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- 平成における消費者の変容(4)-拡大するシェア経済と消費行動への影響~加速する所有から利用へという価値観、新時代の消費活性化策は
2019年03月28日
■要旨
■目次
1――はじめに~ネット社会の進展と足元で広がるシェアリングエコノミー、消費行動も変化
2――シェア経済の現状
1|シェア経済とは
~ネットを介した個人間のモノや移動手段、空間、スキル、お金のシェア
2|従来のビジネスモデルとの違い
~CtoCで価格や多様さに利点、スマホで不特定多数と瞬時につながる
3|日本の市場規模
~2016年で約5千億円、うち3千億円のモノのシェアは2017年に1.5倍へ成長
3――シェア経済拡大の背景~情報通信技術の進化などの7つのポイント
4――シェア志向が強い消費者層
~若者、男性、男女年収300万円層と男性年収1千万円層、子育て世帯
5――モノのシェアの可能性
~家庭の不要品を推計すると全国で37兆円、金融・不動産に次ぐ第三の資産
6――シェアで変わる消費行動
~「売るときのことを考えて買う」、シェアに見出す新たな価値
7――シェア経済の可能性
~特にスキルのシェアは1億総活躍、地方創生へつながる
8――次の時代の消費を活性化させるには~何より拡大の余地があるのは女性の消費力
- 「平成における消費者の変容」シリーズの最終回の本稿では「インターネット(シェア経済)」に注目する。ネット社会の進展は、今の若者で特徴的な「お金がなくても楽しめる」消費態度に拍車をかけ、SNSを通じた横の輪は情報の流れを変える。足元で広がるシェア経済は「所有」から「利用」へという価値観の変化を加速させている。
- AI・IoTの進展やSNSの普及により登場したシェア経済は、プラットフォーム事業者は基本的には手数料を取るのみであり、提供(販売)側にも利用(購入)側にも特に価格面で利点があり、普及拡大しつつある。シェアリングサービスは、「モノ」や「移動手段」、「空間」、「スキル」、「お金」に大別される。
- レンタルサービスなどの従来サービスとの違いは、何よりBtoCではなくCtoCであることだ。また、ネット上のプラットフォームを介して不特定多数の個人が瞬時につながり、多くのやり取りがネット・スマホで済むため利便性が高い。安全面が懸念されるが、相互評価による自浄作用に加えて、政府組織等も発足している。
- シェア経済拡大の背景には、「情報通信技術の進化」に加えて、長らく続いた「厳しい経済環境」による節約意識の恒常化、「消費社会の成熟化」で所有欲が低下し価値観が「所有」から「利用」へと変わっていること、「社会貢献意識の高まり」、「少子高齢化・世帯構造の変化」による暮らし方の変化、「グローバル化の進展」があげられる。
- シェア志向が強い層について、生活者1万人を対象にした調査から分析した。その結果、年齢は若いほど、女性より男性で、安く済ませたい男女年収300万円前後層や合理的な消費態度の強い男性年収1千万円前後層、一時期しか使わないもので出費のかさむ未就学児や義務教育児のいる世帯でシェア志向が強い傾向がある。
- 日本のシェア市場の約6割を占める「モノ」は、主にフリマアプリでの中古品売買によるものだ。一般家庭に眠る不要品について調査とメルカリにおける取引金額のデータから、家庭に眠る「かくれ資産」を推計したところ全国で約37兆円となった。かくれ資産の内訳は服飾雑貨が多く、金額は60代女性が最多で約50万円であった。
- 「売る時にことを考えて買う」行動は昔から不動産や自動車で見られてきたが、フリマアプリ等の登場で日用品にまで広がり、「所有」から「利用」への流れが加速している。一方で消費者がシェアを利用する理由は経済合理性だけではない。物の有効活用やフリマアプリならではの品揃えなどの効用を感じ、新たな価値を見出している。
- 4回を通して平成時代の消費変化を捉えてきた。人口減少で市場縮小が予想されるが、消費活性化策には、何より女性の就労環境を整備し、女性や世帯の収入を増やすこと、また、単身世帯などコンパクト化する家族に合わせた商品・サービスの展開、若年層の経済基盤の安定化、シェア経済との共存があげられる。
■目次
1――はじめに~ネット社会の進展と足元で広がるシェアリングエコノミー、消費行動も変化
2――シェア経済の現状
1|シェア経済とは
~ネットを介した個人間のモノや移動手段、空間、スキル、お金のシェア
2|従来のビジネスモデルとの違い
~CtoCで価格や多様さに利点、スマホで不特定多数と瞬時につながる
3|日本の市場規模
~2016年で約5千億円、うち3千億円のモノのシェアは2017年に1.5倍へ成長
3――シェア経済拡大の背景~情報通信技術の進化などの7つのポイント
4――シェア志向が強い消費者層
~若者、男性、男女年収300万円層と男性年収1千万円層、子育て世帯
5――モノのシェアの可能性
~家庭の不要品を推計すると全国で37兆円、金融・不動産に次ぐ第三の資産
6――シェアで変わる消費行動
~「売るときのことを考えて買う」、シェアに見出す新たな価値
7――シェア経済の可能性
~特にスキルのシェアは1億総活躍、地方創生へつながる
8――次の時代の消費を活性化させるには~何より拡大の余地があるのは女性の消費力
(2019年03月28日「基礎研レター」)
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03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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