2019年05月07日

【3月米個人所得・消費支出】消費支出(前月比)は+0.9%と予想(+0.7%)を上回るも、所得は+0.1%と予想(+0.4%)を下回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:3月の個人消費は予想を上回るも、個人所得は予想を下回る伸び

4月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は政府閉鎖に伴い公表が遅れていた2月の個人消費支出と、3月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得は3月が前月比+0.1%(前月:+0.2%)となり、前月から伸びが鈍化したほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った(図表1)。個人消費支出は、2月が前月比+0.1%(前月改定値:+0.3%)と、+0.1%から上方修正された前月から伸びが鈍化したほか、市場予想(+0.3%)も下回った。3月は前月比+0.9%と前月から伸びが加速したほか、市場予想(+0.7%)も上回った。一方、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は2月が横這い、3月が+0.7%となり、3月の市場予想(+0.5%)を上回った(図表5)。貯蓄率1は3月が6.5%(前月:7.3%)と前月から▲0.8%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.1%)と前月を上回ったものの、市場予想(+0.3%)は下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は横這い(前月:+0.1%)と、こちらは前月、市場予想(+0.1%)を下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.5%(前月:+1.3%)と前月を上回ったものの、市場予想(+1.6%)は下回った。コア指数は+1.6%(前月:+1.7%)と、こちらも前月、市場予想(+1.7%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:消費の回復に弾み

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 名目個人消費(前月比)は18年12月に▲0.6%と予想外の大幅な落ち込みを示した後、19年2月まで回復がもたついていたが、3月は09年8月(+1.2%)以来の伸びとなり、漸く消費の回復に弾みがついた(図表1)。

一方、貯蓄率は3月が18年11月以来となる6%台に低下するなど、所得対比でみた消費の伸びも加速した。

足元で株式市場が昨年秋口につけた最高値を窺う水準まで回復しているほか、消費者センチメントも1月の落ち込みから反発している。また、雇用、賃金の回復が続いていることから、個人消費を取り巻く環境は依然として消費に追い風となっており、個人消費は今後も底堅く推移することが見込まれる。
 
物価は(前年同月比)は、総合指数が18年11月以降、コア指数も19年1月以降はFRBが物価目標とする2%を下回る状況が持続している。もっとも、原油価格が年初来で4割を超える上昇となるなど、エネルギー価格が物価を押上げる状況となっているほか、賃金上昇に伴いコア指数も今後反発が見込まれることから、物価上昇圧力の後退は持続しないと考えられる。

3.所得動向:可処分所得の回復は足踏み

3月の個人所得(前月比)の内訳をみると、賃金・給与が+0.4%(前月:+0.3%)となったほか、政府による社会保障関連の補助金などの移転所得も+0.4%(前月:+0.4%)と堅調な伸びとなった(図表2)。一方、利息・配当収入が▲0.8%(前月:▲0.4%)とマイナス幅が拡大したほか、農家に対する政府補助金が▲40.7%減少したことにより、自営業者所得が▲1.2%(前月▲0.1%)と大幅なマイナスとなった。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、3月が横這い(前月:+0.1%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベースでは▲0.2%(前月:横這い)と2ヵ月ぶりのマイナスとなるなど、可処分所得は回復が足踏みとなっている。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車・自動車部品消費が回復

3月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+1.7%(前月:▲0.5%)と前月から大幅なプラスに転じたほか、サービス消費も+0.5%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した(図表4)。財消費では、耐久財が+2.3%(前月:▲1.1%)と前月から大幅なプラスに転じたほか、非耐久財も+1.4%(前月:▲0.3%)とプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+4.8%(前月:▲2.5%)と前月に落ち込んだ反動もあって大幅なプラスに転じたほか、家具・家電が+1.2%(前月:▲0.4%)、娯楽財・スポーツカーも+1.0%(前月:▲0.4%)と、いずれも前月からプラスに転じた。

また、非耐久財ではガソリン・エネルギーが+4.4%(前月:+1.3%)と前月から伸びが加速したほか、食料・飲料が+0.8%(前月:▲1.4%)、衣料・靴も+1.2%(前月:▲0.8%)と前月からプラスに転じた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.7%(前月:+0.7%)と2ヵ月連続で高い伸びとなったほか、外食・宿泊が+0.6%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した。さらに、娯楽サービスが+1.5%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前月比、前年同月比ともにエネルギー価格が物価を押上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+3.6%(前月:+0.5%)と前月から伸びが大幅に加速し、物価を押上げた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.5%)と、こちらは前月から伸びが鈍化した。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+0.3%(前月:▲5.9%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表7)。食料品価格指数は+1.4%(前月:+1.4%)と前月なみの伸びを維持した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2019年05月07日「経済・金融フラッシュ」)

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