマウント、ユニバーサル・スタジオ、ワーナー・ブラザーズ・エンターテインメントに並ぶ6大映画ブランドとして『タイタニック』、『ホームアローン』、『プレデター』『アバター』など日本でも馴染み深い映画を配給していた。そして、今回2019年3月20日、ディズニーは、713億ドルを投じ2、フォックスの映画・テレビ部門を手に入れた。
この買収成功によって、テレビ部門の看板番組とも言える『ザ・シンプソンズ』もディズニーファミリーになったわけである。これに伴い公式サイトのトップページには『ザ・シンプソンズ』も載せられている。さて、当キャラクターがD23 EXPOというディズニーの今後の明暗を占う祭典に登場することは何を意味しているのか。当番組は、アメリカの中流階級(労働者階級)の生活・文化および社会状況を風刺的かつ強調して描き出したものであり、下品な言葉や暴力、性的な話題を含むなど、内容によっては視聴年齢制限指定がつくこともある。家庭によっては『ザ・シンプソンズ』を見ることを禁ずるケースもあり、買収完了当初から下品な作風の本シリーズをディズニーの傘下に入れるなとか、ディズニー傘下となるのであれば、これまでとは異なった制限をかけろ、といった意見も出ていた。ディズニーは、クリーンなイメージを大事にしており、子供に安心して見せることが出来るコンテンツである、というのが一般的認識だろう。ディズニーにとっては、つつかれたくない点であり、筆者自身は、ディズニーブランドに「ザ・シンプソンズ」のイメージを極力つけない戦略をとることを予想していたが、実際にD 23 EXPOでのプレゼンテーションが企画されているところをみると、当作品は本当の意味で「ディズニー」になったといえるだろう。
さて、今回の事業買収によって、フォックスが持っていた『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』などのマーベルコミックスの権利がディズニーに移ることで、『デッドプール』もディズニーの傘下に入ることとなる。『デッドプール』は過激すぎる暴力的なシーンや下品なジョークによりR指定(17歳未満は保護者同伴が必要)を受けているが、アメリカ史上「R指定映画で最も売れた作品」3という記録をつくっている。ファミリーフレンドリーを大事にするディズニーは、R指定の作品を製作する気がないことを過去に明言していた4。しかし、ディズニーの会長兼最高経営責任者(CEO)のボブ・アイガー氏は
“It [Deadpool] clearly has been and will be Marvel branded. But we think there might be an opportunity for a Marvel-R brand for something like Deadpool.5”
(訳:デッドプールのようなR指定映画を作るのもいい機会である。)
と発言しており、ディズニーが実際にどれだけ
なにはともあれ、今回のD23 Expo 2019において何らかの『ザ・シンプソンズ』に関する“D’oh”(主人公の決まり文句)が聞けることを、筆者は大変楽しみにしている。
1 D23公式ツイッター https://twitter.com/DisneyD23/status/1143202164900106241 2019/06/25
2 ディズニー、8兆円でフォックス買収へ 競合相手が断念 https://www.asahi.com/articles/ASL7M7F5PL7MULFA03D.html 2018/07/19
3 『デッドプール』が“R指定で最も売れた作品”となった理由ーー善悪を超えたヒーローの革新性https://realsound.jp/movie/2016/06/post-1888.html 2016/06/07
4 ディズニー傘下に!デッドプールが自虐…クリエヴァ&ヒューも反応https://www.cinematoday.jp/news/N0097004 2017/12/15
5 'Deadpool' Can Stay R-Rated at Disney, Says Bob Iger https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/deadpool-will-stay-r-rated-fox-disney-merger-1067651 2017/12/14
(2019年06月25日「研究員の眼」)

03-3512-1776
経歴
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
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