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2019年05月14日
ベーシック 米国生保業界の概要(4)米国生保の負債構造-米国生命保険協会のファクトブック掲載データから-
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はじめに
米国生保協会が発行する『ライフ・インシュアランス・ファクトブック(生命保険ファクトブック、以下、ファクトブック)』を主な情報源として「米国生保協会が消費者に伝えたいと描く自画像」を見ていくシリーズの第4回。今回は「米国生保会社の負債構造」を見る。
「負債」を、企業が負っている現在および将来の経済的な義務と考えれば、負債の構造を見ることで、米国生保業界が、「どのような商品・サービスで誰に対して責任を負っているのか」を見ることができるはずである。
「負債」を、企業が負っている現在および将来の経済的な義務と考えれば、負債の構造を見ることで、米国生保業界が、「どのような商品・サービスで誰に対して責任を負っているのか」を見ることができるはずである。
左側のグラフでわかるように、生命保険会社の負債の最大の項目は、保険契約者への義務を裏付けるために各生保会社が保有している「保険契約準備金(責任準備金等)(77%)」である。また「その他の準備金(13%)」の中にも、預託型契約の顧客(受益者)への義務を裏付けるための準備金がある。この他、「その他の準備金(13%)」の中には、運用している資産の価格変動等に伴う損失発生に備える資産変動準備金もある。
これらも約束した保険金支払等を確実にすべく積み立てるものであるので、生保会社の負債のほとんどは、「保険契約者」等の顧客への義務の履行を果たすためのものということが言える。
なお純資産は剰余金に株主資本を加えたものであり、株式会社の場合には株主に、相互会社の場合には保険契約者に、最終的な持分権が帰属すべきものであるが、株式会社であっても、必要に応じて保険契約者への保険金や給付金の支払いのサポートに充てるとすることができる余地がある。
これらも約束した保険金支払等を確実にすべく積み立てるものであるので、生保会社の負債のほとんどは、「保険契約者」等の顧客への義務の履行を果たすためのものということが言える。
なお純資産は剰余金に株主資本を加えたものであり、株式会社の場合には株主に、相互会社の場合には保険契約者に、最終的な持分権が帰属すべきものであるが、株式会社であっても、必要に応じて保険契約者への保険金や給付金の支払いのサポートに充てるとすることができる余地がある。
2―― 保険契約準備金(責任準備金等)
保険契約準備金(責任準備金等)は、生保会社が顧客と契約した保険商品から生じる、将来の顧客に対する生保会社の保険金・給付金支払いに備えるためのものである。
米国の生保会社を監督している監督当局である各州の州法は、生保各社が、保険契約準備金(責任準備金等)を、期限が到来したときに全ての契約債務の支払いを保証できるレベルに維持することを義務付けている。その水準は、将来の顧客からの保険料支払い、予想される将来の運用による受取利息、予想される死亡数から算出される保険金支払額等を考慮して、保険数理上の計算により算出される。
保険契約準備金(責任準備金等)は、生保会社の以下の事業の種目ごと識別・保有される。
米国の生保会社を監督している監督当局である各州の州法は、生保各社が、保険契約準備金(責任準備金等)を、期限が到来したときに全ての契約債務の支払いを保証できるレベルに維持することを義務付けている。その水準は、将来の顧客からの保険料支払い、予想される将来の運用による受取利息、予想される死亡数から算出される保険金支払額等を考慮して、保険数理上の計算により算出される。
保険契約準備金(責任準備金等)は、生保会社の以下の事業の種目ごと識別・保有される。
- 生命保険
- 年金および補足的契約
- 医療保険
図表3は、こうした保険契約準備金(責任準備金等)の種目別の構成比の推移を、実額ベース、構成比ベースで時系列に見たものである。米国の生保業界においては、本業中の本業と言える生命保険が事業の中核であったのは1980年代までで、1990年代に入ると、年金が中核事業として名乗りを上げ、現時点とほぼ同様の60%台後半の構成比を持つ状況が現れている。それ以降は、生命保険の構成比が大きく低下するということもなく、3割を切る状況が今日まで続いている。
こうした動きは、本シリーズの第2回「米国生保の収入構造1」で見た、「保険料中の生命保険と年金の保険料の構成割合」や「事業ライン別の営業利益」の状況に見られるのと同様の動きである。
こうした動きは、本シリーズの第2回「米国生保の収入構造1」で見た、「保険料中の生命保険と年金の保険料の構成割合」や「事業ライン別の営業利益」の状況に見られるのと同様の動きである。
なお団体年金の構成比が2001年に大きく低下しているのは、実際の事業成果の変動によるものではなく、「会計成文化」と呼ばれた、監督官会計制度の見直し・変更を原因とするものである。会計成文化により、2000年までは、団体年金の一類型として扱われていた利率保証契約(GIC)等の、預託型契約(次項参照)と呼ばれる、厳密には保険商品ではない商品が、団体年金から切り離された。これにより、預託型契約に関する負債が保険契約準備金(団体年金の保険契約準備金)としてではなく、「その他準備金」の一類型として計上されるようになった。
当時、GICは生保事業の中でそれなりのウェイトを持っていたため、この会計制度の見直しは、団体年金の準備金に多大な影響を及ぼした。
1「ベーシック 米国生保業界の概要(2)米国生保の収入構造2017-米国生命保険協会のファクトブック掲載データから-」https://www.nli-research.co.jp/files/topics/60419_ext_18_0.pdf?site=nli
当時、GICは生保事業の中でそれなりのウェイトを持っていたため、この会計制度の見直しは、団体年金の準備金に多大な影響を及ぼした。
1「ベーシック 米国生保業界の概要(2)米国生保の収入構造2017-米国生命保険協会のファクトブック掲載データから-」https://www.nli-research.co.jp/files/topics/60419_ext_18_0.pdf?site=nli
(2019年05月14日「保険・年金フォーカス」)
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