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平成における消費者の変容(3)-経済不安でも満足度の高い若者~目先の収入はバブル期より多い、お金を使わなくても楽しめる消費社会

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- 「平成における消費者の変容(3)」では「若者」に注目する。バブル経済とともに始まった平成の初めは消費意欲が旺盛だった若者だが、30年余りの時を経て貯蓄志向が高く堅実な消費者へと変わった。バブル期を謳歌した世代は今の若者を哀れんでいるのかもしれないが、実は若者ほど生活満足度が高く、所得・収入の満足度も高い。
- 今の若者は、景気低迷が続く一方、技術革新やデフレの恩恵を受けて、安くて良いモノやサービスに囲まれながら育ってきた。消費においては、節約志向が根底にありながらも、「お金を使わなくても楽しめる」「お金を使うことが必ずしもすごいことではない」という価値観が形成されていったのではないか。
- 世間では「今の若者はお金がない」と言われるが統計で見ると、これは誤解だ。若年単身世帯の可処分所得はバブル期より増えている。また、現在の家族世帯の大人と比べても多い。なお、アルバイト代の時給が上がっていることなどから非正規の若者でも目先の収入は案外多く、25~29歳の大学・大学院卒で20万円を超える。
- 「今の若者はお金がない」わけではないが、「お金を使わない」傾向はある。若年単身勤労者世帯の消費性向は低下傾向にある。可処分所得は増えても、増えた分を消費するのではなく、貯蓄へ充てる割合が高まっている。一方で、経済的に余裕のある若者では、堅実かつ合理的な消費態度を持ちながらも、こだわりのあるものにはお金を使うような高級志向もあわせ持つ。
- 若者の価値観が変わるだけでなく、消費者全体で構造変化が生じている。二人以上世帯の消費支出では平成の始めと比べて「被服及び履物」が半減する一方、「交通・通信」や「保険医療」が増え、消費支出はモノからサービス(コト)へと移っている。買い物場所はデパートからネットへと変化している。さらに、シェアリングエコノミーが広がる中で、BtoCからCtoCへという変化もある。
- 「お金を使わなくても楽しめる」若者の消費を増やすことは簡単ではないが、節約志向による消費抑制意識を緩和することは可能だ。雇用の安定化や社会保障制度の持続性確保などを進めることで、若者が将来に明るい見通しを立てられるようになれば、若者は堅実な消費態度を持ちながらも、時に贅沢を楽しむようになるのかもしれない。
■目次
1――はじめに
~若者は消費意欲が旺盛で流行を牽引する存在から、貯蓄志向が強く堅実な消費者へ
2――今の若者の価値観が形成された時代背景
~景気低迷・技術革新・デフレ・ライフスタイルの多様化
3――「今の若者はお金がない」?~バブル期より増える可処分所得、非正規でも約20万円
4――「今の若者はお金を使わない」?
~消費性向の低下、経済状況によらず堅実・合理的な諸費態度
5――消費構造の変化~モノからコトへ、デパートからネットへ、BtoCからCtoCへ
6――おわりに
~若者の雇用安定化と可処分所得の引き上げ、社会保障制度の持続性確保を
(2019年03月22日「基礎研レター」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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