- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- 平成における消費者の変容(4)-拡大するシェア経済と消費行動への影響~加速する所有から利用へという価値観、新時代の消費活性化策は
平成における消費者の変容(4)-拡大するシェア経済と消費行動への影響~加速する所有から利用へという価値観、新時代の消費活性化策は
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
このレポートの関連カテゴリ
- 「平成における消費者の変容」シリーズの最終回の本稿では「インターネット(シェア経済)」に注目する。ネット社会の進展は、今の若者で特徴的な「お金がなくても楽しめる」消費態度に拍車をかけ、SNSを通じた横の輪は情報の流れを変える。足元で広がるシェア経済は「所有」から「利用」へという価値観の変化を加速させている。
- AI・IoTの進展やSNSの普及により登場したシェア経済は、プラットフォーム事業者は基本的には手数料を取るのみであり、提供(販売)側にも利用(購入)側にも特に価格面で利点があり、普及拡大しつつある。シェアリングサービスは、「モノ」や「移動手段」、「空間」、「スキル」、「お金」に大別される。
- レンタルサービスなどの従来サービスとの違いは、何よりBtoCではなくCtoCであることだ。また、ネット上のプラットフォームを介して不特定多数の個人が瞬時につながり、多くのやり取りがネット・スマホで済むため利便性が高い。安全面が懸念されるが、相互評価による自浄作用に加えて、政府組織等も発足している。
- シェア経済拡大の背景には、「情報通信技術の進化」に加えて、長らく続いた「厳しい経済環境」による節約意識の恒常化、「消費社会の成熟化」で所有欲が低下し価値観が「所有」から「利用」へと変わっていること、「社会貢献意識の高まり」、「少子高齢化・世帯構造の変化」による暮らし方の変化、「グローバル化の進展」があげられる。
- シェア志向が強い層について、生活者1万人を対象にした調査から分析した。その結果、年齢は若いほど、女性より男性で、安く済ませたい男女年収300万円前後層や合理的な消費態度の強い男性年収1千万円前後層、一時期しか使わないもので出費のかさむ未就学児や義務教育児のいる世帯でシェア志向が強い傾向がある。
- 日本のシェア市場の約6割を占める「モノ」は、主にフリマアプリでの中古品売買によるものだ。一般家庭に眠る不要品について調査とメルカリにおける取引金額のデータから、家庭に眠る「かくれ資産」を推計したところ全国で約37兆円となった。かくれ資産の内訳は服飾雑貨が多く、金額は60代女性が最多で約50万円であった。
- 「売る時にことを考えて買う」行動は昔から不動産や自動車で見られてきたが、フリマアプリ等の登場で日用品にまで広がり、「所有」から「利用」への流れが加速している。一方で消費者がシェアを利用する理由は経済合理性だけではない。物の有効活用やフリマアプリならではの品揃えなどの効用を感じ、新たな価値を見出している。
- 4回を通して平成時代の消費変化を捉えてきた。人口減少で市場縮小が予想されるが、消費活性化策には、何より女性の就労環境を整備し、女性や世帯の収入を増やすこと、また、単身世帯などコンパクト化する家族に合わせた商品・サービスの展開、若年層の経済基盤の安定化、シェア経済との共存があげられる。
■目次
1――はじめに~ネット社会の進展と足元で広がるシェアリングエコノミー、消費行動も変化
2――シェア経済の現状
1|シェア経済とは
~ネットを介した個人間のモノや移動手段、空間、スキル、お金のシェア
2|従来のビジネスモデルとの違い
~CtoCで価格や多様さに利点、スマホで不特定多数と瞬時につながる
3|日本の市場規模
~2016年で約5千億円、うち3千億円のモノのシェアは2017年に1.5倍へ成長
3――シェア経済拡大の背景~情報通信技術の進化などの7つのポイント
4――シェア志向が強い消費者層
~若者、男性、男女年収300万円層と男性年収1千万円層、子育て世帯
5――モノのシェアの可能性
~家庭の不要品を推計すると全国で37兆円、金融・不動産に次ぐ第三の資産
6――シェアで変わる消費行動
~「売るときのことを考えて買う」、シェアに見出す新たな価値
7――シェア経済の可能性
~特にスキルのシェアは1億総活躍、地方創生へつながる
8――次の時代の消費を活性化させるには~何より拡大の余地があるのは女性の消費力
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1878
ソーシャルメディア
新着記事
-
2022年05月27日
2022年4~5月の自社株買い動向~発行済株式総数に対する割合と株価の関係~ -
2022年05月27日
2022年度診療報酬改定を読み解く(下)-医療機能分化、急性期の重点化など提供体制改革を中心に -
2022年05月27日
中国経済の見通し-岐路に立つコロナ政策、22年は4.2%と予想も、下方リスクが燻ぶり、ポジティブ・サプライズもあり得て、目が離せない -
2022年05月26日
欧州大手保険Gの2021年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- -
2022年05月26日
Japan’s Economic Outlook for Fiscal 2022 and 2023 (May 2022)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2022年05月17日
News Release
-
2022年04月21日
News Release
-
2022年04月04日
News Release
【平成における消費者の変容(4)-拡大するシェア経済と消費行動への影響~加速する所有から利用へという価値観、新時代の消費活性化策は】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
平成における消費者の変容(4)-拡大するシェア経済と消費行動への影響~加速する所有から利用へという価値観、新時代の消費活性化策はのレポート Topへ