2019年03月27日

韓国でも外国人労働者が増加傾向―外国人労働者増加のきっかけとなった雇用許可制の現状と課題を探る―

生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   金 明中

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(2) 非専門外国人労働者の効率的活用政策:雇用許可制
1) 雇用許可制の基本概念
雇用許可制が導入される前に、企業は外国人産業研修生制度を利用し、制限的に外国人産業研修生を受け入れることにより、人材不足を少しは解消することができたものの、2003年6月の臨時国会で外国人労働者の雇用などに関する法律が成立し、2004年8月17日から雇用許可制が施行されることにより、より幅広く、そして合法的に外国人労働者を雇用することが可能になった。

雇用許可制は、慢性的な労働力不足に苦しんでいる中小企業が政府から外国人雇用の許可を受け、合法的に外国人労働者を労働者として雇用する制度である。外国人労働者を合法的・透明的に管理し、労働力不足の問題を解決することが目的であるものの、すべての企業が利用できる制度ではなく、外国人労働者をいつまでも雇用できる制度でもない。

雇用許可制は、純粋外国人労働者の雇用を許可する一般雇用許可制(E-9)と韓国系外国人(在外同胞)を対象とした特例雇用許可制(訪問就業制:H-2)に区分される。一般雇用許可制の対象国は、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナム、モンゴル、ウズベキスタン、カンボジア、パキスタン、中国、バングラデシュ、キルギス、ネパール、ミャンマー、スリランカ、東ティモール、ラオスの16カ国であり、韓国政府は16カ国政府との間でMOU2を締結し、毎年、決める外国人労働者の受け入れ人数枠に合わせて外国人労働者を受け入れている。図表6は、雇用許可制による2018年度新規外国人労働者割当計画を示している。
 
2 了解覚書(Memorandum of Understanding):行政機関等の組織間の合意事項を記した文書であるものの、法的拘束力はない。
図表6 雇用許可制による2018年度新規外国人労働者割当計画
外国人労働者に対する雇用許可制が適用される業種は、製造業(常用労働者300人未満あるいは資本金80億円以下の事業場)、農畜産業、漁業、建設業、サービス業(廃棄物処理、冷凍倉庫等)の 5 業種である。一方、特例雇用許可制は中国や旧ソ連地域など11カ国の韓国系外国人(在外同胞)が対象であり、38業種に対する雇用を許可している(図表7)。
図表7 外国人労働者に対する雇用許可制が適用される業種1
図表7 外国人労働者に対する雇用許可制が適用される業種2
また、業種別に雇用許容人員と新規雇用許可書発給限度を定めており、その詳細は図表8の通りである。
図表8 業種別雇用許容人員と新規雇用許可書発給限度・製造業
図表8 業種別雇用許容人員と新規雇用許可書発給限度・建設業/サービス業/農畜産業/沿岸漁業:漁船数基準
図表8 業種別雇用許容人員と新規雇用許可書発給限度・沿岸漁業:養殖面積基準/塩田業
韓国政府は国務総理室に「外国人材政策委員会」を設置し、毎年の国内の労働力需給動向と連携し外国人労働者の導入規模及び許容業種等を決め、送出国を選定している。「外国人材政策委員会」は、企画財政部、外交通商部、法務部、知識経済部、雇用労働部の次官、中小企業庁の庁長(長官)及び大統領が定める関連中央行政機関の次官(文化体育観光部、農林水産食品部、保健福祉部、国土海洋部)等を委員とした委員長(国務総理室長)を含めた20人で構成されている。また、雇用労働部は「外国人材政策委員会」に上程される議案を事前に議論する「外国人材雇用委員会」(雇用労働部の次官が委員長)を設けて運営している。外国人労働者の受け入れ、送出国との連絡、労働契約の締結等実務と関連した業務は韓国産業人力公団が担当する。中小企業協同組合中央委員会、大韓建設協会、農業協同組合中央会、水産業共同組合中央会等は民間代行機関として指定され、便宜提供業務、就業教育、事後管理を含めた使用者代行業務をしている。就業教育は過去には韓国産業人力公団と国際労働協力院が担当してきたものの、2007年7月からは一般外国人労働者の教育は国際労働協力院(ベトナム、モンゴル、タイ、中国)、中小企業協同組合中央会(その他の国家)、大韓建設協会、農業協同組合中央会、水産業協同組合中央会等の民間代行機関に移管された。
2) 雇用許可制の基本原則
雇用許可制は基本的に次のような基本原則に基づいて運営されている。
 
1.単純労務分野限定の原則
雇用許可制では、雇用できる外国人労働者を非専門就業(E-9)と訪問就業(H-2)に限定し、就業できる業種を製造業、建設業、サービス業、農畜産業、水産業のうち、単純労務分野に制限している。

2.労働市場補完の原則
雇用許可制は、内国人の雇用を保護するために労働市場補完性の原則を適用している。この原則は外国人労働者の雇用が韓国の労働市場に否定的な影響を与えてはならないという趣旨に基づき、足りない労働力は高齢者、女性等国内の人財を優先的に活用し、補充的に外国人労働者を活用するようにしている。この原則はドイツの外国人雇用許可制と類似である。つまり、ドイツの場合も国内労働市場でドイツ人労働者の雇用ができない場合のみ外国人の雇用を許容している。
 
3.需要主導的制度(demand driven system)の原則
雇用許可制は、需要主導的制度(demand driven system)を原則としており、企業が自由に外国人労働者を選択することを保障している。企業は雇用が許可された範囲(人数)内で外国人労働者の雇用を申し込むことが可能であり、事前に求職者(外国人労働者)の経歴、写真などの人的事項を確認することができる。企業は企業が提示した労働条件を受け入れた外国人労働者から選別し、雇用契約を締結する。
 
4.選定や導入手続の透明性の原則
外国人労働者の選定や導入手続きを透明にし、外国人労働者の送出過程で発生する不正行為や副作用を最大限抑制しようとしている。そのために外国人労働者の導入過程で民間機関の介入を排除しており、送出国と了解覚書(MOU)を締結して外国人労働者の選抜条件、方法、機関、相互間の権利義務事項などを規定している。韓国国内でも外国人労働者の紹介や就業斡旋などは、雇用労働部(以前は労働部)の雇用支援センターが担当するなど、公的機関が外国人労働者の受け入れ関連業務を担当することにより、プロセスの透明化と不正の減少を図っている。
 
5.定住化防止の原則
外国人労働者を短期にローテーションさせることにより定住化を防止している。外国人労働者の就職許容期間(雇用期間)は3年に制限しており、使用者が継続雇用を希望する場合に限って1年10ヶ月までの雇用延長を許可している。
 
6.差別禁止及び均等処遇の原則
合法的に就業した外国人労働者に対する不当な差別を禁止すると同時に、国内の労働関連法を同等に適用し、外国人労働者の権益を保護することを原則にしている。つまり、外国人労働者も内国人と同様に、労働関連法が適用され、労災保険、雇用保険、国民年金、健康保険、最低賃金、労働三権が利用できるなど基本的な権益が保障されている。
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生活研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会政策比較分析、韓国経済

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